見出し画像

初詣における神との邂逅

2024年1月1日。

今年は余暇に溢れた年になるように、余暇の神へ祈りを捧げるべく、僕は大阪天満宮へ向かった。

不意に、僕は神からの啓示を受けた。この人生において2度目の出来事である。

「ホモ・ネーモよ。預言者よ。私、ヨカ神の声がきこえるか?」
「あ、いま電車なんですよ‥もう降りるので、ちょっとだけ待ってもらえますか?」
「‥すべては赦される」
「‥」
「‥」
「‥あ、降りましたんでオッケーです」
「ホモ・ネーモよ。預言者よ。我の声がきこえるか?」
「もしもしー? すごいですね、これテレパシーですか? ちょっと人混みできこえにくいですが、ギリギリきこえますー!」
「人が多いとどうしてもな、回線が混み合うんだ」
「神さまのテレパシーにも回線とかあるんですね」
「そりゃあ魔法じゃないんだからな。ところで、2023年はよく頑張ったようだな。本を2冊出版したり、テーマソングを作ったり‥」
「あ、もしもしー?」
「もしもしー?」
「あ、大丈夫ですー!なんかめっちゃ人多くて、神社入るのにすごい時間かかりそうですね」
「よろしい、すべては赦される。さて去年は布教活動を頑張ったようだが、今年はさらなる布教活動に励んで欲しい」
「そうですね、本も2冊出しましたし、テーマソングも作りましたしね」
「‥そうだな」
「ただまぁ正直、今年はどこまでできるかわかりませんが‥」
「『何人たりとも、ヨカ神にのみ支配される』だぞ。しっかり励むのだ」
「そんな戒律ありましたっけ?」
「いま作った、『すべてはヨカ神の戯れのままに』だからな」
「はぁ‥」
「ところで、最近お前はアンチワーク哲学なる用語を布教活動に用いていて、ヨカ教の預言者キャラを隠しているようだが?」
「そうなんです‥」
「なぜだ?」
「いやぁ、今どき宗教は流行らないんですよね。みんな無宗教アピールをしたがるから、おもしろ半分で宗教ネタをやっても、マジレスされるというか‥」
「お前はヨカ教をおもしろ半分のネタ宗教だと思っているのか?」
「いえいえ、『例えば』の話ですよ」
「例えば?」
「いやいや、まぁまぁ‥」
「どういうことだ?」
「そういえば、noteのフォロワーは400人を超えましたよ。月間ビュー数も最近は3万超えで、なかなか悪くないんじゃないですかね? 出した本も相乗効果で徐々に売れてきましたし」
「うむ。悪くない。だが、ヨカ教の真理をお前が独自に生み出した哲学でいるかのように触れ回るのは感心しないな」
「いやいや、まぁまぁそれはね、気をつけますよ」
「なにをどう気をつけるのだ?」
「『すべては赦される』ですよね?」
「‥まぁいいだろう」
「ところで、おみくじの結果、教えてくれますか?」
「なぜだ? 大阪天満宮でおみくじを引けば良いだろう」
「いやほら200円かかるし。パッと教えてくれるだけでいいんですよ。友達の美容師に頼んで安くタダで前髪切ってもらう的な‥」
「お前は私を友達だと思っているのか?」
「いやいや、言葉のあやですけども」
「ていうか、それは失礼じゃないか?AV女優の友達に『AV女優なんだし、タダでセックスさせろ』と言うようなものだぞ?」
「神様もAVとか観るんですね?」
「それは‥『すべてはヨカ神の戯れのままに』である」
「ヨカ神のヨカ神も戯れたがっているわけですか?」
「話を逸らすな」
「まぁ良いじゃないですか? パッと教えてくれるだけでも良いですから」
「『先っぽだけ』みたいに言うな」
「神様もそういうこと言うんですね」
「すべては赦される‥」
「じゃあ、運勢も‥」
「仕方ない‥『吉』だ」
「本当ですか? いま適当に決めてません?」
「おみくじなんてそんなものだ‥」
「なんか裏側見てがっかりですよ、もっと神聖なものかと思ってました」
「『本番ヤってないと知ってショック』みたいな言い方するな」
「AVネタしつこいですよ」
「‥すまん」
「で、詳しい中身は?」
「‥今年は正しく評価される年になるだろう」
「本当ですか?」
「あぁ、お前は過小評価されている。今年はさらに飛躍するだろう」
「ありがとうございます、安心しました。この活動は無意味なんじゃないかと不安になることもありましたが、杞憂のようですね」
「あぁ、気にするでない」
「一応、後で大阪天満宮でもおみくじ引いておきます」
「おい、私を信用していないのか?」
「そういうわけではないですが、セカンドオピニオンですよ」
「まぁいい、好きにしろ。そろそろ私は仕事に戻る」
「なんですか仕事って?」
「おみくじだよ、正月はみんなおみくじを引きにくる。私も神様の端くれだ。毎年、神様資格を活かして短期バイトでおみくじの結果発表をやっている」
「余暇の神は余暇を満喫していないのですね」
「普段が余暇だからな、たまにバイトするのも余暇みたいなものだ」
「資格があるなら、おみくじの結果はどの神さまでもだいたい同じなのですか?」
「いや、神によって多少の癖はある。特に昔は酷かった。しかし、最近は規格化されたマニュアルがあってだな。昨年の行動履歴がデータ化され、そこからほぼ自動算出だからだいたい同じだよ。神さまは実質的にハンコを押して名義を貸すだけで、ほとんどコンピューターが占っているようなものだ」
「へーすごいですねー。じゃあ頑張ってください。寒いので暖かくしてくださいね」
「あぁ」
「それじゃあ、お疲れ様でしたー」
「はーい」
「ていうか。オチとかないんですね?」
「なんだ急に」
「いや、なんかもっとヨカ神ってユニークで面白い人かと‥余暇の神様だし‥」
「オチがなくても気にせずに話し始める、それが余暇ではないか?」
「それもそうですね」
「それとも、私が面白くないと言いたいのか?」
「いやいやそんなはずは、面白かったですよAVの話とか」
「まぁいい、ではもう切るぞ」
「ええ、お身体に気をつけてー」
「おう、ではまた」
「はいはーい」
「おつかれさまー」
「うん、じゃあねー、ピッ」


ホモ・ネーモは行列の果てにようやくおみくじを引いた。2024年の運勢は吉。評価され、飛躍の年になるとのこと。

ヨカ神と全く同じ結果を見て、ホモ・ネーモは「同じ結果なら、わざわざヨカ神にきかなくてもよかった」と呟き、雑踏をかき分け、帰路についた。

今年はいい年になりそうだ。そんな予感でいっぱいの空であった。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!