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エロゲーが売れなくなった4つの理由

※2016年の時点では理由に妥当性があると考えていましたが、2020年に消費者白書など数字を調べてもろもろ照らし合わせ、「絶対にそうか」「確かに確実なのか」を調べなおした結果、推論に誤りが判明しました。

1.ストーリーゲームにシフトしすぎた⇒セールス低下との明確な関連性は見つかっていない。そのため、主因とは言えない。
2.2008年以降、スマホが広まった⇒スマホは2011年に前年比349%という拡大を見せているが、それが商業エロゲーのセールスを低下させたという明確な関連性は見つかっていない。よって、主因とは言えない。
3.スマホの流行に引きずられて、パソコンを保持する若者が減少した⇒大学生に関する限り、パソコン保有率は上昇している。明らかに間違った推論。
4.キラータイトルが減少した⇒キラータイトルが減少したから業界全体のセールスが低下したというより、商業エロゲーが秋葉系文化の流行の最先端ではなくなったため、その結果としてキラータイトルが減少したと捉えるべき。

ぼくの一連の「商業エロゲーが売れなくなった理由」は、「商業エロゲーは売れていない」ということを示すためではなく、正しい理由を突き止め、それを今後に活かすためのものです。間違った理由が広まることは業界のためにならないという考えから書いたものでした。

でも、そう思って自分が書いたものにも誤りがあることが判明しました。恐らく最も妥当性の高いのは、こちらの方だと思います。「商業エロゲーが黄金期を終え、一時的に縮小した理由についての推論」。

以下の文章については、間違った推論としてお読みください。

あかべえそふとつぅの三舛氏が、なぜエロゲーが売れなくなったのかについてツイートしている。業界歴21年、彼より爺さん(笑)であるぼくも、商業エロゲーが売れなくなった原因、すなわち商業エロゲー全体の売り上げが低下(激減)した原因を分析してみたいと思う。

売れなくなった原因、すなわちエロゲー全体の売り上げが激減した理由は、ぼくは4つあると考えている。

1.2004年以降、ストーリーゲームにシフトしすぎた
2.2008年以降、スマートフォンが広まった
3.スマホの流行に引きずられて、パソコンを保持する若者が減少した(※後の再検証で、正しくは、MacBookAirのヒットにより光学ドライブつきのパソコンを保持する若者が減少した、だとわかりました
4.キラータイトルが減少した

順番に説明する。

1.2004年以降、ストーリーゲームにシフトしすぎた

売れるとすぐに「みんな」追随するのは、我がエロゲー業界の悪癖である。泣きゲーが大ヒットした時も、猫も杓子も泣きゲー状態になった。2004年に『Fate/stay night』が大ヒットした時にも、「じゃあ、うちもストーリー重視のゲームを!」と、多くのソフトハウスが追随した(※細かく説明すると、こうである。「ストーリーと感動の重視」は、すでに97年の『To Heart』によって始まり、さらに98年の泣きゲーの誕生によって継承されていた。その派生的な形として、純然たるストーリー重視の流れが、すでに2000年の『Phantom』(ニトロプラス)によって始まっていた。2004年の『Fate』は、その流れを一気に本流(メジャーの流れ)に押しあげたのである。詳しくは、拙著『鏡裕之のゲームシナリオバイブル』)。

結果、ストーリーゲームが増えた。ゲーム性を少なくしてストーリー性だけで勝負すると、ラノベと競合することになってしまう

そして、競合状態に陥った。

ラノベは600円程度で、作家の質が高い。
エロゲーは6000円程度で、作家の質が低い(笑)。

これで売れるわけがない(笑)。

いやいや、エロゲーだって作家の質は高いよと反論したい人がいるかもしれないが、プロットの力やライティングの力を考えると、残念ながら、エロゲーの平均はラノベの平均に比べてかなり下である。お世辞にも同等とは言えない。それが、エロゲーとラノベの二足の草鞋を履いているぼくの実感。

