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宵闇

視界すら焼き付くしそうな熱い闇の凝縮だった。
きみがぼくを舐めて何が溶けるのか。
わからなかった。
それでも、なにか溶け出すことを願った。  

喉に残る噛み砕いた純情の骸。
体内に刻まれた棘の痕。それすらも癒えてゆくのか。
きみの唾にふやけた若いぼくの時間は
少しずつ、少しずつ、色褪せるのに輝きを増すのは肥大する過去の影。
眩しいのは想い出じゃなくて、その奥向こうにある未来の光だと思いたかった。

鬱い夢に魘される深い色の時間に跫音だけ克明に届く。
気配もなく、陰すらないのに。

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