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#本屋になるまで日記20240729 くすみ書房の久住邦晴さん

夏休みの読書感想文が大好きな子供でした。
お小遣いを握りしめて本屋に駆け込むと並ぶおじさんのポップイラスト。

北海道のくすみ書房がはじめたフェア
「中高生はこれを読め!」は全国に広がりました。
北海道の読書好きで、フェアで大きく掲げられるくすみ書房のおじさんの似顔絵を知らない子はいなかったと思います。

おじさんこと、久住さんとお手紙のやりとりをしたことがあります。
中学生の時に一回、その後もう一回。
講演を聞いて本を生業とする人に憧れを抱いて鉛筆を握りました。

1回目の手紙は久住さんの好きなSF作品の話や、
本当に本が好きなんですねという優しい子供へのお手紙。

2回目の手紙の時も久住さんは優しい文面でしたが、本を売ることを生業にした大人から私へ対する、これからの本屋へのシビアな言葉が綴られていました。

2回目の久住さんからのお返事。
2015年の時点でいま本屋を開くのにキーワードで出てくる「共感」「繋がり」などが並びます。

今、全国の小さな本屋さん達はとても苦しい思いをしています。
みんな辛抱しています。考えたら、おかしいことです。
商売の原点は、みんなが幸せになることです。
であれば、本屋さんたちも幸せになることです。
少なくとも楽しくなければいけないと思います。
すでに「効率」と「情報」の時代は終わり、「共感」と「つながり」の時代にシフトしているそうです。
共感し、つながって、幸せになる。それを提供できる本屋のかたちを今、考えています。

久住さんのお手紙から (2015年)

私はその時、久住さんの言う言葉の意味を多分半分も理解できていなかったと思います。働くことの楽しさも辛さも知らなかったから。

今でも頭ではわかっていても、本当に理解はできていないのかもしれません。
大好きな本とこれからの人生どう付き合って生業にしていきたいのか見つけられないまま、私は今違う業界で働いています。

2017年、手紙のやり取りを最後にしてから2年後。
久住さんが亡くなったと母から聞きました。
テレビ放映されたドキュメンタリーを見て、
ミシマ社さんから出版された久住さんの遺作を購入しました。

そして私はあの文通から何年ごしに、
手紙に書かれた本屋の厳しさの意味をすこしだけ理解できた気がしたのです。


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