インテリジェンス養成講座:2024年8月5日の株価急落報道に見るマスコミのプロパガンダを見抜け!
2024年8月5日の日本株式市場は大荒れに荒れ、東証株価指数や日経平均株価指数を基準として、12%超の下げとなった。
市場平均で12%超の下げとなるのは非常にまれなことで、日本の株式市場では数回程度しか発生したことのない、異常な相場であったと言える。
この日の市場について、大手メディアは「日経平均株価が4,451円28銭も下がった!ブラックマンデーのときの3,836円48銭よりも大きな下げ幅で、過去最高の下げ幅だ!」という頓珍漢な報道をした。
ブラックマンデーというのは、有名な1987年10月19日に起こった世界的な株価大暴落を言う。
ブラックマンデーの株価急落の混乱は香港から始まったが、同日のアメリカ市場ではダウ平均株価で22.6%、S&P500株価指数は18%超、S&P500株価指数先物に至っては29%も下落し、1日での株価下落は過去最高となり、現在も1日だけでの株価下落記録は、これを抜くものはない。
この事実から、金融業界関係者や、ある程度金融に詳しい者が「ブラックマンデー」という言葉を聞くと、「一日での株価下落幅が最も大きかった日のことだ!」と認識する。
つまり、一日という短期間の間にとんでもない株価下落が起こったと認識するのが、「ブラックマンデー」なのだ。
では、2024年8月5日の株価下落幅はブラックマンデーを超えたのか?というと、超えていないというのが結論だ。
ブラックマンデーの株価下落はどの程度であったかというと、当時の日経平均株価は、1987年10月19日の終値が25,746円56銭であったところ、翌日の10月20日の終値が21,910円08銭となり、下落幅は14.9%であった。
一方で、2024年8月5日の日経平均株価の下落幅は12.4%であり、ブラックマンデーのときの日経平均株価の下落幅ほどは大きくない。
では、何故、大手メディアは「ブラックマンデーのときの3,836円48銭よりも大きな下げ幅で、過去最高の下げ幅だ!」と報道したかというと、株価指数値の下げ幅を比較するというトリックを使った。
ブラックマンデーのときは14.9%の下落率となったが、株価指数値の下げ幅は3,836円48銭であった。
一方で、2024年8月5日の下落率は12.4%であったが、株価指数値の下げ幅は4,451円28銭となり、ブラックマンデーよりも大きな数字となった。
これは、ブラックマンデーのときの株価指数値の水準が25,746円56銭であったのに対して、2024年8月5日の株価指数値の水準は35,909円70銭と、株価水準が大きく異なっていた。
株価の下落度合いを測るのは通常、下落率で測るのであり、下落した値そのものではない。
この程度の小学生でもわかるようなトリックを使って、大手メディアは2024年8月5日の株価下落は「ブラックマンデーを超えるもの」と煽ったのだ。
一般的に、株価市場は、より多くの投資家が冷静さを失った方が相場が荒れ、相場が荒れれば荒れるほど富める者が富を得る。
メディアや金融機関は「金融市場がより混乱しているように煽れ」と教育されるものであり、筆者も証券会社のアナリストをしているときに、日常のように「とにかく株価変動を煽って、客に取引をさせろ!」と上司に怒鳴られたものである。
不必要に不安を煽るようなプロパガンダを流すメディアには要注意である。
状況を正確に把握する力がインテリジェンスであり、それを磨くことで、メディアのプロパガンダに騙されないようになるのである。
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