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ray of hope

昨日の来訪者は、私の闇を一瞬照らした。

最近、続けて来店してくれて、身の上など語ってくれる人がいる。
その人が昨日連れてきた少女の名は、あの子と一字違いだった。その名から、
「夏生まれなの?」と尋ねると、小さく頷いた。
「何月?」
微かな声で呟いたのは、あの子と同じ生まれ月。
「何日?」
ああ…あの子と同じ誕生日。

他愛無い、単なる偶然。
…かもしれないけれど。


死んでしまったあの子のことを考えている自覚がないのは、たぶん一瞬も忘れていないから。

何かの拍子に涙が溢れていた日々は過ぎても、心の中の涙が止まることはない。きっと、ずっと…

涙は血になって、痛みを伴うけれど、その痛みがあの子の存在を今も刻んでくれる。一生抱えて生きていく。消えない痛みを。

私があの子の名を口にすると、皆困ったような顔をする。何気ないふりであの子の話をしても、皆泣きそうな顔になる。
なんだか申し訳なくて、言いかけてそっと胸にしまう。
そして、ますますあの子は、私の心の中だけの住人になる。

でも、この出来事だけは、誰かと共有したかった。
信頼できる何人かに、勢い込んで話した。
話した後で、毎回後悔した。

当たり前のことだけど、私と同じ熱量で、この出来事を捉えてはくれない。
でも、誰かとーーーたった一人でもいいからーーーこの思いを、感情の振れを、共有したかった。

あの子を失ってから、私の世界に色は無いけれど、昨日の一瞬の煌めきを忘れることはないだろう。
もう、誰にも言わないけれど…

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