「パイの夜」

WEDNESDAY PRESS 073

食事は18時からであった。
パイを使った料理を、というリクエストをしていたので少し気になり17時頃レストランに出かけた。
定休日のイベントである。
ドアを開けて中に入ると、カウンターの上にはダンボール箱などがとっ散らかっている。
厨房の中は、何やら声をかけにくい空気でバリアが張ってあるような感じ。
「思った以上に大変です。あんまりやったことのない料理だから」とシェフがボソッと言った。
ただならぬ雰囲気。「申し訳ありません。18時ギリギリにきます」と声を残し早々に店をでた。

18時から食事は始まった。
「6時間ぐらいずっとやってますが、ようやくです」とシェフ。
オマールエビのフィユテ から始まり
サワラのパイ包み焼き ハーブの香り
ハマグリのスープ
ジビーフのパイ包み焼き 赤ワインソース
イチゴのミルフィーユ
と続く料理は圧巻であった。

パイの特質を理解し、それをいかに効果的に使うか。
「パイは調理器具の一つとして調理しました。油も同じです」と。
これはパイの個性を熟知ているからだと感じた。
シェフは以前「天ぷらを料理ではなく、調理法として考えました」と、牛肉を天ぷらの衣をつけ、揚げてから少し休ませ、衣を外して供したことがある。

終了後 シェフから「パイ料理の奥深さ、次世代に残していきたいと思っています。このような機会をいただきありがとうございました」とのメッセージが届いた。無理やりお願いしたことに対してこんなメッセージをもらったこと。
シェフの料理に対する姿勢の凄さと、仕事に向き合うことをまた考えた。

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