[線形代数] 内積空間と正規直交基底

内積が定義された空間は、前ヒルベルト空間というべきものです。
実数体上の内積空間を標準内積空間、複素数体上はエルミート内積空間
と言います。
内積の定義から、ベクトルの大きさ(ノルム)や、ベクトルが直交
する・しない が出てきます。

1.内積空間の定義
   Fを、実数体Rまたは複素数体Cとし、HをF上のベクトル空間とする
   Ψ、Φ∈H に対して、数<Ψ、Φ> ∈F が、
   以下の4つの性質を満たす時、<Ψ、Φ>を、
   Hの「内積」とよび、HをF上の「内積空間」という。
   (1) 線形性: 任意のΨ、Φ1、Φ2 ∈H と a,b∈F に対して、
         <Ψ、aΦ1 + bΦ2> = a<Ψ、Φ1>+ b<Ψ、Φ2>
   (2) 対称性: 任意のΨ、Φ ∈H に対して、
         <Ψ、Φ> = <Φ、Ψ>*
        ここで、<Ψ、Φ>の値を aとすると、a* は a の複素共役
   (3) 正値性: すべての Ψ∈H に対して、
           <Ψ、Ψ> ≧ 0 
   (4) 正定値性:<Ψ、Ψ>=0 ならば、Ψ=0(Hの零ベクトル)
     正定値性を満たさないが、(1)(2)(3)を満たすベクトル空間を
     半正定値性内積空間と呼ぶ。
     複素ベクトル空間において、エルミート内積でなく
     標準内積を定義すると、例えばΨ=(i,1) ならば<Ψ、Ψ>=0
     なので、この空間は、半正定値性内積空間である。

2.エルミート内積は非可換
   縦ベクトルΨ2を |Ψ2> と書き、それを転置し複素共役をとったもの
   を <Ψ2| と書くと、<Ψ2| は横ベクトルとなり、
   <Ψ1、Ψ2>=<Ψ2|Ψ1> は、スカラー値になります。
   僕は、エルミート内積でも、値∈Rと思いこんでいました。
   が間違いです。
   また、標準内積は、交換しますが、エルミート内積
   交換しません。
   <Ψ2|Ψ1>=(Ψ1、Ψ2*)= (Ψ2*、Ψ1)* = (<Ψ1|Ψ2>)*

3.ベクトルのノルム
   
実ベクトル空間の元v において、自分自身との標準内積
   複素ベクトル空間の元v において、自分自身とのエルミート内積
   の値∈Rの√は、ベクトルの大きさであり、
   これを、ノルムと呼ぶ。

4.ベクトルの直交
   
実ベクトル空間の元u,v において、標準内積が0
   複素ベクトル空間の元u,v において、エルミート内積が0
   の時、u,v は直交すると言う。
   基底 v1,v2,v3、、、v_N が、全て直交する時、つまり、
   < v_n, v_m> = δn,m
   正規直交基底と呼ぶ。
  (なぜ正規かと言うと、基底のノルムはすべて1にとるから)


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