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大安

外は台風。六曜は仏滅。
夜中11時頃、僕は告白をした。
「あなたが安定するまで考えたい」
頭が一瞬で真っ白になった。
「まぁそりゃそうだ」と少し冷静になり、少しでもあの子の横に立とうとしたことが物凄く恥ずかしくなった。
顔面真っ赤っか。頭真っ白、顔真っ赤。マルマインじゃん。マルマインがイーブイに告白してもそりゃ無理よ。【ポケットモンスターマルマイン】が発売されるわけないんだから。
僕は湿気でお絵描きできるようになった窓に自分の名前をたくさん書いた。別になんでも良かったんだけど、何かしてないと悲しさをモロに喰らいそうだったから。書いた文字を袖で消して、なにか言わないとと頑張って出た言葉が、
「いやー早まっちゃったね、しくった!」
なに余裕ぶってるんだよ。ダサすぎるだろ。さすがの窪塚も敬語でちゃんと注意するんじゃないかな。「そういうのいいんで。」って。

「しくってないよ!私も好きだけど、周りからちゃんと考えなって言われて、、」
好きなんだ!じゃあ僕が安定すれば良い話だ!待っててもらおう!!ってほんの一瞬、ほんと一瞬思い、その子が僕のために待ってくれる未来は一つも思い描けなくてより悲しくなった。
2、3ヶ月はどっか出掛けたりするけど、どんどん会う回数が減って、ラインもどんどんしなくなって、他に良い人が現れて、僕は邪魔者になるんだろうなあと容易に想像出来た。
その2、3ヶ月の思い出作りはギロチンの刃をガタガタに砕き、切れ味悪い刃で一思いに死ねない辛さにもがき苦しむだけだからゆっくりフェードアウトしていこうと心の中で誓った。

気付いたら日付は回り、仏滅から大安に。
その子が急に「現状維持はだめだ!」と言った。
昔、告白された友達にフェードアウトされた思い出があるらしく今回もそうなる想像をしたらしい。そりゃ皆そうするよ、苦しいもん。
「だから付き合うか、無関係になるかだよね」
「私は閑古鳥さんと行く遊びが楽しくて、お金を使わない遊びばかりなのにずっと笑ってられるのが今まで無かった」
「これが無くなっちゃうとか、閑古鳥さんが他の人と付き合うとかになったら私は後悔する」

「じゃあ付き合う?」
「よろしくお願いします」

嬉しすぎた。かなり。マルマイン大出世。
だけど相手にはまだ引っ掛かりがあるから、それが取れるまで素直に喜べない。喜んじゃいけない気がする。
安定してこの子が胸張って自慢できる彼氏になるまで浮かれるのは後回し。
安定の正体がなんなのか正直分かってないけど。
いつかこの子の前に立って、それが安心になれたら嬉しいな。

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