マガジンのカバー画像

一首評。

3
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

書き継ぎてゆくうちに詩が書かしむる一行がある  書きたし/上川涼子「底力」(『現代短歌』2024年1月号)

まず前提として、「詩が書かしむる一行」を自作の詩に書かさせられた経験が存在している。その上で、「詩が書かしむる」という経験の得難さやその瞬間の喜びが一首にはにじむ。詩歌に携わる人間にとっては、納得感のある感慨が読み込まれているように思う。

「書き継ぎてゆくうちに」という切り出しがまず秀逸だ。
掲出歌は50首連作のうちの一首として発表され、その連作中49首目に配されている。その中で掲出歌を読むので

もっとみる