80冊読書!3冊目マキアヴェッリ語録(1)

塩野七生さん、いい仕事しているな~。

塩野さんは最初にこんな感じのことを書いています。

マキアヴェッリは、単なる素材ではない。作品を遺した思想家です。つまり、彼にとっての「生の証し」は、今日にまで残り、しかもただ残っただけでなく、古典という、現代でも価値をもちつづけているとされる作品の作者でもあるのです。
この「マキアヴェッリ語録」はマキアヴェッリの思想の要約ではありません。抜粋です。

マキアヴェッリの「君主論」や「政略論」をそのまま読むと16世紀当時では当たり前だった、しかし現代の私たちは知らない登場人物が出てきます。「君主論」などには、それを解説する「註」がたくさんあり、理解をするのにとても苦労をすると言いたいのです。抜粋にすることによって、「註」を取り除くことができたのです。

そして塩野さんは言います。

私の目的はただ一つ、マキアヴェッリの思想を、彼が対象にした人々に近い条件で、現代の日本人に提供したかったことにつきます。

読み始めて、本当に素晴らしい仕事をしてくれた!という思いで一杯です。

経営者としてこの本を読む意味はものすごく深いものがありました。そして今回は私自身、全般を通しての感想以外、個々の言葉に対する感想はすべて書かないことにしました。感想ではなく、「これメモしておこう!」と思うものを、少し言葉を変えたりしながら、ただひたすら、そのまま記載することにしています。私の備忘録みたいなものです。後になって、何度でもメモを読み返そう。そんなものになりました。示唆にとんだものばかりなので、かなりたくさんのものをメモする結果となりましたが、このメモを頼りに、何が書いてあったかを思い起こすことができるようになると期待しています。

では備忘録、スタートです。

善を行おうとしか考えない者は、悪しきものの間にあって破滅せざるをえない場合が多い。自分の身を保とうと思う君主(指導者)は、悪しき者であることを学ぶべきであり、必要に応じて使ったり使わなかったりする技術も、会得すべきなのである。
歴史に残るほどの国家は2つのことに基盤をおいた。それは正義と力である。正義は、国内に敵をつくらないために必要であり、力は、国外の敵から守るために必要である。
個人の間では法律や契約書や協定が信義を守るのに役立つ。しかし権力者の間で信義が守られるのは力によってのみである。
指導者は、種々の良き性質をすべて持ち合わせる必要はない。しかし持ち合わせていると人々に思わせることは必要である。はっきり言うと、実際に持ち合わせていては有害なので、持ち合わせていると思わせるほうが有益である。思いやりに満ちており、信義を重んじ、人間性にあふれ、公明正大で信心も厚いと思わせることのほうが重要なのだ。もしもこのような徳を捨て去らねばならない場合には、まったく反対なこともできるような能力を備えていなければならない。
君主たる者、国を守りきるためには、徳をまっとうできることなどまれだということを、頭にたたきこんでおく必要がある。人間性をわきに寄せ、信心深さも忘れる必要に迫られる場合も多いものだ。
信義を守ることなど気にしなかった君主のほうが、偉大な事業を成し遂げている。
成功を収めるには2つの方法がある。第一の方法は法律であり、第二の方法は力である。第一の方法は、人間のものであり、第二の方法は、野獣のものである。要するに君主は人間的なものと野獣的なものを使い分ける能力をもっていなければならない。
善人として評判を得ていた人物が、目的達成のために悪を成さざるを得なくなったときは、少しずつ人の注意をひかないようにしながら、やり方をかえていくほうがよい。だが、もし好機が訪れれば、一朝にして変る方が有効である。なぜなら、変容があまりにも急なものだから、以前のやり方で得ていた支持者を失うより先に、新しい支持者を獲得することができるからである。
他国を支配下におく必要が迫られた際の2つのケース
 ①言語や文化が同じ国の場合、支配層を根絶やしにするだけで、法律も税制もそのままにする。
 ②言語や文化が異なる国の場合、征服者自身がその国に移り住んでしまう。
新しい秩序を打ち立てることくらい、むずかしい事業はない。現体制下で甘い汁を吸っていた人々すべてを敵にまわす。新体制になればトクをする人からも生ぬるい支持しか得られない。生ぬるさは「現体制を謳歌している人への恐怖感」と「異例の新しき事への不信感」によるものである。
新しく国を興したものは次のことを守らねばならない
 ①敵から身を守る方策を立てること
 ②味方を獲得し、味方網とも呼んでよいものを確立すること
 ③策略によってであろうが、力によってであろうが、まずなによりも勝利を収めること
 ④民衆から愛されるとともに怖れられる存在となること
 ⑤部下からは服従され、敬意を払われるようにすること
 ⑥反旗をひるがえす恐れのありそうな者は前もっておさえこんでおくこと
 ⑦旧体制を新しい方法で改革すること
 ⑧厳格であるとともに丁重であり、寛大で鷹揚に振る舞うこと
 ⑨忠実でない軍隊を廃し、新しい軍隊を創設すること
 ⑩他国の指導者たちとの間に友好関係を確立すること。

