りさとふしぎなこえ-5(くすぐり小説)

【こえの正体】
昨日はあの後お風呂に入って疲れちゃったのもありすぐ寝てしまった。
今でもなんとなく感覚が残っている。お風呂に入る前に制服を裏返してみたが、いつも通り。特に何かが残っているという事もなかった。

あの声って何なんだろう。というか誰?りさは最近そんなことを考えるようになっていた。くすぐり自体は回を重ねるごとに強くなっていき、段々りさの弱いところを学習してきているような感じまでする。

そういえば今日は夕方から夜にかけてお祭りがある。前の彼氏自慢のなぎに誘われたので一緒に行くことに。なんかドレスコードは浴衣ね!みたいなよくわからない連絡が来ていた。
お祭りとかせっかくなら彼氏と行けばいいんじゃないのって思うんだけど、どうやらなぎの彼氏は今日明日の土日は部活の大会らしい。こんな暑い中大変そうだなぁって思うけど、好きなら気にならないんだろうか。

まあ実際私自身も浴衣なんて一応あるけども年に一回着るか着ないかだ。一年間一度も着られずに仕舞われるよりは一回くらい着てあげたほうが浴衣としてもうれしいんじゃないだろうか。

さて・・・どっちを着て行こうか。持っている浴衣は二着。ピンクベースのと青ベースの。なぎはどういうのなんだろう。丸かぶりだとなんか変な感じもする。一回聞いてみようかな。

なぎに電話を掛ける。「んー?りさどったの」なぎはいつも通り。今夜のお祭りにどんな浴衣着ていくのかって聞いてみた。「んーなぎは青っぽいやつ?それしかないんだよねー」なるほど。そしたら青じゃなくピンクのほうが良さそう。「でもなんでー?」と。別に隠すこともないので、素直に被るとあれかなって聞いてみたって伝えておいた。

着る浴衣も決まったけども、正直一年も来ていない。ちゃんと着れるのかな。本棚にあった着方みたいな本を取り出して、鏡の前で試しに着てみる。ちょっと変な感じ。やっぱり久しぶりだから上手く着用できない感じ。

30分程度試行錯誤してなんとかしっくりくるように着ることが出来た。時間まではあと1時間程度あるので、やりたくもない宿題に取り掛かる。土日にやっておいてと言われたけども量が結構多い。正直2時間くらい必死にやらないと終わらないんじゃないだろうか。ちょっと量をもう少し考えて出してほしい。

宿題を半分程度終わらせたところで、待ち合わせに向かう。お祭り会場は歩いて20分ほど。遠いような近いような。実際家出て5分もすれば屋台とかは出てるんだけど、メイン会場は結構先にある。

なぎと珍しく時間通りに待ち合わせ。言ってた通りなぎは青い感じの浴衣。せっかくだしプリクラ撮りに行くことに。なぎと撮ったのって何時振りだっけ。もう1年くらい撮ってない気がする。正直私はあんまりプリクラ得意じゃない。あのカウントダウンの間にポーズが上手く出来なくて、何か変な感じになってしまう。それに比べなぎはしょっちゅう彼氏とプリクラ撮ってるらしい。何枚も見せられたけどちょっと複雑な気分。

無事?プリクラも撮り終わったので、屋台のほうへ向かう。色々食べたい気分でもあったけども、浴衣だと袖とかに付きそうでお好み焼きとかはちょっと控えたくなる。

でもなぎはそういうの気にしないらしく、お好み焼き屋さんに直行していた。前からお好み焼き好きだったよななぎ。私は一口で食べられるたこ焼きを購入。タコが大きく高評価。時々タコが凄く小さいのが有ってそういうのはあんまり好きじゃない。タコなのか粉焼きなのかわからなくなってしまう。

たこ焼きも食べ終わったので、お祭りの定番?りんご飴を買うことに。じゃんけんに勝つと2個貰える。でもこういう時のじゃんけん運はとても悪くて案の定負けてしまった。まあ2個も貰っても食べきれないんだけどね。逆になぎはこういうのはとても強くて2個手に入れていた。よく食べられるな・・・。

向こうから大きな声が聞こえてくる。お祭りのメインイベントのお神輿。同級生の男子がかついでるみたいだけど、どこにいるんだろう。正直人の山みたいになっていて近づくのも容易ではない。去年もそうだったけども、結局ロクに見れずに終わってしまう。今年も例年通り見れずに終わってしまいそう。

人も多くて大変なので、なぎと一緒に近くの神社に来ることにした。ちょっと人気も少なくて夜だから不気味な感じもあるけど、昔はよく遊んだ場所だからどこに何があるかはわかってる。一応来たので、お賽銭を入れて鈴を鳴らす。なんか神社によって拍手と礼の回数とか順番とか違うみたいだけど、正直よくわかっていない。

…えへへ?りさちゃんいらっしゃい♪

え?あの声が聞こえる。なぎに何か聞こえた?って聞いてみたけど何もー?と。私にしか聞こえてないらしい。

…りさにしか聞こえないよー?ここわたしのおうちなのー

おうち?神社が?ねえあなたは誰なの?

