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家のドアが開かなかった。
鍵は持っていたけれど内側からロックがかかっていた。
ドアの前でしゃがみ込む。
携帯は早朝5時の終わりくらいだったかと思う。
今日は死ねる。
もう私には何も残されていないと何度も思った。
私は家の鍵と携帯をドアの前に落とした。
家族が眠っているドアの前で跪いた。
感謝だったのか謝罪だったのかわからなかった。
その足で河川敷へ向かった。
早朝はまだ人が少なかった。
誰も私のことを気にしないと思った。
川の音も犬を散歩している人の足音も聞こえなかった。
ただふらふら力の無い自分の身体がキシキシ音を立てて動いていた。
砂利道から坂道を登り川橋の中心まで来た。
ここで私はもう一度考え直すと思う。
そして手すりを掴んで勢いよく川へ飛び込む。
迷う時間が、そう、時間が、遠かった。
明日も遠かったし、昨日も遠かった。
限界は近かった。
早朝の川はそれなりに冷たくて浅かった。
これはだめだと思った。
私は選手コースで練習するぐらいには泳げる人間で、
川はこの浅さで、
流れも遅く、
環境と条件の、このありさま。
思考は止まらなかったが、行為について考える余裕はなかった。
散歩中の人々が叫びながら私を引き上げて
私は結局、今日は死ねなかった。
瞑っていた目を開いて携帯を拾い上げた。
時刻は6:15だった。
流石にもう起きるだろうとインターホンを鳴らす。
妹が寝起きの不機嫌な目でドアを開けてくれた。
今日は何もない。
何も起こりえないだろう。

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