ドラクエモンスターズ3の感想

 ドラクエモンスターズ3をストーリークリアまでプレイして、感想が書きたくなったので書きます。
 私はDQ4,5,6,7をプレイしたことがあり、モンスターズの他作品は未プレイです。
 下記の一番上の「総評」以外はゲームのネタバレを含みますので、買うかどうか迷ってる人はそこだけ読んで戻ることをお勧めします。

ゲーム公式ページ
https://www.dragonquest.jp/monsters3/

総評

 細部の作りこみが若干雑だけど、大事な部分はちゃんとしてるゲーム。
 ストーリーもシステムもだいたいそんな感じで、クソゲーでも良ゲーでもないが、DQ4への愛は確かに感じる。
 DQ4をやったことがある人には薦められるが、やっていない人にはイマイチ薦めづらい。

ストーリーについて

 DQ4の裏舞台を敵側から描いて、バッドエンド回避した世界線で大団円するという大筋のストーリーは良い。ハズレの無いコンセプトで、発想の時点で勝ってる。
 DQ4本編のキャラも色々登場するんだけど、原作ではチョイ役だった敵とかもちゃんと描かれていて、すごい良かった。
 ただ、ストーリーの細部が雑で主人公が何考えてるのか分からなかったりして、感情移入しにくい部分もあった。

 この点の良さと悪さがはっきりしていたことが、これだけの文章を書きたくなった主要因だと思う。
 以下、印象に残った点を個別に雑記。

ムジャラーとメダリカ

 この作品で一番好きかも知れないキャラ。こいつらが出てきたのが一番嬉しかった。
 ムジャラーが「手先になります」と言ってきた時の「そうじゃん!!この見た目のコンビあれじゃん!!」という感動!!
 ホイミンが出てきた時にも真っ先にこいつらの心配をしたけど、普通に生きてた。ライアン何してたの?

ロザリー

 かわいい押しかけ妻。下まつげかわいい。
 ロザリーのためにピザロがいきなり塔立てちゃったの面白くて笑った。ゾッコンじゃん。どういう面して資金集めて普請したんだよ?ベッドも天蓋付きでお姫様仕様だし。

マスタードラゴン

 こいつは言ってることがおかしい。ストーリーの雑な部分を押し付けられたキャラとも言える。
 魔族としての血を捨てろと、主人公の出自を否定するようなことを言ってきて、断ると人間と敵対するという話にすり替わる。人間のほうが勝ちそうだから勝ち馬に乗ったほうがお得みたいな言い方までしてくる。
 しかも話が大袈裟になって人間を滅ぼすという話になる。それに乗っかるピサロも大概だけど。

 それでいてエンディングでは「人間でも魔族でもある者として生きるのだ」みたいなことを言ってくる。
 最初からそれが答えじゃねぇか。痴呆か。こいつ第二のエビルプリーストだろ。何をさせたかったんだ。

 もっとも、こいつがアホだったりゲスだったりするのは伝統芸なので気にならなかったし、むしろ安心感すらあった。
 一生トロッコで回ってろ!

ベネット

 最も人物造形に失敗しているキャラで、作品の評価を下げる原因になりうるキャラだと思う。

 とにかく第一印象が悪く描かれていて、しかもそれを納得できる理由が無く、挽回するエピソードも弱いので、慣れるだけで最後まで嫌な奴。

 泥棒を塔に立ち入らせたくないし、外出中にロザリーと二人っきりにさせるなんてもってのほか。二人の蜜月に割って入ってくるのは不愉快。
 それを許容してしまうという点はリアリティに欠き、没入感を損なう表現だったと思う。

 「そんなに盗みを嫌う理由を教えてくれ」じゃねぇよ!人様の物を勝手に持ってく奴が好きな奴なんかおらんわ!
 故郷で鼻つまみ者だった経験あるだろ?そういうところが人物造形浅いんだよ。

 「この場で斬り捨てたいくらいなのに、なんで仲間になるだよ」という感想が、リメイク版DQ4のデスピサロに対する感情に若干似ているのは面白かった。

 助けに来てくれたベネットを信じないとバッドエンドに行くイベントがあるが、とにかく嫌な奴なので信じたくない。
 バッドエンドを見せて、本編がそれを回避したIFルートであることが分かるよう、わざとプレイヤーがそうするように筋書きを作ったのであれば、それは上手い仕掛けだと思う。

 しかし、ベネットに関して一番の問題は、魔族と人間の対立の中で、ピサロと親しい人間側の代表のような立ち位置で描かれていることだろう。
 本来であればロザリーヒルの人々に対してそうした感情を抱くのが自然だ。

ロザリーヒルの人々

 ピサロを魔界の王の落胤と知りながら、偏見も無く、危険を顧みず守り育ててくれた人々。
 事実上の家族とも言える恩人たちで、オープニングでも身を挺して魔物の襲撃から守ってくれる。

 人間を滅ぼそうってなった時にピサロが葛藤すべきなのは「モンじいも、ロメオも、ザックも殺すのか…?」であって「ベネットが出て行っていいのか…?」じゃないでしょ。
 ベネットが出て行ってもいいから人間も滅ぼしていいと思って欲しかったなら、ある意味感情の誘導として成功かも知れないけど、おかしいだろ!

