さいとうほにゃらら

お家で、文章を書く仕事。生きているとわいてくる、日々の「あれこれ」をことばに。息子2人…

さいとうほにゃらら

お家で、文章を書く仕事。生きているとわいてくる、日々の「あれこれ」をことばに。息子2人と夫と4人暮らし。子育て/教育/福祉/社会

記事一覧

ブラックボックス

少し前まで 何をどうすればどう喜ぶか 何をすればどう怒るか 手に取るように分かったのに。 今はもう、君が何にどう反応するかさっぱり分からない。 アイスを食べれば「…

卒園に寄せて

早く一人で食べて欲しいと 早く一人で歩いて欲しいと 早く一人で着替えて欲しいと あんなに強く願っていたのに いま流れてるのは なんの、涙 一緒に食べて 一緒に笑って …

悲しみを悲しむ

息子が2歳になった頃、そろそろ次の子どもが欲しいと思った。それから息子は3歳になり4歳になった。次の1月で5歳になるが、彼はひとりっ子のまま。周りの友達にはだいたい…

幼稚園休園16日めの4歳児

あまりにも平和に、生活が家の中で完結していくので、記録をとった方がいいかなぁと思い立つ。無人島で、精神を正常に保つために日記つける的な。今日が何日か分かるように…

一億総ひとり旅の時代がはじまる

「息苦しい」という言葉を聞くたびに、どきりとする。 息子は、2歳の時に2度肺炎になった。朝起きたときには「なんか動きがゆっくりだな…」という程度で普通にしゃべった…

そのとき、与謝野晶子は「きみ死にたまふことなかれ」と詠んだ

休園16日めにして「幼稚園に行っていない」と気付いた我が家の4歳児。 その気付きは「じゃあいつ始まるのか?」という疑問に繋がったようだ。カレンダーを見ながら「ここ…

タブレットの前に

グローバルだ、AIだ、新しい時代だ 子どもたちにタブレットを与えなければって言ってるうちに なんだか自分もマシーンやなんかに近づいて 新しい何かになれるような気がし…

君が赤ちゃんじゃなくなった、という夏。

今年の夏休みは、色々な所にでかけた。 どこに行っても君は楽しそうで、私も楽しかった。 プールからあがりたがらなくて、永遠に水から出られないんじゃないかと思った。…

自分は自己中でふてぶてしい、イヤな野郎だと思う人に読んでほしい

最近、強くなれたな、と思う。 自分のこれまでの歩みに自信がもてたし、 働くことにも、前向きになれた。 その結果、ライターという仕事に一歩踏み出せたし、文章を書いて…

「あいしている」という言葉について

私は、ラブソングに共感できない。 「会いたくて震える」とか 「連絡なくて…」とか、 「一時も離れたくない…」とか、「???」という感じだ。 でも、子どもが生まれて…

子どもの「泣く」を恐れなくていい

「子どもを泣き続けさせる」ことに抵抗がある親って、 多いんだなと、回りを見ていると思います。 子どもの泣き声は、大人にとって耳障りになるようにできているから、 泣…

言葉だ、ことば、コトバ─言葉を信頼できる子にする─

子どもの希望と親の希望が違うとき、よくありますよね。 「歯磨きの前に絵本を読むか、歯磨きしてから絵本か」 「今トイレに行くか、行かないか」などの細かいことから、 …

あんまり世間が騒ぐから

それは暴力だ、暴力だって。 暴力があふれている。 体を傷つける暴力もあふれかえっているし、 心を傷つける暴力もあふれかえっていて、 「暴力だ」と騒ぎたい人もあふれ…

流されろ

流されろ、流されろ どこにたどり着けるか どこまでも、どこまでも 流されるのは、主体性がないからだと 人は言うけれど 自分で決めて 流れてゆくのなら それは、受け身…

3歳と向かい風

幼稚園に向かう道中、雨も風も、どんどん強くなってきた。 息子には、水たまりさえあればへっちゃらで、座り込んで水たまりの中をのぞきこんだりしているものだから、付き…

世界は、曖昧で不確実なのだ

世界とは、人生とは、人間とは、曖昧で不確実で矛盾にみちたものだ。 若い頃は、そんな世界の曖昧さや矛盾が許せなくて、 いつも「何が正しいのか」ということばかり考えて…

