落研の経験をどう就活でアピールするか問題(前編)

 本稿の主な目的は「落研(おもにお笑いや学生落語をやっていた)の経験を就活でどうアピールするか」について私なりの考えをまとめることである。基本的に学生時代の経験をアピールする場というのはES・筆記・面接・ディスカッションで主に構成される選考プロセスのうち、ESと面接になるかと思われるので「ESと面接を落研経験でどう乗り切るのか」という方法論になるだろう。
 上のように言ったが、巷の対策本などに溢れている一般論みたいなのからそんなに外れたことは書いてないつもりなので、独創的で突飛な結論を期待されてもあまり得るものはないと思う。無難な一般論を落研の経験のアピールに当てはめたらこうなるんじゃない?という程度の話である。一介の内定者にすぎない私が書いた意見としてご笑覧いただければと思う。

 体感だが、ESや面接という選考プロセスにおいて「経験談を使ってアピールする」ということがなんだかんだ8割くらいを占めるのではないだろうか。
 あるある質問としては
「打ち込んできたことを教えてください」
「困難をどう乗り越えましたか」
「挫折体験を教えてください」
などが典型ではないだろうか(以下はこの三題を例題にしつつ話を進めたい)。
こういうのに書き言葉であれ話し言葉であれ回答するのには意外と苦労する。少なくとも私はした。
 なんでもカンのいい人はすぐ気づくらしいのだが、私は就活中盤までしっかり意識していなかったことがある。こういう質問にはメタなメッセージというか問いというかが隠れているので、それをかなえるような回答にしないといけないということだ。要するに回答することによって「使えそうなやつだ、という印象を持たれる」という効果を持たせないとダメだったのである。すべてがこの「使えそうなやつだ、という印象を持たれる」という究極目的のためにあると言っても過言ではないだろう。
 ここを失念すると例えば

「打ち込んできたことを教えてください」
「どうぶつの森です。彼女も好きなゲームだったのでめっちゃやりました」

「困難をどう乗り越えましたか」
「ゲームやりすぎの出席不足による落単をギリギリのところで回避しました」

「挫折体験を教えてください」
「まあ結局彼女にふられてしまいました」

みたいなことが起きかねない。これはオモシロとしてはいい線いってるが、社会人評価だと厳しいだろう。オモシロに対して厳しい皆様からはおもしろくもねーよという罵声も聞こえてきそうだが…。

さて、上の三題におけるメタな質問というのは
「打ち込んできたことを教えてください(おまえの得意なこと、詳しいことを教えろ。仕事に役立ちそうなもの縛り)」
「困難をどう乗り越えましたか(問題解決ができるやつですか。できれば組織の問題解決で)」
「挫折体験を教えてください(失敗の時に何を学習してどう対処するんですか。あとストレス耐性とかも教えて)」
という感じじゃないだろうか。とメタな目的はある程度意識する必要がある。とはいえそこまで深読みする必要はない。「その経験話したら社会人の評価として(オモシロとかではなく)好印象になるか?」というだけである。

 さて、上の前提を踏まえた上で私は「落研の経験は就活でパッとしないのでは」と不安になってきた。楽しい経験ではあったが、これらから社会人として使えそうな能力を拾えるのか?という問題にぶち当たったわけである。(後述するようにやり方によってはパッとしようはあるのだが)それとは照的に、圧倒的にパッとしている集団が就活界に存在した。これは間違いなく体育会系である。
 先ほども指摘したが、ESや面接の質問への回答というのは「回答することによって使えそうなやつだ、という印象を持たれる」という目的を達成するためになされるべきものだと私は考える。この「使えそう」の条件は様々ではあるが、体育会系は一般的に「使えそう」な性質をいくつも持っている。パッと思いつく限りでも体力があり、戦略的な思考が求められ、チームのマネジメントにも理解があり、目的達成のために継続的な努力をしている。
 ゆえに逆説的ではあるが、自分たちと程遠い存在の彼らがなぜ強いのかを考えれば自ずと落研弱点や問題点が認識されそれを踏まえた売りこみ方もわかるということになるのではないかと思う。ちょうど英語を勉強したあとのほうが日本語の文法について考えられるようになるように。だからまず体育会系という就活界の怪物がなぜ強いのかについて考える。

冒頭のあるある質問にたち返ろう。

「打ち込んできたことを教えてください」
これに対しての「アメフト部やってきました」というだけで滲み出る説得力。少なくとも体力は見るからにマッチョな肉体を見ればわかる。聞かなくてもわかる。これは欲しい。
さらにここに「一軍には2年までいましたが、怪我をした3年生からはチームの作戦考えたりマネジメントをしてました」なんてことが加わったら、体力ある上に戦略的な意思決定もできるやつと思われる。もう説得力がありすぎる。

「困難をどう乗り越えましたか」
敵チームを分析して倒すことが目的で日々トレーニングを積む組織にいるんだから問題解決ができるのはほぼ自明である。なんか大事な試合でそこそこの結果だした話すればオッケーだろう。

「挫折を教えてください」
スポーツは勝ったり負けたりするものなので、まともなチームにいたら負けた経験を分析して次に活用するのが普通だろう。その話すれば合格点。

お分かりいただけただろうか。経験から導かれる「使えそう感」への説得力がすごさが。
余計なことを言わなくてもシンプルな主張でドーンと伝えたいメッセージが伝わる力が説得力である。ごにょごにょ言わなくても、好ましい能力が伝わってしまうのである。

なぜこんなに彼らが有利かと言うと、
・社会人的に望ましい能力を持っていそうという印象に繋がりやすい活動をしている
ということに加えて、
・活動自体が想像しやすい
ということではないだろうか。

 彼らから落研経験の問題点を逆照射するならば、
・落研の活動から得られる社会人力っぽいものがあまりなさそう(後述するがこの印象は誤りである)
・そもそも落研ってどんなものか大人がわかってない(これはしょうがない)
ということが、落研を不安にさせるのではないだろうか。まずは、落研の活動から社会人ウケしそうな要素を抽出し、それをわかりやすく伝える方法を考えなくてはいけないという「余計な手間」がかかることが我々を不利な状況に追い込むわけである。
しかし、ピンチはチャンスというようにここさえクリアするとマイナー文化部の人間は雑魚キャラから「かなり独創的で印象に残る就活生」に進化するという大胆な野望さえ抱くことは可能なのではないか。ちょうどコイキングがギャラドスに進化するように…(後編に続く)

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