80冊読書!9冊目 デフレーミング戦略

今回は完全に仕事モード。今の事業をDXの文脈でどう定義するか?という最中なので、一度インプットをしながら考えてみたいという欲求そのままである。予定している仕事モードの本はこの本ともう1冊。これも知的好奇心といえば、その通りなので許してもらおう。

第1章 「画一性による規模の経済」の終焉

デフレーミングとは、「伝統的なサービスや組織の枠組みを超えて、内部要素を組み合わせたり、カスタマイズしたりすることで、ユーザーのニーズに応えるサービスを提供すること」です。

自分のクセとしていけないことだと思うのは、哲学や歴史と違って、「今」を語る本に対してはすぐに「え~本当かな~」と疑問を呈してしまうことだ。もっと素直に読み込めればいいのに、もう最初から引っかかってしまう。「今、近未来」を語る本に対して、素直になれるように頑張りながら読みたい。

デフレーミングの3要素
①分解と組み換え
②個別最適化
③個人化

我々のビジネスはVertical SaaSである。この業界特化型のSaasビジネスは必ずしも分解と組み換えが行われるわけではないように思う。ただパッケージで使わなれなくなるという文脈は正しい。ちなみにこのVertialとの対比で言われるHorizontal SaaSは通常わざわざHorizontalなんて使わない。世の中の大半の人がこれがSaaSビジネスだと考えているから。Vertical SaaSにも分解と組み換えが起きていくのだろうか?

少し読み進めながら考えてみたが、Vertical SaaSは他のSaaSとの相性は悪くない。組み合わせによって実現できる範囲がより広がっていくからである。将来、今の業界にも「組み換え」はかなり出てくるように肌感で感じているところではある。

組織については大きく変わっていくだろう。これまで垂直統合的に上の知識を下の人間が吸収する方式で日本社会は進んできたが、知識ボリュームが増加していることや時代の流れが速いことから、社内で全ての知識を賄うことなど無理になっていく。社内でもよく言うが、私の知見など今の社会では限定的でしかない。新しいサービス、それをどう活用するのか、そうした場合の業務のあり方などは最前線にいるメンバーが自ら学び展開していかないといけない。そのためには社外を含めた横のつながりによって得られる知見のほうが重要になってくる。例えばkintoneを運用している責任者は、kintoneそのものの価値よりも、そこにあるコミュニティの価値が高いと言っている。これは今後ますます進んでいくだろうし、我々のサービスもそうあらねばならないと考えている。

テクノロジーの力が「階層化された組織による信頼」から「分散化された信頼」へと取引のかなめを転換させた

というのはまさにその通りなのだろう。

第2章 デフレーミングのメカニズム

階層型組織の終わりのはじまり

このことについては、社会経済システムというよりも、テクノロジーを含めた変化の激しさのほうがウエイトが高いように思う。実際、私の会社でも組織構造的には階層型をとっているが、運営の実態はもう少し柔軟である。なぜなら、今の時代のあまりの情報量の多さに、自分が知らないがメンバーが知っていることが圧倒的に多くなったことがある。またテクノロジーは「使ってなんぼ」の世界でもあり、その点若い人がおじさんよりも早い。この2点から見ても階層型で上の人間が全ての情報を集めて決定して命令を下していくような組織では、方向を間違うし、遅くなってしまう。間違えた方向性でいくら生産性を高めたところで、そもそも意味はなくなってしまう。

経営者の意思決定のあり方もそれにともない変わってきた。もはや自分自身で全てのことを分かろうとは思っていない。しかしメンバーの意見を数多く聞くようにし、その過程で自分の心の中における「直感」を大切にするようにしてきた。そしてその直感から生まれるイメージを改めてメンバーと共有していく。上から下へということではなく、共同で作業しているイメージである。

時代は「U理論」の世界になってきているのだと思う。

歴史を持った大企業だと、アナログで全体の業務が設計されており、様々な規程や、雇用と絡み合って、一部だけをデジタル化しようとしても、アナログ処理が残ってしまい、革新的なサービスが生まれないことがあります。

我々のお客様の業界はまさにここに陥っている。デジタルの文脈では業務設計そのものを根本から見直す必要がある。未来を構築するためには単にシステムを入れることではなく、業務の根っこを見直す覚悟で進めていくことが基本となる。

第3章 分解と組み換え

分解と組み換えの「分解」という点で考えると、我々も業務分解をした「一部業務を担うBPOサービス」からスタートしている。そしてその後にクラウドシステムを展開していくことで、新たなサービスを加え、組み換えが進んでいった。こういう概念が自分の事業を見たときにどのように当てはまるのか?ということは事業そのものを見直すいい機会であるし、新たな気づきを与えてくれる。

ただ業界特化型のサービスだと、分解するにしてもマーケットが小さい可能性もあるし、組み換えをしようとすると、強烈なお客様からの要望にさらされてしまう。このあたりは一般的なSaaSとは異なる点であろう。この違いを明確に認識することで戦略もブラッシュアップされる。

今の時代、APIを活用してオープンにつなげる思想は当たり前のように持っている。インターネットが登場して以来、時間をかけながら「オープン&フラット」であることが世の中に概念として広がってきた。そして20年以上経過して、今まさに、あらゆる「現場」においてもオープン&フラットに変革していくことが求められている。情報はもはや社内よりも社外の横ネットワークのほうが持っている可能性が高い。

