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小説家の労働環境改善③/Podcastの配信者を同僚だと思う

こんにちは、小説家の朱野ですよ。
この一年、長編執筆を休んでいる間に、労働環境を改善しようといろいろやってきたことをやってきたのかを書いています。途中まで無料、途中から有料で読んでいただけます。

最近、Podcastが熱いのではないか。
……と思うのは、自分が「働く女と◯◯と。」に出演したからだけではない。ワンオペ育児歴(注:平日のみ)7年を生き抜いていたあのころ、私は育児と家事に明け暮れ、本を読む暇も暇もなかった。朝から晩までつねに動いていた。唯一、自由になるのは耳である。なので洗濯をしながらPodcastを聴いたり、料理をしながらNHKオンデマンドの「100分de名著」を音だけ聴いたりしていた。誰かの声を聞くっていいなと思ったのはそのころだ。

いつの間にか子供たちは小学生になり、本を読む余裕が出てきた今でも、家事をしている間は何か聞いている。「100分de名著」の安部公房回、「砂の女」の朗読を聞きながら風呂掃除をして「家事労働っていうのはかいてもかいてもなくならない砂みたいだなあ」などと思っていたりする。

そして、コロナ禍がきわまった今、音声配信アプリなどが増えてきたこともあり、Podcastを聞く人が前より盛んな気がする。Twitterのスペースで人の声っていいなと思う人が増えたからかもしれない。配信する方も、YouTubeで配信したり、記事を書いたりするよりも、楽だという声もある。(ただ収益化は難しいそうだ)

最近聴いているのは、働く女性たちのPodcast。ラジオ番組を持つような著名なパーソナリティのPodcastもいいけれど、完成度が高すぎるのと、立ち位置が違いすぎるとので、疲れてしまう。私が聞きたいのはもっとファミレスで聞くようなゆるいお喋りなのだ。

私が出演させていただいた、「働く女と◯◯と。」がまさにそんな番組。小説家やライターやエッセイストや、さまざまなゲストが出てきて、自分の仕事の話をする。それを編集者の小沢あやさんが聞くというスタイル。
仕事からちょっと脱線して、好きなものの話や、恋愛の話や、出張に何を持ってくかという話や、「私のメール、おばさん構文になってないかな」と日常の悩み話をする。小沢あやさんによると、大人になってからの友達の作り方、について話す回の再生数が高いそうだ。いやまじで難しいよね! だから私もPodcast聞いてるわけだしね。

「働く女と◯◯と。」で最近聞いたのは元タカラジェンヌからサラリーマンを経るという逆・脱サラルートをたどって会社をつくられた天真みちるさん。タカラジェンヌの世界にも中間管理職ポジションがあるとか、会社に入社して議事録を書くと脚本みたいになってしまうとか、笑いながら聞きました。

このPodcastでいいなと思うのは、(私より)年下の女性たちの思いを聞けること。なんかほら……年下の女性と飲み会をしても、こっちは加齢で話が長くなってるし、むこうは忖度して傾聴モードになってくれちゃうし、そうなるとこっちはこっちでさらに喋っちゃうし(中年の話を聞いてくれる人なんてそんなにいないですからね!)、で、帰るとき「自分の話しかしなかったな、私……」と一人反省会が始まるじゃないですか。「脳科学者が言ってたな。人に話を聞かせるのってセックスより気持ちいって……」ってなるじゃないですか。そもそも私の話なんて、私はとっくに知ってるわけで、本当は年下の女子たちの話を聞きたかったわけですよ。

でも、Podcastなら安心。「あ、わかる」と相槌を打ったところで、向こうには聞こえてないわけです。彼女たちの話を遮らずに、最後まで聞けるのもPodcastのいいところ。年下女性たちの「私にとって仕事とは」を聞きながら、「あっ、そうなんだ〜」と相槌だけ打って聞ける先輩になれるのです。(ちなみに現在このPodcastに出演中の女性たちの年齢層は30〜40代。最高齢は43歳の私です)

そして、仕事の話だけでなく、最新のアニメや漫画の話もガッツリ聴きたいときはこれ。ミドサー会社員、青柳美帆子さんとありまよさんが給料日にエンタメを語る「給料日ラジオ」こちらはPodcastではなくツイキャスですが、毎回濃い話を聞かせてくれます。バックナンバーを見ていたら、シンエヴァ回があったんですね! あとで心して聴きます。

でもね、年下の女性たちの話を聞いていると、こう思っちゃったりするわけですよ。「私だって……有効求人倍率がまともで、無理な工数で働かされなくてよい時代に社会に出ていたら、彼女たちのように定時後に観劇や映画鑑賞ができて文化度の高いオタクにもなれていたんじゃないだろうか……」と。嫉妬ですよ、嫉妬。

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