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黒牛と梅酒と太陽の夢

金子と一緒に四国だろうかある街にきている。
毎年この時期には祭りが行われる。
そのため街はざわついている。
案内のおじさんと一緒に金子と3人で通りを歩いて行く。
時々、案内人の肩に乗せてもらいながら歩く。
しばらく歩くと左手に緑の斜面があった。
幅は60mくらいだろうか、高さは15mくらいの斜面には黒々とした牛が待機している。どの牛も立派で映画にでてくるような黒牛である。

写真を撮ろうとすると「これから出ますよ」と案内人の人が言う。

ここに来る少し前、グランドにいた。
グランドにはまだ何もなく、ここで何が行われるのかな、と思ったのを覚えている。

斜面の猛々しい様子を撮影しようとすると、牛は一斉には走り出した。
目の前を黒々とした牛の群れが走っていく。
それは勇壮な姿であった。
撮影しようとするがあたりは少し暗くなってきている。

走り抜けていく牛の姿を眺めながら、祭りの会場の方へと歩いて行く。
会場に続く通りでは白装束の上下を来た男衆が牛を追い込んでいく。
牛達はさっきまで何もなかったグランドへと走っていく。

あたりがいよいよ薄暗くなってきた。
目をこらさないと牛の姿がよく見えない。
これ映っているのだろうか、と思いながら撮影した。

しばらく歩いてグランドの近くの売店のようなところに入った。
案内ののおじさんに「何か飲みますか、お茶でも飲みますか」と尋ねた。
お店には1.5リットルのペットボトルがたくさん並んでいる。
小さいペットボトルはない。

案内のおじさんは「僕はもうそろそろこちらをいただきます」といってボトルを指さした。
カウンターには透明な容器に白の装飾がなされた梅酒が置いてあった。ワインボトルのような形状である。
「その梅酒をください。それからお水もください」と言って頼んだ。

薄緑のガラスのコップに入ったお水とワインボトルとコップが出されたのでガラスのカウンターのところでおじさんに梅酒を注ぎ、「お疲れ様です今日ありがとうございます」と彼に言った。
水を一杯飲んでから僕も梅酒をグラスに注いだ。
ふと見上げると雲の向こうに太陽の白い影が見えた。

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