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温泥浴をする人たちの夢

ホテルの部屋に入る。
妹と両親も一緒である。
妹はこない予定だったので、夕飯があるかどうか確認したほうがいい、と母に伝える。気づかなかった、と母が答える。
枕元にご飯の箱がある。四角い米櫃である。

外国人の連れ、彼とはどこかであったことがあった。認識上はおそらく兄(実在はしない)である。
彼が外に出るという、自分も眼下に見える街、温泉町を日が暮れる前にぶらつくことにした。いつもの薄手のフード付のパタゴニアの上着と紺色の帽子を手にとって外にでた。一緒にハサミも持っている。
外に出て、荷物をsxswのバックに入れ、並んでいるベンチの所で帽子をかぶって、歩き始める。隣のベンチにはさっきまで人がいたのだろうか、漫画雑誌が開いたまま置かれている。
向こうのベンチの奥に外国人の兄がいる。
一緒にまわるのかと思ったら別行動のようである。

通りには店は多くない。
時刻は午後5時前。まだ夕日がみえる。
歩いていると神社があった。
簡単にお参りして、先ほど眼下に見えた商店街のような通りはどちらがわなのだろうか考えた。部屋の方向を考慮すると、どうやらこの神社とは別な方向に街があるようだ。
神社の境内を戻って通りを探す。
しばらく歩くとホテルの右手に街道があった。街道を進んでいくと神社の横にでたようである。境内の左側に御堂がみえたのでいってみた。御堂の境内は人家のようであった。そこから先はモノクロの世界になっている。
庭に足を踏み入れると、今日はそこの人はいないよ、と6歳くらいの女の子が下から声をかけてきた。
庭は斜面に突き出した舞台のような形状になっており、下には何か施設があるようだった。

軒先につかまって下に飛び降りた。
この世界では10mくらいならこの移動方法で降りることができた。軒先の下には6〜7人がふんどしで横たわっている。30〜40代とおぼしき男性が数人いるのがみえたが見えないそぶりで進んでいくと、25mプールくらいの大きさの死海の泥のような自然のプールがあり、そこで人びとは横たわって泥浴びをするように浸かっている。彼らは何をしているんですか、と傍のサカイ君に似た男性に尋ねた。

温泥浴ですよ、と彼は答えた。
30人くらいが温泉につかるように泥に横たわっている。
泥の泉は斜面と池の間にあって、2辺がコンクリートの壁・塀で仕切られている。
塀の上に直径2mくらいのスイカがある。
スイカ浴といって、あれに入って、割ってもらうんです、とサカイ君に似た男性が説明してくれた。

スイカが塀から滑っていく。
途中で半分から上が丸く飛んでいった。
中には男性と子供が横たわって泥浴を楽しんでいる姿がみえた。
これはいったい何なのだろうか。
付近にあった泥の一部を手にとってみる。
墨色の泥は粘着性があるが、死海の泥よりは薄く粘度が低いように思われた。

泥の温泉の入り口は階段があり、公共の施設だとしても立派なつくりである。
回り込んで、向こう側にいってみることにした。
塀のむこうは浅い池になっている。
膝下くらいの深さなので、入っていくと、魚が足にぶつかる感触があった。
鯉だろうと思った。
岸につく手前で感触が吸い付くようなものに変わった。
40cmくらいのヤツメウナギのような魚が足にまとわりついている。
首筋にも同じ感触があったので、岸にあがって、魚を払った。
なるほど、これは写真を撮っておきたいと思った。

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