第4章 個別最適化

多様なニーズを満たすことは、消費者にとっても大きなメリットがあることを認識する必要があります。

このことはマーケターである私と社会情報学者である筆者とは見解が異なる。マーケティング的には「とんがりのある一点突破」であることが重要であり、多様性を満たすことは事業としては失敗する典型例でもある。しかしながらおそらく、この筆者はこの観点で多様化といっている訳ではないのだろう。我々のサービスで言うならもう少し業務フローの個別性などの話をしているのかとも感じる。例えば、同じサービスを利用するにしても、お客様の現場は百社百様である。その個別性に対応できるサービスであるのか?という観点なのだろう。

サービスにおいて提供者と顧客はそのサービスを生み出すために「協力」しなければならないとされます。つまりサービスというのはその本質からいってカスタマイズ、個別最適化が内在しているのです。

この章ではソフトウェア産業における全体最適化と個別最適化の行き来の説明が書かれている。googleの検索についての個別最適化についても書いてある。古くからウェブマーケと関わった自分が経験したことでいえば、以前は地域サービスを検索するときは「●●(サービス名)+■■(地域)」を入力することが多かった。そしてサービス提供者はこのキーワードの取り合いをしていた。しかし、今は「■■(地域)」を入力する必要がなくなっている。なぜならスマホ検索がメインなので、「その人の位置情報」をもとにすでに検索結果に反映されているからである。これも個別最適化といえよう。

プラットフォーム時代の個別最適化には、すべて自社でそろえてはコストがかかるため、外部リソースを活用して必要な時に必要なものを組み合わせて顧客に提示する必要があるという。我々もすでに組み合わせて提供しているが、例としてあげられているDiDiのような形で提供できてはいない。Vertical SaaSの個別最適化については、もう少し深い思考が必要となる。

駐車場の課金や駐車違反の取り締まりについてナンバー認証活用の方法が示されている。これからの時代にデータは必須であるが、個人情報とのせめぎ合いでもある。オンラインのみで取得されるデータは、正直自分でも認識がしづらいので、実際にはどう活用されているのか?イメージされにくい。しかしリアルな事象をデータ化して活用すると、「自分が監視されている!」という気持ちにもなりかねない。このあたりは社会がどの程度許容していくのか?にもかかわっている。中国のIT化が圧倒的に進んでいるのは個人情報の国家管理に対するスタンスが西洋諸国と全く異なるからでもある。

第5章 個人化

この章で書いてあることは第1章と第2章で書いた私の感想と似ている。特に組織における「個人化(筆者の言う意味で)」は必然だと思っているし、それをいかに促進できるか?という方向に動かしている。例えばフリーランスとまではいかないが、週4日勤務、週3日勤務のメンバーもおり、彼らは別に自分で会社を興したり、事業を行ったりしているのである。そのことによって、個人の知見が高まり、組織内にアウトプットする業務の質も高くなる。スタートラインは意外と「個人のわがまま」的なところからだが、上手く進めていくと個人のニーズと組織のニーズがぴったり一致していく素晴らしい時代でもある。

ここで少しイメージが湧いてきたが、我々はVertical SaaS事業において、横のつながりをつくるオンラインコミュニティを作っていく予定である。これまで垂直型で仕事をしていた古い業界の人間が、初めて「個人」として自ら横とつながりながら知見を増やし、それを自社でも活用できるようにしていくというイメージである。おそらくそうやって成長した人は他社からも必要とされる市場価値のある人材となっていくと考えている。

第6章 デフレーミング時代の「信頼」
第7章 デフレーミング時代の個人の戦略

第6章では個人の取引などが増えていく時代における「信頼」をどうつくるか?ということで、具体的にエスクローサービス、評価・レビュー、信用経済、そしてブロックチェーンが紹介されている。また第7章ではこの時代における個人の働き方やその考え方を提起している。

ただ、内容的には私の期待するポイントではないため感想も割愛する。

第8章 デフレーミングの課題と展望

以前にプラットフォーム戦略とシェアリングエコノミーはつながっているものの、実は理念が真逆になってしまうということを聞いたことがある。確かにシェアリングエコノミーと言えば聞こえはいいが、実際にはプラットフォームを利用すると、利益は圧倒的にプラットフォームに集まっていく。本来シェアリングエコノミ-で目指すものはそういうことではないはずだ。

シェアリングエコノミーということでなくても、デジタルの時代におけるサービスは、事業が進んでいくと、規模、利益など求めていくことによって、当初の理念とずれてしまうのかもしれない。

しかし個人的にはこの点は楽観的に考えている。グローバルなプラットフォーマーが利益を求めていくなら、それはそれで構わない。そのプラットフォームに乗り、新たなサービスを生み出すことで、より個別具体の社会的課題を解決することができるのであれば、それはそれでいいのではないか?


さて、今回は思いっきり仕事寄りの読書であったが、人類史・世界史・哲学という深淵なテーマと比べると・・・期待外れである。「今」を語る本はやはり軽い。気づきが少ない。人間はある事象から気づきを得る場合、抽象度を高めた状態でその事象を認識をするようになる。「今」を語る本はあまりにも事象が小さすぎて、「まあそういうこともあれば、違うこともあるよね」という程度の事例で結論に持っていこうとする。それに比べると、人類史などを語るものは壮大な研究をもとにある結論を導くため、その過程を読むだけでも圧倒的に気づくことが多いようである。

ただそう思いつつももう1冊だけ、仕事直結の本を読んでみることとする。

80冊読書!9冊目 デフレーミング戦略(完)


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