喪失の枯れ木

落ち葉が地面に落ち、最後の一枚がひらりと舞う、そんな季節。僕は、彼女と別れたことを理解出来ないまま、過ごしていた。  

まともに眠ることもできず、薄暗い明け方の月を眺める日々が続き、カラスの鳴き声を聞いてから眠りに落ちるようになった。僕は転職したばかりにもかかわらず、欠勤が増えた。別れたことを知ってる友達は、気を紛らわそうと飲みに誘ってくれたりもしたし、新しい出会いをと、女性と知り合う機会を設けてくれた。
それが今の妻。  

僕と彼女は、桜の季節が終わるとともに出逢い、生命漲る新緑のように一緒に幸せな日々を過ごし、思い出という実を得た結果、別れることになった。  

四季折々ある日本に生まれ育った僕も、たくさんの植物たちと同じように育ち、栄養を蓄え成長し、数え切れないくらい失敗もした。彼女と別れてからの絶望した時間も、僕が生きていくうえで必要な糧だったことを彼女との恋愛で知った。  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?