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一首評。

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#一首評

ぬばたまの黒田博樹よああ是は曼珠沙華いちめんの花野だ/牛隆佑『鳥の跡、洞の音』私家版,2023年

色彩鮮やかな印象を受ける一首。
黒いものを導く枕詞である「ぬばたまの」から黒田博樹が導き出される。初句のイメージは暗く、それに導かれた黒田博樹の色調もどこか仄暗い。ただ、そのイメージは三句目で転調する。黒田博樹を知っている読者は「ぬばたまの」がもたらすイメージと黒田博樹のイメージとの間に齟齬を感じるような気がするが、三句目でそのイメージを塗り替える助走がなされる。

下句では一転して明るい色調に切

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