銀魂の天導衆との戦いは何だったのか

銀魂の重大なネタバレを含みます。



銀魂二巻から出てくる天導衆は江戸(地球)を裏から操る謎の組織として登場します。ところがラスボスと思われた天導衆は途中退場し虚の戦いがメインとなってしまいました。

なぜ天導衆が途中退場する羽目になったかは一旦置いておいて、ラスボス変更によるストーリー上の弊害と、読者側の超解釈解消法を書いてみたいと思います。

さらば真選組篇では奈落は真選組脱獄阻止のため、真選組および万事屋真選組攘夷志士連合を攻撃します。奈落は一橋派についた天導衆の命を受け行動しているのはわかりますが、銀時達の抵抗を受けついに虚が初登場します。

ここで虚が天導衆であることから、江戸の政権争いの裏に虚がいるように見えるのですが、それはミスリードでした。
虚が天導衆の一角となったのは、自らの不老不死を餌にアルタナの鍵を入手し宇宙全体を消滅させる事でした。つまり虚には江戸に傀儡政権を置き地球を支配したいなどという動機は全く無かったことになります。
そもそも虚は天人襲来にも定定政権確立にも攘夷戦争にも全く関係していませんでした(その間は松陽なので)。
烙陽決戦篇では虚が10年間の念願を叶え鍵を入手し天導衆をゾンビにして宇宙に放り出します。また、喜々が烙陽決戦篇冒頭で、銀時を追って宇宙に飛び出た為、桂坂本に捕獲され、実質的な実権を失います。

一国傾城篇から(銀魂二巻から)続いてきた天導衆による地球支配からの脱却のストーリーは突如閉ざされてしまったのです。
この事で政権交代によるカタルシスが失われて、王無き時代において民(読者)がそれぞれの王となり国を担うというメッセージが肝心の読者に全く伝わらない構造になってしまっています。

なぜ途中で政権交代のストーリーを空知先生自ら潰してしまったのでしょうか。

ツイッター感想で銀ノ魂篇は明治維新ではなく第二次世界大戦を背景として書かれているのではとの示唆を拝見しました。
そして長谷川泰三の天人船墜落前の「止められねェなら入れるしかねぇだろ」は銀魂の物語の外側に置かれた空知先生の本音だと思われます(長谷川さんの役割的に)。

この二つから超解釈すると、

将軍が誰であっても政権交代しても自国の主権取り戻したとしても、大国が因縁つけて戦争ふっかけてきたら国ごと終わりだよね。さて読者はどうするの?

という空知先生の個人的な考えが反映されているのだと思われます。
ですので攘夷志士-将軍-天導衆から続いてきた、王なき時代において民(読者)はどのように国を作っていくか?
という命題は銀ノ魂篇でも空知先生の中では繋がっているのです。

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伝わるかァァァァァア!!!

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空知先生のぶっ飛んだ発想はギャグや短めの長編では最高に輝くのですが、77巻通した物語としてはストーリー上の矛盾の面が強く出てしまったと思います。
そもそも独立した各篇をつなぎ合わせているので、虚の行動動機が繋がっていなくても空知先生的にはあまり問題ないのだと思います。


ただし読者にそれが伝わるかは別問題です。この命題が読者に伝わっているのなら、最終回の桂のオバZは政権の監視役なので大正義true end桂の一人勝ちなのですが、銀魂の正解はオバZだったなんて感想見た事がありません。

2年後篇の桂は戦後処理から新体制樹立から反体制の弱体化から政権の監視役まで担ってます。虚の辻褄合わせをさせられる信女並みに空知先生に働かされています。むしろ空知先生の個人的な思想を詰め込む役割を負わされているのだと思います。前時代の侍の象徴(そして漫画家空知英秋先生としての代弁者)が長谷川泰三だったように、桂は新時代の民の生き方の象徴として白羽の矢が立ったようですね。ようこそ我が世界へ。(銀ノ魂篇冒頭に戻る)

ラスボスを天導衆から虚に変更した事で、漫画家空知英秋先生が茂々を死なせてまで伝えたかった、15年かけてきた銀魂の物語が潰れてしまったのではないかというのが私の中では一番の疑念でした。
今後銀魂について空知先生が具体的に語る可能性は少ないと思われますので、空知先生的には銀魂を描き切ったんだ15年間の宿願はオバZにて達成されたのだと超解釈しておきたいと思います。

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