 そもそもチュートリアルが終わると全くキャラの立ってない人物に成り下がるのも違和感ある。
 ピサロが人間を滅ぼすと言い出しても、台詞も何も変わらず普通に塔にいるのも意味分からんし、もうちょっと人物造形あっても良かったんじゃないか?シスターのお姉さんとか、どういう立場で何を思ってあそこにいて魔界までついてくるのか分からないし。
 こっちをちゃんと造形すればベネットとか要らんかったろ。

 もう一つ違和感がある点は、魔族と人類の平和的共存という本作の答えとも言える理想が最初から実現されているにも関わらず顧みられることが無い点だと思う。
 ピサロはマスドラに唆されて魔族の生存のため人類を滅ぼすしかないと思い込むわけだが、スラぷるやオンオンと仲良くやっている人々を思い出さなかったのだろうか。
 まあ、それだと話にならないんだろうけど、主人公とプレイヤーの感情が乖離する原因になる部分だったと感じる。

トルネコ

牢屋入れられてて草。

その他の雑感

グラフィック

 モンスターをはじめとして、キャラクターのグラフィックとアニメーションは良かった。
 ドラクエを過去にたくさん遊んだ身としては、ドラクエのモンスターが出てくるだけで嬉しいので、それが3Dでぴょこぴょこ動いてるだけで嬉しい。
 スライムツリーのプルプル感とかたまらない。
 ロザリーの下まつげも最高。

ステージのデザイン

 全体的に現代の3Dゲームとしてはちょっと足りなくて薄っぺらで、3DSのゲームみたい。まあでも、全然楽しめるので及第点。
 それ以前に初級・中級・上級ってネーミングは何やねん。「〇〇地方」とか「○○界」とか言えば良かったじゃん。雰囲気は似ててもパーツを完全に使い回してるとかじゃないんだから、ちょうどいい統一感になったろうに。あの言い方が完全に雰囲気を損ねてるし、新しいステージに来た時の喜びを削いでいる。
 季節が移り替わるというギミックはあまり面白いと感じなかったが、全探索する気が無くなるという点で、本筋に意識を向けさせる仕組みとしては良かったと思う。
 ダンジョンのギミックはまあまあ凝っていて面白かった。

 チュートリアルステージは、広くて造形も美しく気持ちの良いステージだった。季節の移り変わりとともに基本的なことを教えてくれる様は、「かくして数年が経った」ということを象徴的に表しているように思えて印象的だった。
 せっかく季節の移り変わりというギミックを作ったのだから、現実の自然地形をコンセプトにしたステージが他にもっとあればよかったのにと思う。ドラクエの他の作品でもワールドマップはそういう感じなんだから、火山や毒沼は珍しいくらいで良かった。

ゲームシステムと戦闘バランス

 ドラクエモンスターズは初めてだけど、モンスターを掛け合わせて技を遺伝させつつ上位のモンスターを作るのは楽しく、どんどんやりたくなるゲーム性だった。
 しかし、終盤に差し掛かるにつれ、敵が弱すぎて作業ゲーになったり、作りたいモンスターが思いつかなくなったりと、常に同じように楽しいわけでもなかった。
 自軍が加速度的にどんどん強くなっていく様が楽しいというゲーム性の都合上、バランス調整が難しく、終わりが来るのが早いというのは仕方ない部分とも思うが、もう少しじっくり楽しみたかった。
 思いついた戦略が既にゲーム進行度に対して古すぎて役立たなかったり、世代を重ねたモンスターよりも最新ステージで捕まえて来たモンスターを交配するほうが強くなるなど、味わいきれない点もあった。

開発現場に対する邪推

 このゲームは、優秀なリーダーの元で、リソースがカツカツな中で開発されたのではないかと思う。
 これだけ粗が多いのに、ゲームの楽しさの根幹とも言える大事な部分はしっかりしているのは、適切なトリアージの成果なのではないか。

 そもそもコケるわけが無いコンセプトで微妙な出来になっている時点で、良い設計と悪い実装の典型なんだけど、モンスターズのシステム、DQ4のストーリー、ドラクエのモンスターというファンに愛されていて求められている部分をしっかり守り、代わりにゲームバランス、キャラの感情の整合性、ステージのデザインなどは若干雑になっている。
 そんな中でもモンスターのモデルとアニメーションにしっかり予算を割いたのは英断だったと思う。

 そういう意味でも、名作になり損ねた惜しいゲームなんだよね。だから、こんな長文を書きたくなったんだと思う。

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