見出し画像

誰に許しを請うでもなく、何に涙するでもなく

「どうして、こんな無理なお願いを聞いてくれるの?」
「だって、断る理由が無いから…」

私の返答に、相手は驚いていた。
「そんなこと言う人に初めて会った!」

安請け合いをしているつもりはない。
無理なものは無理と言う。
でも、私への頼み事など、たかが知れている。
無理なことなど、そうそうあるものではない、と思うのだ。

いつの間にか、物事への執着が薄れた。
積極的に自分で何かをしたい、と思うこともない。
「なすがまま」という言葉がすぐに浮かぶ。

投げやり…とは少し違う。
よくわからないけど、諦観?

大切な人が死んでしまう度に、生と死の間にある壁は薄くなってゆく気がする。
次に離人感に襲われたら、壁をすり抜けることができるような気がする。

まだ何の重荷も持たない小娘の頃、すでに背負うもののあった人の闇に引きずり込まれそうになった。
なけなしの理性を駆使して、その人へ最後の手紙を書いた。
感謝と別れの言葉。
二度と会わないと決めて。
でも最後の一行は、

「また会えますか?」

善悪は紙一重。
清濁も紙一重。
聖俗も然り。

断る理由がないのは、言葉通り、断る理由がないから。
それ以上でも、それ以下でもない。

擦れ過ぎて、心の襞がなくなってしまったのか?
ツルリと、のっぺらぼうの魂…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?