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藤原啓治さんにいつか伝えたかったこと

声優の藤原啓治さんが亡くなって大体7週間が経ち、
四十九日をまもなく迎える。

何週間経とうと何か月経とうと何年経とうと
一生ファンで有り続けるだろうけど、
言葉にして残しておく。
吐露しておこうと思う。


ヒーローには弱点を、悪役には愛嬌を。

藤原さんご自身も某所のインタビューで
「どっかに情と言うか、チャーミングなものを入れたくなっちゃう」
と語っていたように、
パーフェクトじゃない「人間くささ」を
藤原さんはご自身が演じるキャラクターに与えてきた。

最もポピュラーなのは『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし。
他にも有名どころで『アイアンマン』のトニー・スタークだったり、
『ダークナイト』のジョーカーだったり、
善から悪まで、二枚目から三枚目まで。底知れない演技力。
私はそんな藤原さんが、心の底から好きだった。


最初に藤原さんを認識したのは中学生の頃。
『鋼の錬金術師』のヒューズ中佐が初っ端だった。
「ヒューズ中佐」って藤原さんファンキッカケのキャラとしては
だいぶベタなのでちょっと恥ずかしく思っているけども
本当のことだからしょうがない。

先に原作漫画を読んでいた私は元々ヒューズ中佐推しで、
アニメを見るにあたってどなたが声をあてられているのかまず確認。

そこでヒューズ中佐役が
『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし役の人だと知った。

最初はショックを受けたものの、
よくよく考えればひろしの声って子煩悩なヒューズ中佐に
結構合ってるかもしれない。
…と、ポジティブに思い直し、軽い気持ちでアニメを見始めたところ
こっちが想像してたイメージと全然違う、
ヒューズ中佐の超絶カッコよくて渋い演技と声に
ガツン!と打ちのめされてしばらく動けなくなった。

ひろしと同じ声なのに、こんなに違うか……!!!

それが最初だった。
そこから、藤原さんの出演作を見漁るようになり、
藤原さんの演技の幅の広さと、その巧みさに溺れ続けた。

藤原さんの出るテレビアニメはすべて視聴するようになった。
『クレヨンしんちゃん』は勿論、
藤原さんが出てると聞けば、端から端まで録画した。

深夜番組を録画したことなんて無かったので、
最初の頃は録画すること自体にそわそわと緊張してしまい、眠れなかった。
ビデオデッキで録画予約をかけておいた『ギャラクシーエンジェル』は
結局リアルタイムで見た記憶がある。

そして、レンタルビデオ屋さんに行っては
藤原さんの出演作を借りる日々。
アニメは勿論、洋画も沢山借りた。

ゲームもいっぱいプレイした。
PS3は『パペッティア』をやるために、
PS4は『バットマン アーカムナイト』をやるために買った。

藤原さんが生で出演されるイベントも見に行った。
クレヨンしんちゃんの初日舞台挨拶とか、ラジオの公開録音とか。
渋さとお茶目さとぶきっちょさが入り混じった、
藤原さんの素のお人柄も大好きだった。

とにかく、こんなに一人の役者さんを好きになったことはなかった。

これ以上人を好きになることはないかもしれない。
中学生だった私は、ファンとして出来ることを考えた。
何か藤原さんに恩返しはできないだろうかと。

私にできる恩返し。それは、
この「好きだ」という気持ちをずっと忘れないことと
将来、「藤原さんのおかげで立派な大人になれた」と
言える人間になることだと思った。

そう言えることが一ファンとして出来る
最大の恩返しだと思ったのだ。

その為に、藤原さんの出演作をいっぱい見て、吸収して、
見識を深めて、感受性を高めて、人として成長しよう…!


それから時は経ち、現在。
私はすっかり大人になった。

私がかつて誓った通り、
思春期は「好き」という気持ちを忘れず
藤原さんに捧げてどっぷりだったので
ガチでガッチガチに、藤原さん漬けの人生になった。

「いやほんと」とか言っちゃうけど、
これは『カスミン』で藤原さんが演じた「帽子男」の口癖だし
「そうさなあ」とか言っちゃうけど
これはラジオで藤原さんがやってたミニ番組のタイトルだし。
体に頭に血に、「藤原さん」が刷り込まれまくった人間になった。

しかし、あんまり立派な大人になれている実感が無い。
社会人として全然自立してないし、仕事もなんだか手が遅いし。
「立派な大人」ってどんな大人なんだかよくわからないけれど
なんだか思い描いてた理想と違う。
今の私では藤原さんに
「やりました!藤原さんのおかげで立派な大人になれましたよ!!」
って言えないのは確かだ。
胸を張れるだけの自信が無かった。

ごめんなさい、藤原さん。
せっかく藤原さん漬けの人生を送ってきたのに
全然うまく生きてこれてなくて、ごめんなさい。


本当なら、仕事でご一緒したかった。

いつか、何十年後か、
藤原さんに私の書いた台本だったり
私の作ったキャラクターに、声をあててほしかった。

それが私の人生最大で最後の願いだった。

結局、藤原さんと仕事でご一緒できるほどの
人間になることが
私にとっての「立派な大人」の指針だったのだ。
そしてその時にこそ、
「私は藤原さんのおかげで立派な大人になれました」と
伝えたかった。

でも、それももう叶わない。

だから、代わりにやれること。
今からでも、「立派な大人」を目指そう。

藤原さんを愛し過ぎた人生だったから、
これからも愛してるから、
私の人生をもっともっと
楽しく素敵により良くすることが、
今の私に唯一できること。
立派な大人になること。
藤原さんへの恩返しだ。


藤原さんのおかげで、
藤原さんが出演された作品は、
演じたキャラクターは、
そしてそれを見たたくさんの人たちと私の人生は、
彩りに満ちた。

藤原さんは、アニメ・洋画吹き替え・ゲーム…と
出演される作品の幅が非常に広かったので
内にこもりがちだった私を
それまで知らなかった新しいジャンルにめぐり合わせてくれた。

藤原さんのファンじゃなかったら
『バイオショック インフィニット』や『ファークライ4』とか
FPSなんて、怖くてやらなかったと思う。
乙女ゲームもやらなかったと思う。
と言っても『ペット探偵 Y's』しか手を出したことないんだけど
あれは良いキャラ・良いゲームだった…

あと、藤原さんが演じるキャラクターはびっくりするくらい
よく死んだ。
どの作品のどのキャラが死ぬか言うと
ネタバレになっちゃうのでここには書かないけど
あまりにも死ぬので心は幾度となくズタズタになった。
藤原さんのせいでどれだけ涙を流したか。

でも、
全部良い思い出。
全部が私の糧。

その糧をパワーにして、
もっともっと良い大人になれるよう頑張ります。

藤原さん、今までありがとうございました。
これまでのお仕事も、闘病生活も、
本当に、本当に、お疲れ様でした。

そしてこれからも、ずっとずっとよろしくお願いいたします。


※ちなみに、この記事のヘッダー画像は
私の家にあった藤原さん絡みの立体物を
集めて撮ったものだったりします

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