「直木賞作家の事業継承」

WEDNESDAY PRESS 068

「大阪王将」が後継者のいない町中華の店を買い取り、その店の名物料理を生かしながら経営をするという。今後、そのスタイルを増やすそうだ。いわゆる事業継承である。名物料理をブラッシュアープして、グループ店のメニュー強化にもいい影響を与えるように感じる。

またファンド出身で数々の企業を再生、または業績を伸ばしてきた知人が、同じような事業継承の会社を立ち上げた。個店というより、湘南地区の弁当製造会社や九州の食肉加工販売会社や駿河の魚介類の卸業など、企業の継承がしゅたる事業となっている。

そんなとき驚くような事業継承の記事を見た。
今期第166回の直木賞を「塞王の盾」で受賞した今村翔吾さんが、なんと経営難に陥っている書店を継承したのだ。作家の書店経営はほとんど聞いたことがない。作家が出版社の経営に関与することは、菊池寛の文藝春秋を始め類を見ることはあっても、町の本屋さんを引き継ぐことは稀有と言える。
「書店での本や人との出会いは人生の大切な記憶。そんな思い出も含めて守りたい」と思いを語る。そして1年後には、税理士のハンコ付きで売り上げがどうなったかを公表するという。

その記事は、酒呑童子伝説を題材にした今村さんの代表作の一つ「童の神」では山中を拠点とする主人公たちが朝廷軍から攻められた際にこんなせりふを言う。「やつらは道あるところが道だと思っている。道なきところに道を生む苦労を知らぬ。人の生き方も同じよ」、「道なき道」を踏み出す作家の挑戦は始まったばかりだ、と締めくくる。

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