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みはしのあんみつを食べていたら祖父のことを思い出した。

鳥獣戯画を見てきた。

私はカエルが好きで、鳥獣戯画も好きだ。
その本物が見られるという展示。
日時指定券の完売や緊急事態宣言による休館の憂き目に遭い諦めかけていたが、運よく会期延長分のチケットが取れたので見てきた。

せっかくひとりで上野に行くのなら、是非とも寄りたいところがあった。
それが上野公園前のみはし上野本店

みはしのあんみつマニア」のかとみさんの本を読み、いつか行きたいと思っていたのだ。

平日昼前の店内はおひとりさまの客ばかりだった。
それぞれが静かに甘味を味わっている。

私も席に通され、注文して待っていたら、目の前のテーブルに高齢の男性が座った。

やがて注文したあんみつが来た。
目当てにしていた若桃は扱ってなかったので、杏クリームあんみつにした。


思えば、クリームあんみつを初めて食べるかもしれない。
あんこと黒蜜で充分甘くておいしいのに、そこにソフトクリームやアイスを載せるのなんてやりすぎじゃない?と思っていたのだ。

けれどせっかくの初みはしだし、ずっと歩いていたので甘味が欲しくて注文した。

初夏の暑さの中を歩いてきた身体に、ソフトクリームのやさしい冷たさがひんやりと沁みる。クリームあんみつにして正解だ。

四角く型抜かれたこしあんも期待通りなめらかでほの甘く、杏のすっぱさが程よいアクセントになっている。
黒蜜を絡めとってつやつやしている寒天を眺めながら、我ながらいいチョイスをしたなと思った。

あんみつを堪能しながら顔を上げると、前のテーブルに座った高齢男性の注文が運ばれたところだった。

冷やし白玉クリームしるこ

ガラスの器に入った冷やししるこに白玉が載り、別皿にソフトクリームが盛られている。
うわー、そんなのあるのか。
きっと長年通っている方なんだな。

その高齢男性(というかおじいさん)の白いシャツを着た、少し曲がった背中を見ていたら17年前に亡くなった祖父を思い出した。
顔や背格好は全然似てないけど、おんなじようなシャツを着ていた。

祖父は食べることが好きな人だった。

田舎にいたので近隣に名店などはあまりなかったけど、よくひとりで食事をしていたようだ。(ちなみにお酒には弱かった)

一緒に連れて行ってもらった記憶はあまりないけれど、うちによくお土産を持ってきてくれた。
その影響があってか、私は食べることが好きだし、弟は料理に関わる仕事をしている。

生きていたなら一緒にいいお店に食べに行ったりできたんだろうな、私がおいしいものをこうして食べれば喜んでもらえるかな、よし任しとけおじいちゃんの分も食べるよ、とそんなことを思った。


(以下は完全に蛇足です)

祖父には特技があった。
それは、おならを自在に出すことだ。
呼んだらおならで返事するし、音色や音の大小もコントロールできた。

かいけつゾロリにハマった息子(前回記事参照)が、いかにゾロリたちのおならがすごいかを熱弁するので

「お前にはおならマスターの血が流れているのだ」

と祖父のことを教えてやった。

おかげで息子にとって、会ったこともない「おばあちゃんのお父さん」はすっかり「おならマスター」になってしまった。

おじいちゃん、こんな孫ですみません。
ちゃんとひ孫においしいものを食べさせるからね。

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