かくして、エロゲーはラノベに破れ、ラノベに客を奪われた。

エロゲーの凋落は、「積みゲー」という言葉の死語化と「積みラノベ」という新語の誕生に示されている。

90年代後半には、「買うだけ買ってプレイしていないゲーム」のことを指して積みゲーと言った。エロゲー全盛期の頃だった。

だが、今では「買うだけ買って読んでいないラノベ」、すなわち「積みラノベ」という言葉が使われている。年間数百冊のラノベを買うユーザーも珍しくはない。秋葉系エンターテインメントの中心は、エロゲーからラノベにシフトしたのだ。

そしてそのシフトの過程で、少なからぬエロゲーが「ゲームだからできること」「エロゲーだからできること」を失ってしまった。そして、それは今も続いている。

2.2008年以降、スマートフォンが広まった

2008年は、3G対応のiPhoneが誕生した年である。この3G対応iPhoneにより、スマホは爆発的に広まり、ケータイが廃れてケータイ小説が凋落した。ケータイ小説を死滅させたのは、スマホである。

エンターテインメントは、98年頃からすでに、ユーザーのお金と時間を奪い合うバトルロワイヤル状況に陥っていた。カラオケ、ケータイ、ゲーム、小説――それらがユーザーのお金と時間を奪い合っていたのだ。

そこに、スマホが参入した。スマホからはスマホゲームが生まれ、流行した。スマホ(とスマホゲーム)はユーザーのお金と時間を奪い、残りを他のエンターテインメントが奪い合う状況に陥った。

スマホが元気になった分、その分だけ他のエンターテインメントがもらえるお金と時間が少なくなった。エロゲーがもらえるお金と時間も少なくなった。

今でも、その状況は変わらない。むしろ、労働によってユーザーたちの自由時間が減少した今では、エロゲーにとってはさらに不利な状況が訪れている。

エロゲーは、2000年以降、ボリュームインフレーションを続けていた。つまり、テキストがどんどん大きくインフレーションしていたのである。結果、1本あたりのプレイ時間が増加、エロゲーは大量に時間を食うエンターテインメントになっていた。

「大量の時間を食うエンターテインメント」であるエロゲーは、自由時間がかつてより少ない今では、バトルロワイヤルを勝ち抜く上では不利だろう。

3.スマホの流行に引きずられて、パソコンを保持する若者が減少した

スマホがあれば、パソコンはいらない――。結果、パソコンを保持する若者が減少した。そのことは、キーボードを叩けない若者たちの特集によって、明らかになっている。

パソコンを保持する若者が減少すれば、それだけエロゲーの潜在的ユーザーも減少することになるフロントウイングの山川氏は、2001~2011年の10年でエロゲー市場が50%縮小し、2011~2015年の5年でさらに市場が50%縮小したとツイートしている(5年間で50%減少という数字は、売り上げが前年比85%ほどで5年間推移したことを示している)。

2011年以降の縮小には、パソコンを保持する若者の減少が、かなり関係しているのではないかと思う。もちろん、それだけが唯一の原因ではないが――。

※この3番目の理由について。若者のパソコン保有率は下がっていない可能性があるということで、別途検証しました。保有率は逆に上がっていました。正確には、パソコンを保持する若者が減少したのではなく、光学ドライブつきのパソコンを保持する若者が減少した、でした。
また、光学ドライブつきのパソコンを保持する若者が減少したことについて、スマホは無関係でした。原因はMacBookAirでした。 

4.キラータイトルが減少した

『グリザイア』シリーズのように大ヒットしたタイトルも出ているが、いかんせん、数が少ない。キラータイトルがぽつり、ぽつりだと、どうしてもユーザーの目はエロゲー市場から離れてしまう。

「ラノベも面白いけど、エロゲーもおもしれえ」って思えるタイトルが少ないと、エロゲー市場からどんどん客足は遠のいていってしまう。

「ラノベも面白いけど、エロゲーもおもしれえ」と思えるタイトル、そのゲームをプレイするためだけにパソコンを買っちゃうようなタイトルを、ぼくもつくりたいし、多くの作り手に生み出してほしい。