ブラックボックス

ブラックボックス

少し前まで
何をどうすればどう喜ぶか
何をすればどう怒るか

手に取るように分かったのに。

今はもう、君が何にどう反応するかさっぱり分からない。

アイスを食べれば「美味しいね」と笑っていた君

今年はアイスを食べながら
「どうして僕たちは毎日生きてるんだろう?」なんて言っている。

それはまるでブラックボックス。

君の人格というブラックボックスが完成して、その仕組みを私はうかがい知ることもで

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卒園に寄せて

卒園に寄せて

早く一人で食べて欲しいと
早く一人で歩いて欲しいと
早く一人で着替えて欲しいと
あんなに強く願っていたのに

いま流れてるのは
なんの、涙

一緒に食べて
一緒に笑って
怒って喧嘩して
一緒に眠る

いつもと同じ一日なのに
今日は、あなたのようちえんせい最後の日

ママは、寂しくて泣いています

あなたがどんなに甘えん坊でも

すっかり小さくなった制服からはみ出るように伸びた手足が
「ぼくにはここ

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悲しみを悲しむ

息子が2歳になった頃、そろそろ次の子どもが欲しいと思った。それから息子は3歳になり4歳になった。次の1月で5歳になるが、彼はひとりっ子のまま。周りの友達にはだいたいどこかのタイミングで弟か妹が生まれて、気が付けば自分にだけ誰もいない。

優しい息子は、年下の子どもが大好きでよく世話をやく。寂しがりやでもあるので、自分をてとてとと追ってくるその存在が嬉しいようだ。頭が良い子なので、自分にだけどうして

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幼稚園休園16日めの4歳児

幼稚園休園16日めの4歳児

あまりにも平和に、生活が家の中で完結していくので、記録をとった方がいいかなぁと思い立つ。無人島で、精神を正常に保つために日記つける的な。今日が何日か分かるように、木に彫るあの棒線的な。

外出自粛要請がでることになって、3月26日から幼稚園がお休みになり今日で16日目。4歳児は今日も元気だ。

せっかくなのでミニトマトの苗を庭に植える。この騒動が終わる頃、どこまで成長してるのかなぁと想像するとちょ

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一億総ひとり旅の時代がはじまる

一億総ひとり旅の時代がはじまる

「息苦しい」という言葉を聞くたびに、どきりとする。

息子は、2歳の時に2度肺炎になった。朝起きたときには「なんか動きがゆっくりだな…」という程度で普通にしゃべったり食べたりしてたのが、ものの2時間足らずで「これ、死ぬんじゃないか」という感じになって、本当に恐怖だった。今でもその息子の様子は焼き付いていて、いつでもその恐怖に囚われる。息子の気管が少しでもぜえぜえすると、背中がひやっとする。

素人

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そのとき、与謝野晶子は「きみ死にたまふことなかれ」と詠んだ

そのとき、与謝野晶子は「きみ死にたまふことなかれ」と詠んだ

休園16日めにして「幼稚園に行っていない」と気付いた我が家の4歳児。

その気付きは「じゃあいつ始まるのか?」という疑問に繋がったようだ。カレンダーを見ながら「ここから始まるの?」と日付を指差して聞いてきた。

1日ずつ指差して

「ここは?」

「ない」

「ここは?」

「ない」

「ここは?」

「ない」

「ここは?」

「ない」

19日分繰り返す。

20日めからは

「ここは?」

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タブレットの前に

タブレットの前に

グローバルだ、AIだ、新しい時代だ

子どもたちにタブレットを与えなければって言ってるうちに
なんだか自分もマシーンやなんかに近づいて
新しい何かになれるような気がして

そんな私の耳元で

馬鹿をおっしゃい
あなた方は私たちの仲間でしょと
ウィルスがささやき

目の前の光景に
立ち尽くす

どんなに手のひらにある道具がかっこよくなったって
この身体と心と魂は
絶対に土や森や海や星から
離れちゃい

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君が赤ちゃんじゃなくなった、という夏。

君が赤ちゃんじゃなくなった、という夏。

今年の夏休みは、色々な所にでかけた。

どこに行っても君は楽しそうで、私も楽しかった。

プールからあがりたがらなくて、永遠に水から出られないんじゃないかと思った。

「美味しいね」と一緒に笑いあえるのが嬉しくて、ことあるごとに、アイスクリームを食べた。

「暑いね~」と手で顔を仰ぐ仕草が可愛くて、外で一緒に汗をかくことさえ、楽しかった。

風が吹くと、「涼しいね~」と一緒に笑った。
「風のおかげ

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自分は自己中でふてぶてしい、イヤな野郎だと思う人に読んでほしい

