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日本の四季_清秋の候


1.滋賀

1_1 信楽焼の里

 滋賀県甲賀市にある信楽焼の里は、日本六古窯のひとつである信楽焼の歴史や文化を深く知ることができるスポットだ。
 約千二百年の伝統を持つ信楽焼は、その独特の風合いや色彩で多くの人々に愛されている。
 その中でも、たぬきの置物は、信楽焼の代表的な作品として有名だ。
 信楽焼の里には、滋賀県立陶芸の森や信楽陶苑たぬき村など、信楽焼に関するさまざまな施設があり、陶芸の世界に触れることができる。
 里の所々に「たぬきの焼き物」が自然と溶け合うように展示され、秋に訪れると紅葉とのコントラストが里山の雰囲気を醸していた。

自然と溶け合う「たぬきら焼き物」

1_2 湖北水鳥公園

 日本でもっとも広大で、しかも五百万年という世界で三番目に古い歴史を持つ琵琶湖は、水生生物の宝庫であり、千種以上の生物が棲息している。
 なかでも、湖北町尾上の湖岸は、今もヨシ原が多く残り、しかも前方の葛籠尾崎に向かって約五百mの沖合が、水深二mから三mの遠浅になっており、たくさんの水鳥が集まっている。 
 昭和六十三年、この尾上から海老江にかけて湖岸約2.5㎞が水鳥公園として整備された。
 公園内の野鳥センターや観察小屋などを利用すれば、誰でも気軽にバード・ウォッチングが楽しめる。 
 公園周辺の琵琶湖岸は、ヨシ原や遠浅の湖底が水鳥たちの繁殖や越冬に適しているため、オオヒシクイやコハクチョウ、オオワシなどの渡り鳥もこの公園にやってきて四季それぞれに異なった生態を見せている。
 日本の夕日百選にも選ばれた幻想的な夕日、湖面に遊ぶ水鳥たち、遠くに竹生島を望むこの公園は、自然愛好家やカメラマンにも人気のスポットだ。
 公園に着いたときは、生憎の雨だったが、道の駅「みずどりステーション」で軽食をとりながら待つこと暫し、空はからりと晴れあがって見事な虹があらわれた。

虹と秋桜のコラボ
湖面を照らす夕日

2.兵庫

2_1 砥峰高原

 兵庫県神河町にある砥峰高原は標高8~900mに位置し、面積は約90ヘクタールと広大で西日本でも有数のススキの草原として有名だ。
 四季折々の風景が楽しめる場所で、春には山野草、夏には緑のカーペット、秋には金色のススキ、冬には雪景色が美しい。
 九月下旬から十月中旬にかけて、高原一面が金色に染まり、風に揺れるススキの美しさは圧巻だ。
 夕暮れ時には、太陽の光がススキに反射してキラキラと輝き、夜には満天の星が広がる。
 この高原は、映画「ノルウェイの森」や大河ドラマ「平清盛」など、映画やドラマのロケ地としても使われたことでも知られている。

銀穂輝く

3.奈良

3_1 ナメコ谷

 奈良県吉野郡上北山村と天川村の間にあるナメゴ谷は、山肌にはスギやヒノキなどの針葉樹が植えられ、尾根筋にはヤマザクラやブナなどの広葉樹が手つかずのまま残っているため、秋には、山桜の紅葉と針葉樹の緑が見事なコントラストを織りなし美しい絶景を作っている。
 R169号・上北村から行者環林道方向への分岐点から100mおきにキロポストが設置されている。その64番ポスト地点のカーブが撮影ポイントだ。
 ここからは、尾根筋に沿って赤く染まったブナや山桜の森が、竜が登っていくような形に見える。
 十月三十日に訪れたが、紅葉にはすこし早かった。
 尾根が真っ赤に染まるのは、例年十一月初旬といわれている。

紅葉にはすこし早かった

3_2 御船の滝

 川上村の井光集落を流れる井光川の源流域にある御船の滝。
 古事記にも名前が登場する歴史ある滝で末広がりの美しい姿をしている。
 約50mの崖から勢いよく流れ落ちるその優麗な姿は、数ある川上村の滝の中でも人気が高く、また冬には氷瀑がみられることもあり、一年を通じて多くのカメラマンが訪れる。
 滝の下にある展望台がカメラポイントだが、細いつり橋を渡り、高い階段を上らなければならないので結構きつい。
 御船の滝の駐車場は滝の近くではなく、井氷鹿の里という施設の駐車場を利用することになるので、林道を徒歩で約3㎞(片道約一時間)歩く必要がある。