…わたし?りさのおねえちゃんだよ?りさの生まれる前にはいなくなっちゃたけどね?

そういえば聞いたことがある。私が生まれる前にお姉ちゃんが居たって。でも1歳の時に亡くなったって。でもどうして?

…いつも見てたんだよー?でも中々出にくくて。きっかけがあったからやっとお話しできた。

「りさどうしたの?ぼーっとして」なぎに呼びかけられてハッとした。お姉ちゃん?ホントに?でもなんで今ここでその話を・・・?と思っていると、なぎがトイレへ行ってくると言って神社から出て行った。

…あそぼ?

遊ぶ・・・そういうことなのかな。ねえ?名前なんて言うの?わたし知らないから気になる!

…名前?りかだよ?りさと一文字違い。

りかっていうの。今度親にも聞いてみようかな。ホントにそうだったらこの声は本当にお姉ちゃんだと思う。

…あー?信じてないなー?まあ聞いてみて。そうしたら信じてもらえると思うよ。それより早くあそぼ?

りかと名乗る声は結構早く遊ぼうとしてるみたい。わたしとしても・・・うん。「あそぼ?たくさん」

…ふふっりさもはやく遊びたいのー?

ゆっくり頷く。すると後ろから両手を掴まれて引かれて行く。神社の柱と柱の間に連れていかれて左右の柱と手を繋がれた。なんか白いもやのようなものが手首に付いている。そこから柱に向かってもやが伸びていて、パッと見直ぐに抜けそうだけど、もやから外に手を出すことができない。抜こうとしても手で引っかかって抜けない。

…ぬけないよ?たのしいことしようねー?

そう言ったとき、柱から手が伸びてきた。なんかちょっと気持ち悪いかもしれない。脇腹あたりでもぞもぞと動いている。見ているだけでくすぐったくなってしまう。

…よーし。はじめちゃうよー?はいっ!

合図とともに無数の手が体に触れ始めた。浴衣は薄いから感触が良く伝わってくる。「いやあっはははあははやだやめていやぁああくすぐったいあははははいやだくすぐったいだめやだぎゃははははくすぐったいよいひゃああくしゅくはははは」体は動くので左右によじってみたり腕を必死に動かしてみたり。でももうどうしようもない。体全体がくすぐられて逃げられない。

…たのしそーだねー?もっとたのしくなるよー?

横からだけの手が前からもやってくる。「きゃはははははお腹!おなかだめだって!!むりそこはやめてくすぐったいははははは助けておかしくなるくすぐったきゃははああははもう無理だめくるぐったいだだだめええ帯の辺りはゆるくなっちゃうからきゃはははははくすぐったいやあああだああああもうむりだって!息できないだめやだ!!むりくすきゃはははははは」

…これ以上すると浴衣脱げちゃう・・・。やめておく?

一瞬止まって尋ねられた。もっとくすぐってと思う気持ち。でもここは外。もし脱げたら恥ずかしいどころの話ではない。ゆっくり首を縦に振った。

…うん!そしたら今日はおしまいかな?りさー?りかとこれからももっと遊んでくれる?

答えはもう決まっていた。正直お姉ちゃんなのかはわからない。でも。「うん!りさこそ遊んでほしい!」ちゃんとはっきり伝えた。だって。私の願いを叶えてくれるんだもん。
…りさありがとう。やっぱり勇気出して声かけてよかった!またね!

「りさーおまたせー!」なぎが帰ってきた。思わず遅いよ~と声を掛けようとしたが、時間を見てハッとする。10分程度しかたっていなかった。

なぎと一緒に家に向かう。いきなり今日は泊っていきたいとか言い出したからだ。親に聞いてみたら大丈夫とのことなので、一緒に帰った。家に人を泊めるのも初めてだった。

ふと親に聞いてみた。「ねえ。前に私にはお姉ちゃんが居たって話をしてたじゃん?何て名前だったの?」

ちょっと驚いたような顔をされたが、ゆっくり口を開けた。

「りかっていう名前だったよ。」

Fin

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