No No No boy

ぼくは中学生になったばかりだった。
その人は、甘く、柔らかく、火照った肌で、底なしの沼のようにぼくを飲み込んくれた。その人を獣のような頂きに押し上げようと、ぼくは、ぼくとそのひとのそばを離れ、中空から眺めていた。恍惚を感じることは敗北だ!それしか考えなかった。目の前のその人はギュッと瞳を閉じ、ぼくの肩に指を喰い込ませながら、静寂を湛えていた。それから中学生のぼくは、ある夜年上の彼女が住むアパートに。錆びた外階段を数段昇った時だと思う。その人の笑い声を春の夜風が運んできた。ぼくは音をたてないように注意して階段を降り、ふうっと、夜空とアパートの灯りを眺めていた。

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