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博士の溜飲 嫩葉の福音

爛漫と花を誇った季節は去り、瑞々しい青さが芽吹く頃。
時折、強くなる風に撓る枝。
それでも折れずに弛み、嫩葉は羽撃くように身をはためかせる。

続く悪天候にも飛ばされまい、折られまいと、その樹は静かに呼吸をしている。
 震える枝や千切られんばかりに風に煽られる嫩葉たち。
重ねた年輪を潤しながら目には触れずに佇む幹。
再び、これからの結実を約束するため密やかに蠢く樹皮の中は想像を膨らませることしか出来ない。
見上げた空は高く高く、天上そこにに太陽はわらう。
なにが悪いか、心配症な博士は過去の事例と見比べては眉間を顰める。どんどんと心に積もる苦悩、それすらも楽しんでいるのかもしれない。

また花が見たい一心で、習慣のように眺め続けるだけ。
きっと、もうすぐ、少しは福音を齎す嫩葉が逞しくなり、分厚い濃厚な緑の葉はわたしたちに緑蔭を与えてくれる。


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