紗愛と謎の神社-1(くすぐり小説)

『おひっこし』
「紗愛ー?早く準備しなさいー!行っちゃうわよー!」
下からお母さんの声が聞こえてくる。今日は引っ越しの日。父親の転勤の関係で、慣れ親しんだこの町から引っ越すことになった。
とは言っても、別に二度と来れないような遠いところに引っ越すわけでもなく、隣の隣の県だ。来ようと思えば電車で3時間くらいで来られるので、今までの友達と完全に離れ離れなんてことにはならないのは幸いだった。

父親も、私の進学のタイミングという少しでも影響の少ない時まで転勤を待ってもらっていたようで、丁度大学進学のタイミング。正直小学校から中学校とかだと、顔触れはそんなに変わらない状況だけども、大学とかになると知っている人のほうが
少なかったりする。

なので、このタイミングで引っ越しをしてもあんまり影響は少なさそう。大学もそれを見越して探していて、家から30分程度の大学に見事合格できたので、通学もそんなに苦にはならないと思う。一番気になっているのは家自体だ。一度行ったことはあるけども、よく見ていたわけでもないので、あんまり内装をしっかり覚えていない。楽しみなような心配なような不思議な感じ。

さっき電車で3時間程度という話をしたけども、車で行くと結構混んでる道を通るようで、3時間半程度掛かるらしい。そんなに長く車に乗っているのも久しぶりかな・・・。

慣れ親しんだ家を出る。18年近く住んだ家とも今日でさよなら。やっぱりちょっと寂しい感じもする。もう戻ってこないんだなぁ。
生まれた時から住んでいた家を出るというのはやっぱり寂しいもの。色々な思い出が詰まっているというのもあるし、やっぱりゆっくり安らげる空間だったしね。

そんなことを考えている間にもどんどん家が小さくなっていく。見えなくなるまでずっと眺めていた。
「紗愛お昼何食べたい?・・・紗愛?聞いてるの?」なんかぼーっとしてしまっていた。お昼ご飯。何が良いかな。そういえば前に食べた釜めしが美味しかったな。また食べたい。その意見は問題なく承認され、お昼ご飯には希望した釜めしのお店になった。

ここの釜めしは地元以外にも結構有名で、お昼時には結構混んでいて、今日も思った通りの混雑。待っている間にも漂ってくる香りでお腹が空いてきてしまう。

15分程度待って、やっと席が空いて釜めしが出てきた。一人一つずつ釜が出てくる。峠の釜めしのような感じ。蓋を開けると具材もたっぷり入っていてとても食欲がそそられる。もちろん味もしっかりご飯にも味がついていて、いくらでも食べられそうになって危ない危ないといいつつ、あっという間に食べきってしまった。

釜めしの釜は、欲しければ持って帰ることもできる。一つだけ持って帰ることにした。なかなかもう来ることもなくなっちゃうだろうしね。ご飯も食べたのでついに新しい家へ出発。

のんびり揺られていると、いつの間にか寝てしまっていた。
「・・・紗愛?起きなさい着いたわよ!」

母親にたたき起こされてやっと目が覚めた。車を出ると目の前にあったのは新しい家。あんまり大きくはないけど綺麗な家。今日からはここが私の家になるのかぁ。と若干たそがれながら眺めていた。

新しい家になって一番の楽しみは自分の部屋。今までもあったけども、若干手狭になっていたから広くなったと聞いて大喜びだった。・・・?なんか目線を感じる。その方向を見ると窓があって、窓から外を見るとちょっと離れたところに鳥居があった。

あんなところに鳥居・・・?神社でもあるのかな。今度行ってみようかな。

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