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「種を蒔く日々」

ここまで歩いてきたよ

自分のこの二本の足で

悲しみも喜びにも

嫌(や)というほど巡り会い

季節をまたひとつ越えて

またひとつ歳をとる

ファインダー越しのあなたは

まるで夢か幻のよう

見つめるほど遠ざかる

輪郭さえぼやけた蜃気楼


重ねた傷と罪を花束にして

世界中に売り歩いて

旅をしようか 

地図にはない場所まで

行けるならば今すぐに

そこに住む人の営みや町並みの色彩にふと立ち止まり、振り返る

そのひとときの刹那的感傷よ

どうか このまま貧しき僕らに

光を 希望を 願わくば浪漫を

散りゆく花の散り際の美しさを

開いた手のひらのシワの曲線や

はじめて見聞きする生まれたての声

それらを 見逃さない

瞳を 取り零さない 耳を

僕はただ 持ち合わせていたくて

今を 明日に つなげるように

橋を渡す 未来に、種を蒔く日々。

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