裏切りや残酷のかぎりの使い方。自分の立場を守るために必要上一度は使っても、以後はそれをきっぱりやめて国民の役立つ方向に向ける。下手な使い方とは残酷さを小出しにして、時がたつにつれ段々と残酷の度を増すこと。これでは破滅を避ける事ができない。要するに悪しきことは一気にやってしまわねばならない。一方恩恵は小出しに施すべきである。
自らの安全を自らの力によって守る意志を持たない場合、いかなる国家も独立と平和を期待することはできない。
人間というものは自分を守ってくれなかったり、誤りを正す力もないものに対して忠誠であることはない。
君主は「愛される」ことより「怖れられる」ことを選ぶべきである。どちらが裏切られやすいかというと愛されているほうが裏切られやすい。ただし「怖れ」と「恨みや憎悪」は違う。部下のものをとることは「恨み」につながる。怖れられることと憎しみを買わないことは両立できる。
君主として最大の悪徳は「憎しみを買うこと」と「軽蔑されること」である。
かつての敵だったものが以前からの味方よりも有益であることが多い。それはかつての敵はそれを消そうと努力をするからである。
人の上に立つものが尊敬を得るためには、どのように行動したら良いかという考察。
 ①大事業を行い、前任者と違う器だと示すこと。しかも次々に。
 ②敵に対する態度と味方に対する態度を明確に分けて示すこと。
 ③よほど切迫した状況でない限り自分より強力なものと組んで第三者に 対して攻撃をしかけてはいけない。なぜなら勝利したあとも強力なパートナーの捕われ人となってしまうから。君主たるものは他者に左右される状態からはできる限り自由でなければならない。
 ④才能のある人材を登用し、その功績に対して十分に報いる。
 ⑤国民が安心して働けるようにする。国民が取得したものを取り上げられることを嫌さに財産を増やすのを怖れたりすることのないよう計らう。
 ⑥褒章を忘れない。民衆には日を決めて祝祭を催し、彼らがそれに熱中するような方策も立てなければならない。
人は心中に巣くう嫉妬心によって、褒めるよりけなすことを好む。
一市民が権力を駆使して国のためになる事業を行おうと思ったら、まずはじめに人々の嫉妬心を押さえ込むことを考える。その方策は2つ。
 ①それを行わなければ直面せざるを得ない困難な事態を人々に納得させる。誰しも難局を自覚すると、そこから脱出しようとして脱出させてくれそうな人に進んで従うようになる。
 ②強圧的にしろいかなる方法であれ、嫉妬心を持つ人が擁立しそうな人々を滅ぼしてしまう。
 嫉妬心を克服できるかが、大事業を成功させるか失敗するかの分かれ道。
危険というものは、それがいまだ芽であるうちに正確に実体を把握することは難しい。あわてて対策に走るよりじっくりと時間かせぎをするべき。時間かせぎをしているうちに自然に消滅するかもしれないし、危険の増大を後に引きのばすことは可能。情報分析を誤ってはいけないし、対策の選択を誤ることも許されないし、対策実施のときも誤ってはならない。
中立でいることは得策でない。中立は勝者にとって敵であり、敗者にとって助けてくれなかったものとなる。
国が非常に強力になって、パックスロマーナ状態になるまでは権謀術数は必要な生存術である。
