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『君を失って、言葉が生まれた』。わかります。でも怖いんです。先に行ければ何の問題もないのですが…

藤川幸之助さんの詩画集『君を失って、言葉が生まれた』画:田雑芳一さん(2006年11月6日/ポプラ社刊)

詩人、児童文学作家の著者は1962年熊本で生まれ、長崎在住とこの本には書かれている。

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帯に、
“この物語は、君が命と引き換えに作ってくれたんだね。”

そして、おそらく担当編集者のペンで、
“末期がんの妻との激しく静かな暮らしの中で綴られた言葉の数々を、繊細で温もりのあるイラストが包み込んだ詩画集。”とある。

イラストを描かれた田雑芳一さんは、1979年、静岡県生まれ。大阪藝大の映像学科卒業。柴崎友香さんとの共著『いつか、僕らの途中で』を出されている。

お二人とも存じ上げなかった。(柴崎さんには一度動画インタビューをさせてもらったが、今は関係のない話)


この本は、家人の蔵書。

10数年前に、“いい本だよ、読んで見たら”と渡されていた。

何度か手に取り、ページを開こうとして、

そのまま本棚に差してあった。

この夏、同じ本を何度も読み返している。

今、4度目だ。

アリ・スミスというスコットランドの作家の『秋』という小説。

面白いのだ、とても。

でも、ただ面白いだけじゃないモノが何度も同じページに向かわせる。

キーワードは、やはり“大きな物語”。

とても失礼な言い方だが、ふーっと、息を吐いた時、この本を取り出した。

この本のタイトルと、“いい本だよ、読んで見たら”という家人の言葉が、手渡された日から引っかかっていて、手が届かないでいた。

冒頭を記す。

“去年のまま。コートのポケットをまさぐると入れたままの手袋が生き物のように潜んでいた。

君の手とかたくつなぎ合う時のように。しっかりと。“


もう一度、読みかえそうと思うが、すこし怖い。

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