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Foods, Hound, Furry Hunt.【795】

総身で奏でられるバンの苦悶を遮るように、運転手の声が響いている。
傾いた夕日と紫煙の臭いに満ちる車内で語られているのは、
今向かっている『仕事』にまつわる話。

「ソレ」は、類似した事件――児童向けキャラクターの着ぐるみを悪用した性犯罪の中に紛れるように、何の前触れもなく現れた。

人を喰う、『着ぐるみ』の怪物たち

何処からとなく現れ、瞬く間に数を増やし、
人間社会を餌場へと蝕んでいった、駆除するべき害獣。
それらが発見された、始まりの事件について――。

「で、ペド野郎の死体をつついてみたら……」
転がった頭部が虚空を見ている。
横臥した体はさっきまでの力が嘘のように空虚に。
そして。
その中から流れ出す、
鮮やかな――
「液状の、肉」
ぽつりと溢れた声に驚いたのか、運転手の声が一瞬止まる。
すっかり怪談噺になっていた名調子に水を差すつもりはなかったが、
思わず漏れた声に居心地の悪さを感じ、窓に顔を向けて目を瞑る。
古びたバンの振動は相変わらず、景気よく不満をがなり立てていた。

“泣かないでよ、母さん”
泣き崩れる母親と、彼女を慰める少年の姿を何度見ただろう。
“オレは大丈夫だからさ”
驚くべきことに、それは事実だ。
心的外傷によって成長の止まった肉体。
そんなものを背負わされてなお、彼の精神は健全に在り続けた。
……本当に?
親子が長年通った病院を後にするのを見送りながら、看護師はふと考える。
あるいは。
何よりも、「成長を止めた体」こそが、狂気の産物なのだとしたら――?

所定の待機位置まで移動していくバンを見送って、一息をつく。
人工的に用意された狩場、「公園」のベンチに、彼は『疑似餌』として座っている。
足を揺らせば全身に潜ませた凶器が、猟犬の牙のようにガチガチと鳴る。
スピーカーから流れる雑音塗れの童謡をハミングしながら、彼は――
最初の被害児童、雨宮ハルキは、ようやく訪れた機会を噛みしめるように、ただじっと笑っていた。


【the game is opened.】

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