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『もふもふ 犬猫まみれの短編集』に「わたし、定時で帰ります。」のスピンオフ書いてます。
またまた遅ればせながらの告知です。
2月1日に『もふもふ 犬猫まみれの短編集』が新潮社から出ました。
タイトル通り、犬と猫が出てくる短編集なのですが、こちらに「昨日もキーボードがめちゃくちゃになりました」という短編を書いています。
完璧なデスク環境を作ったはずのリモートワーク男性が、飼い始めた猫にすべてをめちゃくちゃにされていくお話。朱野作品が初めての方でも楽しんでいただけるよう、コメディタッチで書いております。
猫が必ずどこかに出てくる本だけを置いている猫本専門店、CatsMeowBooksさんも公式アカウントでご紹介くださってました。うれしい。
『もふもふ 犬猫まみれの短編集』は、作家さん8名による犬猫話4編ずつのアンソロジー。書名の印象とは裏腹に死の匂いを軸として家族や夫婦や恋愛相手との関係が浮き彫りになる話の多い中、ムカつく猫の行動が飼っているニンゲンの心の殻を剥いでいく朱野帰子さんの作品は、これだけでも読む価値あり〼… https://t.co/fi86j9Fv4C pic.twitter.com/5RbcMnumF3
— キャッツミャウブックス® (@CatsMeowBooks) March 8, 2024
そしてそして、この短編は『わたし、定時で帰ります。』のスピンオフ短編でもあります。ここからはこのシリーズを読んでくださっている読者の方へのご案内なのですが……
3作目のラストに出てきた刑部慧太という名前を覚えていますでしょうか?
刑部慧太は東山結衣の同期。経営企画部から出てこないので、顔を知っている者が少ない。なのになぜか結衣がたちあげる新規事業をやりたいと手を挙げたという社員です。彼は3作目の文庫巻末に掲載されている別のスピンオフ短編「種田晃太郎の休日」に名前だけ出てきます。今回書いた「昨日もキーボードがめちゃくちゃになりました」では、その刑部慧太が主人公です。
ネットヒーローズの上場に深く関わった人物である刑部慧太の口から語られる入社から現在までの会社の歴史は、本編で結衣の視点から語られる会社の歴史とはちょっと違うかもしれません。そのあたりも楽しんでいただけましたら幸いです。
そしてそして、もちろん東山結衣も種田晃太郎も出てきます。
制作部のマネジャーの種田さんが結婚するという話を聞いたのは、彼が慧太のキーボードを褒めてくれたすぐ後だった。完璧な仕事を好む彼が、他者を自分の人生に受け入れる決断をしたという事実は、慧太に意外なほどの衝撃を与えた。
しかも結婚相手は東山だった。
(中略)
結婚に憧れていたわけでも、出世したいと思っていたわけでもない。一人で生きることに後ろめたさを感じたことも、不都合を感じたこともない。
なのに、自分がぐらぐらしていくのを感じていた。
ありふれた幸せの形にはまっていく同僚たちを見ているといらだつ。
今作「昨日もキーボードがめちゃくちゃになりました」の舞台は『わたし、定時で帰ります。』の3作目から4年後の2021年です。
結衣は37歳になり、制作部を離れて新事業を立ち上げているし、晃太郎も40歳になってポジションを得ています。コロナ禍に突入して、彼らの生活も新たなステージに進もうとしている。そんなころのお話です。
『わたし、定時で帰ります。』最終作の前日譚としてお読みいただけましたら幸いです。