「絶滅危惧種 フランス料理」
WEDNESDAY PRESS 065
奇しくも昨秋、二人の友人から同じ新聞記事が送られてきた。
タイトルは「判で押したようなメニューの数々 フランス料理は絶滅危惧種なのか」というセンセーショナルなもの。
これは作家のマイケル・ブースが世界中を家族で食べ歩き、それを元に何冊ものノンフィクションを書く作家のレポートである。
彼は十数年前パリに住んでいたことがある。コルドン・ブルーで学び、いくつかのミシュラン星付きレストランで働いていた頃のこと。そんな彼が50歳の誕生日に妻と二人の息子で三つ星レストランで食事をしようと思った。だが、コロナの影響もありいわゆる「グランターブル」というレストランは全て閉まっており、それを残念に感じた。そして色々なレストランで食事をしたようだ。そこで何日も出会ったのは、前菜のフォアグラか山羊のチーズのサラダ、ブッラータ、メインならステーキ&ポテトかマグレ・ド・カナールかタラ、デザートはクレームブリュレ、タルトタタン、フォンダンショコラかアイスクリームとどこも面白みのない、ありきたりなものばかりと嘆く。フランスの全ビストロとブラッスリーがパリ近郊の巨大物流拠点に出来合いの料理を注文しているのではないのかと思うほどであったようだ。
パリから地方へ出かけても、その状況は悪化しているだけとも。
帰国前にパリのコンテンポラリーレストラン「パリ」で食べた料理のみが感動を与えてくれたという。独創的で、厳選された食材からは愛情と懐の深さを感じたという。注目すべきは和のタッチを色濃く感じたこと。
日本がフランスから学べることもまだ多少はあるかもしれない。しかし手遅れになる前に可能な限り助けを借りた方がいい。フランス料理が、歴史上の人工遺物となってしまう前に。と締めくくっているのだ。
和食もフランス料理も、無形文化遺産の認定を受けている。
このマイケル・ブースの考察はおそらくフランス料理だけのことではないだろう。日本の料理についても同様の意見を持つ人たちは多いはずだ。
まだまだ我々が食について考えを巡らすことは多い。
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