3_3 大台ケ原

 日本百名山のひとつ「大台ケ原」は、奈良県と三重県にまたがり、山頂までバスでアクセスできる珍しい山だ。
 山全体が特別天然記念物に指定されており、美しい景色や豊かな自然が魅力である。
 大台ケ原には、東大台と西大台という二つの高原があり、東大台には、800mの断崖絶壁からの絶景が楽しめる「大蛇ぐら」や、高山植物が咲く大台ヶ原湿原などの見どころがある。
 十月十八日、この日は小雨まじりの曇天であったが、丁度よい霧につつまれ、幽玄の風景を撮ることができた。

霧にもやう大台ケ原

3_4 曽爾高原

 日本三百名山の一つ倶留尊山。この山から亀の背に似た亀山を結ぶ西麓に広がるのが曽爾高原だ。
 曽爾高原はススキで一面に覆われた草原で、春から夏にかけては一面に緑の絨毯が敷かれたような爽快な姿をみせる。
 秋にはススキの穂が陽射しを浴びて銀色・金色に輝き、毎年たくさんの観光客が訪れる。
 また、曽爾高原の中腹には「お亀伝説」が残るお亀池があり、湿原特有の希少な植物を見ることができる。
 曽爾高原のススキは、かつては村内の民家の屋根の材料として使われていたが、トタンや瓦が普及したことにより年々使用が減っていき、昭和四十四年春には、杉などの植林が進められた。
 しかし、村ではこのすばらしい景観が杉山などに変わっていくことは忍びなく思い、約40K㎡のススキの草原を奈良県に保護してもらうことになり、その後、ススキ(多年草)以外の植物の生育を抑えるため、毎年二月から三月にかけて山焼きを行っている。
 秋には、一面にススキが広がり、昼間はまぶしい太陽の光を受けた銀色の波、夕暮れには黄金の波となってゆれる景色は、力強く、限りなく優しい表情を見せてくれる。
 早朝に亀山の頂から差し込む光条と透過光に輝く銀穂もまた素晴らしい。

早朝の光

 夕日が沈みかけると、お亀池の周辺に灯りが灯され、暮れなずむ秋の風情を演出している。

暮れなずむお亀池

3_5 般若寺

 般若寺は奈良市にある真言律宗の寺院で、文殊菩薩を本尊としている。 
 飛鳥時代に創建され、般若経の学問寺として栄え、多くの文化財を伝えている。
 明治時代にコスモスの種を境内にまいたことがきっかけで、今では三十種類、約十五万本のコスモスが咲き乱れ、コスモス寺ともよばれる日本最古のコスモス名所だ。 
 この寺の古い文化財とコスモスが見事に調和した風景はカメラマンに人気を集めているが、中でも、南宋から来日した石工・伊行末により建立されたと言われている十三重石塔は、この寺のシンボルとして塔を背景にコスモスを撮るカメラマンが多い。

定番のフォトスポット

3_6 法起寺

 法起寺は奈良県斑鳩町にある聖徳宗の寺院。
 聖徳太子が建立したと伝えられる七大寺の一つで、法隆寺とともに世界遺産に登録されている。
 法起寺には、国宝の三重塔や重要文化財の金堂など、古代の建築様式を伝える貴重な建物がある。
 春には桜、秋にはコスモスが咲き、美しい風景を楽しむことができる人気のスポットだ。

3_7 安倍文珠院

 奈良県桜井市にある華厳宗の安倍文殊院。
 日本最古の寺院の一つで、国宝の文殊菩薩像を本尊とし、日本三文殊の一つに数えられている。
 コスモス名所としても有名で、毎年九月から十月にかけて、約十万本のコスモスが境内一面を彩る。
 コスモスの中に迷路が作られていて、花をまじかに楽しみながら写真を撮り歩くことができる。
 国宝の文殊菩薩像や、干支の花絵など、コスモス以外にも見どころが多いのでシーズンには是非訪れたいスポットだ。

3_8 藤原京跡

 藤原京は天武天皇の計画により日本史上で初めて唐風の条坊制が用いられた都市であり、平城京に遷都されるまでの日本の首都とされていた。
 その広大な藤原宮跡に、地元住民が史跡周辺の荒廃を防ぐとともに、古代の風景を再現する願いも込めて、2006年から毎年コスモスを植えはじめ、今では約三百万本に達する日本でも有数のコスモス畑となっている。 
 コスモスは世界遺産登録を目指す「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」のPRにも一役かっている。

4.和歌山

4_1 高野山

 高野山は和歌山県にある真言密教の聖地で世界遺産にも登録されている。 
 自然にも恵まれており、四季折々の風景を楽しむことができる。
 高野山は夏が短く秋の訪れが早い。
 10月下旬から11月上旬にかけて見頃をむかえた紅葉が、寺院や墓地との鮮やかなコントラストを作る。
 金剛峯寺の境内にはモミジやイチョウが植えられて、紅葉と建物が美しく調和し、壇上伽藍の入り口から東塔近くにまで続く蛇腹路は、紅葉がトンネルのように覆いかぶさる人気スポットだ。


 

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