もう一度まとめる。エロゲーが売れなくなった原因、つまり、エロゲー全体の売り上げが激しく低下した原因は、以下の4つである。

1.2004年以降、ストーリーゲームにシフトしすぎた
2.2008年以降、スマートフォンが広まった
3.スマホの流行に引きずられて、パソコンを保持する若者が減少した(※正しくは、光学ドライブつきのパソコンを保持する若者が減少した)

4.キラータイトルが減少した

このうち、大きく影響しているのは、ぼくは、

1.2004年以降、ストーリーゲームにシフトしすぎた
2.2008年以降、スマートフォンが広まった
3.スマホの流行に引きづられて、パソコンを保持する若者が減少した(※正しくは、光学ドライブつきのパソコンを保持する若者が減少した)

ではないかと思っている。

ぼくは、美少女ゲームという世界を愛している。この市場を愛している。たとえラノベの二足の草鞋を履こうとも、エロゲーをつくっていきたいと思っている。

というわけで最後に。

『実践・エロティシズムと誘惑~鏡裕之のゲームシナリオ講義~』

『鏡裕之のゲームシナリオバイブル』


ともに、電子書籍(PDF)で発売中です!

最後は宣伝かよ!
そうだよ! これがステマ、いや、あからさまマーケットだよ!(笑)

追記。
ぼくが指摘した4つの理由に対して、3つ目の理由、すなわち、

3.スマホの流行に引きずられて、パソコンを保持する若者が減少した

がおかしいという指摘がありました。それに対応して再検証した結果、自分専用のパソコンを保持する若者は減少しておらず、むしろ増えていたことがわかりました。そして逆に、若者(大学生)はノートパソコンを保有していること、そしてそのノートパソコンでは光学ドライブが内蔵されなくなり、エロゲーをプレイするハードルが上がっていることがわかりました。。

上記検証後、改めて4つの条件を書き直すと、

1.2004年以降、ストーリーゲームにシフトしすぎた
2.2008年以降、スマートフォンが広まった
3.2011年のMacBookAirのヒットにより、光学ドライブつきのパソコンを保持する若者が減少した
4.キラータイトルが減少した


になります。
が、光学ドライブの検証の過程で、メインの原因が4つだけとは言えなくなっていることに気づきました。

4つの理由を考えた時に見送ったものも、重要な原因だったのではないか。ラノベ以外に競合状態に陥ったものがあったのではないか。それが、抜きゲーとパイを奪い合ったのではないか。そこでもう一度考え直して、7つの理由があることに気づきました。その7つの理由を挙げ直したのが、「新・エロゲーが売れなくなった7つの理由」です。

また、読者からボリュームインフレーションが原因として大きかったのではないか、という声もありました。具体的に、ボリュームインフレーションはどのようにセールスに影響していったのか。そもそも、ボリュームインフレーションはどのように発生したのか。それを改めて考えてみたのが、「ボリュームインフレーションと客離れ」です。

さらに、「売れなくなった」という議論の中で「かつてエロゲーにはバブルがあった」という言説が出てきます。ですが、エロゲーのバブルは果たしていつだったのか。候補は3つあった。そのどれなのか。そのことについて記したのが、「エロゲーバブルはいつだったのか?」です。 

3つとも、是非ご覧になってみてください。

最後に。
最近の代表作、『巨乳ファンタジー』シリーズを買おう!(笑) DMMさんでぼくのエロゲーは購入できます。ダウンロード版もあるよ。

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作家。ゲームシナリオを書いて25年。中世国際政治が舞台となるゲームをつくっています。高校生が城主になって活躍するラノベも書いてます。ゲームシナリオのハウツー本も書いています。拙著『非実在青少年論』の中で、東浩紀のデータベース消費を乗り越えるウロボロス消費を提唱しています。