自分は自己中でふてぶてしい、イヤな野郎だと思う人に読んでほしい

最近、強くなれたな、と思う。
自分のこれまでの歩みに自信がもてたし、
働くことにも、前向きになれた。

その結果、ライターという仕事に一歩踏み出せたし、文章を書いて人に評価されることも、評価されないことも怖くなくなった。

実は、そのきっかけには、明確な心当たりがある。

最近よく、「HSC」とか「HSP」という言葉を聞くようになった。

「Highly Sensitive Children」

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「あいしている」という言葉について

「あいしている」という言葉について

私は、ラブソングに共感できない。

「会いたくて震える」とか
「連絡なくて…」とか、
「一時も離れたくない…」とか、「???」という感じだ。

でも、子どもが生まれてから、「これは、親の子どもに対する感情を歌っていたんだ…!」と思うようになった。

相手が我が子なら、「毎日会ってたい」も「連絡が欲しい」も
「あなたがいなきゃ生きていけない」も、私は分かるのだ。

******

「愛情」って、やっ

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子どもの「泣く」を恐れなくていい

子どもの「泣く」を恐れなくていい

「子どもを泣き続けさせる」ことに抵抗がある親って、
多いんだなと、回りを見ていると思います。

子どもの泣き声は、大人にとって耳障りになるようにできているから、
泣き続ける子どもにイライラしてしまうのは、自然なことです。
だから、イライラする自分の気持ちも否定しなくて良いし、
子どもが泣くのも自然なことだから、否定しなくて良い。

子どもが転んで泣いているのなら、泣き止むまで、
「痛かったね」と慰

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言葉だ、ことば、コトバ─言葉を信頼できる子にする─

言葉だ、ことば、コトバ─言葉を信頼できる子にする─

子どもの希望と親の希望が違うとき、よくありますよね。
「歯磨きの前に絵本を読むか、歯磨きしてから絵本か」
「今トイレに行くか、行かないか」などの細かいことから、
サッカーを習うか習わないか、というような少し大きなことまで。

最近、こういう場面で親側の希望を伝えると、
「ちょっと、待ってて。今、考えるから」と、
ひとさし指をほっぺにあてて、3秒ほど考える息子の姿があります。

そして。

「うーん

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あんまり世間が騒ぐから

それは暴力だ、暴力だって。

暴力があふれている。

体を傷つける暴力もあふれかえっているし、
心を傷つける暴力もあふれかえっていて、
「暴力だ」と騒ぎたい人もあふれかえっている。

「自分が相手を傷つけているかもしれない」と想像できなければ、
どんなに正しくても、それって全部暴力?

生きているだけで暴力。

だって、私は今日も、蟻を踏みつぶし、蚊を叩き殺したわ。

お腹が減って今にも死んでしま

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流されろ

流されろ

流されろ、流されろ
どこにたどり着けるか

どこまでも、どこまでも

流されるのは、主体性がないからだと
人は言うけれど

自分で決めて
流れてゆくのなら
それは、受け身ではないよな

流されるのは
自分一人では
たどり着けない所に行くため
自分は想像もしていなかった
世界を見るため

人は
自分自身を生かすってことですら
自分一人では
できないみたいだから

*─*─*─*─*─*─*─*─*─

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3歳と向かい風

3歳と向かい風

幼稚園に向かう道中、雨も風も、どんどん強くなってきた。

息子には、水たまりさえあればへっちゃらで、座り込んで水たまりの中をのぞきこんだりしているものだから、付き合いきれずに、私は先へ急ぐ。

急に、びゅーーーーーっと強い向かい風が吹きつける。たまらず、立ち止まって身構えたあと、後ろにいる息子のことを思い出し、この強さでは怯えてしまう!抱き寄せなければ!と振りかえると、気持ち良さそうに笑いながら、

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世界は、曖昧で不確実なのだ

世界は、曖昧で不確実なのだ

世界とは、人生とは、人間とは、曖昧で不確実で矛盾にみちたものだ。
若い頃は、そんな世界の曖昧さや矛盾が許せなくて、
いつも「何が正しいのか」ということばかり考えていた。

だけど、どこまでいっても、最後にたどり着くのは、矛盾した現実で、
矛盾していることこそが、世界の本質なのだとも思うようになった。

止まっているけど、動いてる。
濁ってるけど、輝いてる。
不幸だけど、幸せ。
笑っているけど、泣い

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