壁越しの救出劇_郡上八幡サウンドスケープ


こんにちは。
2015年に当大学院を卒業しました、美濃島聖也です。

現在は、岐阜県の郡上八幡にて「まちや」に暮らしながら、
地元の建築工務店に勤めております。


さて、
今回は「郡上八幡サウンドスケープ」と題して、
2ヶ月前に起こった実話を通じてテーマを立案してみようかと思います。

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サウンドスケープ【sound-scape】なる概念に出会ったのは、ほんの3ヶ月前。
私の暮らす岐阜県郡上八幡は、城下町で昔ながらの街並みを残す観光地。
夏には「郡上踊り」という日本三大盆踊りが催され、全国から踊りに集まる、
ちょっとした特色のある田舎の城下町である。

2022年7月9日_「踊り始め」。コロナ禍で3年ぶりの郡上おどりが開催されている。



そんな町だからこそ、時折、どこぞのまちづくり系大学生が滞在して、
卒論・修論の執筆題材に使われることがある。
今年は、早稲田大学理工学部の一研究室が滞在しながらの研究をされるとのこと。
先日、そのプチ研究発表会があるときき、せっかくなのでお邪魔してきた。

地元のオーディエンス前で発表する早稲田大学の学生さん。


そこで、ある学生の発表が、エピソードも踏まえて私の興味を惹いた。
「郡上八幡のサウンドスケープは豊かである。」なる内容(ざっくりで恐縮です・・)だった。
・水路が発達していることで、川のせせらぎが聴こえてくる。
・夏の郡上踊りや地域の春祭りが、自然と聴こえてくる。
に加え、まちやならではのエピソード、例えば、
・夫婦喧嘩している隣家の子供を引き取り、喧嘩が終わったら返す。
などのほっこりするエピソードも披露され、研究発表会の場は和んだ。

自然環境音(川のせせらぎ)や人的環境音(お祭りや隣家の喧嘩声)は、
街全体で共有され、重層化した音が町に底通している。
といった内容は、実際に居を構える私自身も、なるほどな。と思うことがあった。



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その研究発表から2週間も経たないうちに、
驚愕のサウンドスケープを体験することとなる。

それは、5月18日の早朝5:20頃のこと。。

私の住んでいるまちやにて、
寝室の壁から微かな声で「・・よんでください・・」と聴こえてきた。
最初は、自分が寝ぼけているのかな?と、ゆめうつつも定かではない中で、
朧げに考えていた。しかし、
「・・よんでください・・」と20秒おきに連呼する、その微かな声は、
確実に聴こえていた。しかも、よく耳をすますと、
「美濃島さん・・救急車呼んでください・・」と言っている。
隣で寝ていた嫁を起こし、声聴こえるよね・・?と確かめたら、
確かにそう聞こえたらしく、これは助けを求めている!

声のした寝室の壁がこちら。


声は隣のYさん(一人暮らしのご老人)宅から。
隣家の声ってこんなに聞こえるんだ・・という驚きはさておき、
「Yさん!大丈夫ですか?!」と壁越しに投げかけ。
そしたら、「大丈夫じゃない・・」(←返答きた!)

急いで嫁と外へ飛び出て、Yさん宅を確認しに。
その時ちょうど反対隣のMさんがゴミ出しに出てきた。
「Mさん!たった今、これこれこうで・・!」
「それはいかんな!」
Yさんちに行ったら当然家は施錠されており入れず。
一刻を争う事態だと考え、とりあえず救急車を呼ぶことに。

(救出の細かな描写は割愛・・)


結果、救急隊と警察(鍵かかってるから、玄関戸を破壊する要員)による
強行突破により、Yさんを無事救出。(←衰弱してたけど意識あり!)
(室内で夜に転倒したとかで全く動けなかった・・)

こちらが私の家(賃貸)である。写ってないが右隣の家がYさん宅。

お隣のMさんが、
「本当に美濃島くんたちが住んでいてよかったよ」
と、安堵の声を漏らしていた。

と同時に、
ああ、あの助けの声をキャッチできてよかったという思いが出てきた。

そんな壁越しのサウンドスケープは、大学生たちの大切な事例になると思い、
ことの顛末を早速報告。非常に驚いていた。



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郡上八幡のまちやは、隣家と壁が接している分、生活音が割と漏れます。
階段の昇り降りは自宅のごとく聴こえるし、話も微かにわかる。
それが嫌だなと思うこともあり、他方でこういった共助につながることもあるのだと実感した次第です。

「この壁の先には、お隣さんがいる。そしてこの声は届く。」
少なくともYさんはそう思っていたのは事実。
驚きのサウンドスケープは、救出劇に変わったのですが、
まあ、何はともあれ、助かってよかった・・

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・まちで暮らす「音」と「生活」の関係とは。
・「良きサウンドスケープ」を再生産するには。
・独居、孤独と音の関係性とは。

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