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みんなで作るニートスピーク

アンチワーク哲学はよく「欲望」「労働」「経済」「怠惰」といった言葉の用法が混乱していることを指摘し、新たな用法を提案している。

となると、もはや言語そのものにアプローチした方がいいのではないか?という気がしてきた。

そういえば僕は大学生のときに人工言語を作ったことがある(その言語は架空の孤島に暮らす人々が使用している設定で、天気と時間帯の掛け算の分だけ挨拶に種類があった。その孤島は極度なムラ社会化していて、複雑怪奇な挨拶を間違えるだけで嘲笑の的となる。そんな設定であった)。もうその人工言語のメモは失われてしまったのだけれど、作ること自体は意外と難しくないと感じたのを覚えている。

とはいえ、ゼロから作るとなると、また覚えるのが大変である。ならば日本語をベースにしつつ、新しい単語の導入や廃止、既存の意味体系の変更、追加などを通じて、ニュースピークならぬニートスピークを作れば良いのではないだろうか?

ではまず、何に手をつけるべきか? 明らかに「労働」関連である。アンチワーク哲学では、「労働」は「価値を生み出すこと」や「金のために働くこと」などではなく「他者からの不愉快な支配や命令に服すること」と定義する。そして支配や命令からの解放を目的とする。ならば、「労働」や「働く」といった言葉に、支配のニュアンスを付与したい。支配は誰しもが良くないことであると考える。いっそ、「労働」はそのまま「支配」に言い換えても良いかもしれない。

「あぁ、4日から支配やわ〜正月休み少なすぎん?」とかそういう使い方である。どうだろう? 検討の余地はまだありそうだ。

さらに言えば、アンチワーク哲学では、人が怠惰であるという前提を排除している。人が怠惰になるのは、他者からの不愉快な命令にささやかなる抵抗を行う場合に限るのであり、自由な社会において怠惰な人物が現れるはずがないと想定する(やりたいことをやって良い社会で、怠惰な人物など理論上現れるはずがない)。ならば、ニートスピークでは「怠惰」「怠ける」「サボる」的な用語は排除されるべきだろう。

とは言え、誰もベッドでダラダラとYouTubeをみてはいけないディストピアを想定しているわけではない。アンチワーク哲学では、人が自由な意志で何らかの選択を行うことを至上目的としている。ならば、人がベッドに転がりたいと感じて実際にベッドに転がるときは、崇高な目的の追求と感じられるような言葉を使わなければならない。

例えば「ちょっと役立ってくるわ」と言ってベッドに潜り込むのである。通常、他者の幸福に貢献することを「役立つ」と表現するが、ニートスピークでは自らの幸福を追求する行為も「役立つ」と表現しよう。そうすることで、余暇の追及に大義名分が生まれる。

「経済」といった用語は端的に排除してしまうのがいい。あとは「負債」とか「借金」「ローン」も消してしまい「約束」に統一しようか。「負債」には破ってはならない神聖さを感じずにはいられないが、「約束」なら簡単に破棄できる。

とまぁ、まだまだ思いつきレベルである。が、言語とは使いながら磨かれていくものなので、肝心なのは多くの人が参加することだろう。ちょっと本格的にニートスピークwikiみたいなページを作ってやってみようかしら。どうしようかな。

やりたいことは山ほどあるというのに、また新しいやりたいことが生まれてしまった。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!