まだ資本主義やってます

あれは2012年だった気がする。
いや、2011年だったかも。
資本主義が終わるって聞いたのは。

当時の勤め先の社長に、じゃあ何になるんですかと聞いた。滅多に会うことのない雲の上のような存在だったその社長に、いい質問だと褒められた。
もう10年も前のことなんだなあ。

強いて言えば『智』本主義かなあ
と言う答えが返ってきた。
人間の知恵や在り方そのものが価値になる時代がくるって。
その時の私はなんだかワクワクした。
お金よりも知恵の価値が高い時代って一体どんなだろうと、何がどうなったらそうなるのだろうと考えただけでも楽しかった。

でもそのあと、その社長の脱税で東京国税局がやってきて、1日でダンボールに何十箱もトラックに積んで持っていった。
誰が脱税をリークしたのか、本当に悪意があったのか、いや捉え方の問題だ、などとあらぬ噂で持ちきりになった。

およそ10年経ったんだな、とさっき気づいたけど、私はまだ資本主義の中にいる。
好きなものを買うために働いて、ペットボトルでお茶を飲み、車に乗ってガソリンを給油している。
独身なんて、お金使う以外何が楽しいのと、言う友人の言葉も身に沁みる。
信じられるのは友情とお金だけだと慰められて救われたこともある。
実家に帰る友人は、東京にいなければブランド物なんて必要ないと言ってGUCCIやら PRADAを転売しているけど、さて地域の若者はというと、割と良さげなデカい国産車を乗り回して、代行使って飲んで、ブランドもののバックを持っているのと何も変わらないような気もしてる。

さてと。
とりあえず、この春からは自転車に乗ろう。
自分の足で漕いで行けるところまでいける自分に戻ろう。
『智』と言うには程遠い私なりの優しい暮らしを始めよう。

また10年後にこの事を思い出すのかもしれないな、まだ資本主義やってんのかな、私。