君主は自らの権威を傷つけるおそれのある妥協は、絶対にすべきでない。たとえそれを耐え抜く自身があったとしても、この種の妥協は絶対にしてはならない。
個人でも国家でも相手を絶望と怒りに駆り立てるほど痛めつけてはならない。
軍隊の指揮官で自国の功労者に対して報いるのは当たり前だが、失策をおかした場合も温情あるれる処置がいる。大変な任務なので、任務に専念できる精神状態こそが重要である。
軍隊の指揮官に対しての元老院は「戦争をはじめることと、和平を講ずることの決定権」以外の全ての決定権を渡した。そうしなければ、勝利が誰のものか分からなくなるし、無知な人間が作戦の指揮を行うことになってしまう。
軍隊の指揮官でも話す能力に長けたものがいい指揮官になれる。
自軍の力と敵の力をともに冷静に把握している指揮官ならば負けることはない。
 ①配下の将兵:その数よりも戦意のほうが価値がある。そして戦意よりもしばしば地勢に恵まれることのほうが戦勝につながる。
 ②新戦略を兵士に飲ませるには、こぜりあいの機会を与えること。その後に決戦をする。
 ③敵の落ち度のおかげで勝利を得た軍は、たちまち勝ちにおごり次回は敗戦を喫する危険がある。
 ④兵糧の手配が不十分な軍隊は敵を戦う前に負けている。
 ⑤騎兵戦か歩兵戦かはひとえに地形による。
 ⑥敵がこちらの意図に気づいたら作戦を変更しなければならない。
 ⑦将軍の進言には耳を傾けるべきだが、あなたが決意したことは少数のものにしか打ち明けてはならない。
 ⑧将兵は陣営にあるときは規律を守らせ、外れたものを厳しく罰するべきだが、ひとたび戦場に出たら希望と褒章で鼓舞するだけで十分。
 ⑨優秀な指揮官は必要に迫られるか、好機に恵まれる以外は決して勝ちを急がない。
 ⑩攻撃の重点は敵の弱点をつく事。精鋭をもって、敵の精鋭にあたってはならない。
 ⑪戦闘がはじまったら決めたとおりに作戦を実行するべき。しばしば命令が変わると部隊は混乱する。
 ⑫予測しない事故は立ち直りに時間がかかる。だから、あらゆる予測を立てるべき。
 ⑬人間と武器と金とパンは戦争の神経。重要なのは人間と武器。これで金とパンを得ることはできるが逆はない。
 ⑭配下の将兵が洗練された生活や豪華なもちものを軽蔑するようにしむけなければならない。
戦闘に際しては敵を欺く行為こそが賞賛される。ただし信頼を裏切ることや条約を破ることでもない。国土は征服できても、名誉を征服できないから。欺きは信頼関係のない相手に対してである。
思慮にとむ武将は配下の兵士をやむをえず戦わざるを得ない状況に追い込む。逆に敵に対してはやむを得ず戦わざるを得ない状況におい込まない。人間の意欲は必要に迫られて発揮される。敵軍が断崖絶壁に立った感覚がないようにすること。
金銭で雇う傭兵がなぜ役立たないか?掌握できる基盤がお金以外にないから。それでは死ぬことを厭わない忠誠は得られない。指揮官に心酔し、勇敢に戦うのは自国民のみ。
一軍の指揮官は、一人であるべきである。

80冊読書!3冊目 マキアヴェッリ語録(1)つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?