裸体と女体

WEDNESDAY PRESS 021

若い頃、来日ジャズメンのコンサートに連れ立って行った5歳年長の元テレビマン。その人とは古本屋巡りを一緒にしたり、20歳代にパイプを加えたりしていた。僕が独立をして最初に手がけた関西のガイドブックでは「下町グルメ」という肩書きであった。それはテレビ局勤務であり実名を出すことが許されなかった時代のことだ。また大阪の夕刊紙で毎週、各人が観た映画やコンサートや飲食店などを執筆するということもあった。

当然のことながら音楽には滅法詳しい。ジャズメンのことを話すと「オレも本で読んだ知識やけどな」と言いながらアーティストのエポソードがポンポン飛び出してくる。先日もラジオの番組用に借りたレコードを返すついでに昼食(うなぎ)を食べた。ここ数年は河内音頭を追いかけているという話題になり「去年は無理やったけれど、その前は夏はかなりの音頭聞きに行ったな!」という話になった。僕も独立前の事務所の社長は演歌と河内音頭の作詞家であり、共通の話題で盛り上がった。そんな先輩が映画について話だし「前の京マチ子シリーズは良かった。今は松竹の古い作品を観ているのけれど、桑野みゆきなどは艶っぽい女優やった」と話し「最近の女優は綺麗けど、色気がない」と付け加えてくれた。
言われてみるとそんな気分がするが、とどめの一言は「今は裸体はあるけど、女体はないな」であった。これは名言である。

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