[パラドックス集] ベルの不等式の|↑>⊗|↑>状態

タネ本は、清水明「新版 量子論の基礎」第8章ベルの不等式 からです。
CHSH不等式を計算する量子もつれ状態を、電子のスピンのもつれ で
一方が月へ、もう一方が地球に飛んでいく とします(p228上段の説明)
全体系の状態は|ψ> = |↑_月>⊗|↓_地球> + |↓_月>⊗|↑_地球>
であり、全角運動量=0です。
もし、|↑_月>⊗|↑_地球>や|↓_月>⊗|↓_地球>があったら、角運動量保存則を
破ることになります。
以下では、CHSH不等式の各項の相関に、|↑_月>⊗|↑_地球>や|↓_月>⊗|↓_地球>
が存在することを、示します。

ここでは、|↑_月>⊗|↓_地球> や |↓_月>⊗|↑_地球>を |↑,↓> や |↓,↑>と書きます
p228の式8.50:
A(θ)|ψ>={cos(θ)( |↑,↓> + |↓,↑> ) - sin(θ)( |↑,↑> - |↓,↓> )}/√2
式8.51:
B(φ)|ψ>={cos(φ)( |↑,↓> + |↓,↑> ) + sin(φ)( |↑,↑> - |↓,↓> )}/√2
これらから、A(θ)B(φ)の相関: <ψ|A(θ)B(φ)|ψ>を作ると
= -cosθ cosφ(<+-|+->/2 +<- +|- +>/2)
 - sinθ sinφ(<++|++>/2 +<- -|- ->/2)
=式8.54 となりますから
<++|++>や<- -|- ->は、0 ではなく、
∴ |++>や|- ->の状態が存在します!

つまり、「相関の干渉成分には角運動保存則を破る状態 が存在する」
ということです。

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