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【企業分析】HubSpot

HUBS (NYSE)
時価総額:146億ドル
株価:296ドル
売上高:13億ドル
営業利益:▲5,500万ドル
(2021年)

事業内容: クラウドベースの顧客関係管理(CRM)プラットフォームの提供
設立年:2006年、2014年上場
本社: 米国🇺🇸マサチューセッツ州ケンブリッジ
代表者: Brian Halligan(創業者)、Dharmesh Shah(創業者)、Yamini Rangan (CEO)
従業員数:5,895人

概要

HubSpotはアメリカに本社を置き、 中小企業、スタートアップ向けにマーケティングプラットフォームをSaaSで提供する企業です。

設立は2006年と比較的古い会社ですが、ここ数年でかなり伸びている会社となっています。

HubSpot 本社

HubSpotの会社missionは「to help millions of organizations grow better」で日本語にすると「何百万もの組織がより良く成長するのを助ける」といったところでしょうか。

こういった理念をもとに中小企業やスタートアップ向けにSNSやブログやWebサイトの管理、 検索エンジン最適化(SEO)、 マーケティングの自動化、電子メール、CRM、分析・レポートなどの機能をプラットフォーム化し世界70ヵ国、12万社以上に提供しています。

同様に中小企業やスタートアップ向けにサービスを展開している会社としてはLegalZoomという会社があります。こちらは個人が会社を始める際に登記事務などを支援するオンライン・プラットフォームを展開しています

プロダクト・ビジネスモデル

プロダクト

①Marketing ②Sales ③Service ④CMS ⑤Operationsの5つのプラットフォームをプロダクトとして提供しています。

①Marketing:ブログやHPやSNS管理、検索エンジン最適化(SEO)、WebサイトやSNSへの広告管理などが可能なプロダクトです。

②Sales:これはCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)でEメール管理、顧客プロファイル管理、営業関係のドキュメント管理、顧客との通話管理などが含まれています。

③Service:これはカスタマーサービスを充実させ、活用するもので、 ヘルプデスクの自動化、顧客アンケートのフィードバック、レポート作成などの機能が含まれています。

④CMS:CMSはContents Management System:コンテンツ・マネジメント・システムの略でWebサイトなどを構築、管理、更新できるシステムのことで、専門的な知識がなくてもWebサイトなどを作成できるサービスです。

⑤Operations:こちらは業務効率化を図るためのプロダクトでアプリの連携、顧客データの整理などを行い、 組織全体の業務プロセスを俯瞰する機能が備わっています。

価格体系は以下のような形となっています。

どうしてHubSpotがここまで世界中で広がりを見せているのでしょうか?

HubSpotの大きな魅力は、創設者であるBrian Halligan(ブライアン ハリガン)とDharmesh Shah(ダーメッシュ シャア)の2人が定義づけたインバウンドマーケティングでしょう。
彼らはこのインバウンドマーケティングを多くの企業がスムーズに実現出来るよう、2005年にマーケティングソフトウェアを開発しました。そのソフトウェアツールが社名と同じ「HubSpot」なのです。

「HubSpot」とは、インバウンドマーケティングから、顧客管理やプロジェクト管理などのセールス機能まで全てのデータをひとつのツールによって統合的に管理し、企業の販売促進を力強くサポートするソフトウェアです。

HubSpotが推奨するインバウンドマーケティングとは

インバウンドマーケティングとは、ブログやeBook、ランディングページなどを作成し、消費者を引き寄せ、顧客へと変えるマーケティング手法です。

HubSpotがインバウンドマーケティングを推奨する理由、それはデジタルの進歩によるものです。

デジタルの進歩により、これまでさまざまなチャネルが生まれているのと同時に、消費者の購買行動やインサイトは変化し続けています。
これまでマーケティングの世界では、テレビや紙媒体、電車などの広告がメインでしたが、デジタルの進歩によりWebサイトやアプリなど、消費者との接点は多方面に広がりました。

それにより、企業の情報をただ受け取る側だった消費者が、自ら情報を検索・選択出来るようになったのです。
消費者自ら情報を取りに行くようになると、必要のない広告は消費者から嫌厭され、避けられるようになります。

つまり、到来のマーケティング手法であったCMやDMなど、企業側から一方的に情報を発信するやり方では、消費者の購買行動の中に深く入り込むことが困難になったのです。

時代と共に消費者が求めるものが変化する中、これまでの企業から情報を送るアウトバウンドマーケティングではなく、検索エンジンやソーシャルメディアなどを通して消費者自身に見つけてもらい、引き寄せるインバウンドマーケティングを取り入れる必要があるでしょう。

では、HubSpotが推奨するインバウンドマーケティングではどのようなことができるのでしょうか?
3つのフェーズに分けてご紹介いたします。

【Attract】ユーザーを惹き付ける

インバウンドマーケティングのフェーズ1はAttract(惹き付ける)です。
ターゲットに合わせた適切なブログを作成、UI/UXを意識した魅力的なサイトへ最適化、ペイドサーチなどを活用し、検索結果からリードへつながるトラフィックを引き込みます。
全ての人々を集客する必要は無く、企業の見込み顧客に合わせたコンテンツを作成し、より適切なトラフィックを獲得することでより効率的、かつ効果的に成果を出すことが可能になります。

【Convert】トラフィックをリードへと転換

フェーズ2は惹き付けたトラフィックをリードへと導くConvert(転換)です。
トラフィックをリードへと転換させるためには、ランディングページを作成し、適切なCTAを設置、サンクスページを最適化しリードを優良なコンテンツへと誘導するなどの手法があります。

【Delight】顧客を満足させ喜んでもらう

フェーズ3はDelight(喜び)です。
トラフィックから転換したリードに、Eメールとマーケティングオートメーションを使用し、それぞれに合わせてパーソナライズされた情報を適切なタイミングで提供します。リードが喜ぶコンテンツを配信することにより、企業とリードとの関係性はより継続的で信頼性のあるものとなっていくでしょう。

HubSpotでは、それぞれのフェーズに必要な機能を統合的に提供し、企業のインバウンドマーケティングをトータルでサポートしてくれます

HubSpotの機能

HubSpotにある、他のソフトウェアとは異なる魅力とはなんでしょうか?

それは、ひとつのプラットホームに必要な機能が揃っていることです。

デジタルが普及するにあたり、世の中にはさまざまなツールが存在するようになりました。

CMSやSEOツール、ソーシャルメディアのアプリケーションからマーケティングオートメーションツールまで、現在では多くのツールがあります。
それぞれのツールを個別に見ると素晴らしいものばかりです。しかし、沢山のツールが存在することは、インバウンドマーケティングを行うにあたって便利なことばかりなのでしょうか?

実は、多くのツールがあることにより、ツール選定やデータ統合の難しさ、ツールについて学ぶことが多すぎるなどの問題が起こり、それらがインバウンドマーケティングを成功させる足かせになっている場合もあります。

そこでHubSpotでは、ひとつのプラットフォームにインバウンドマーケティングからセールスまで、必要な機能をシンプルにまとめたのです。

学ぶべきプラットホーム、パスワード、請求書、全てがたったひとつ。

そして、全てのデータがひとつのツールに入っていることによって、社内の情報連携もスムーズに行えます。

ここからは、実際にどんな機能があるのか、HubSpotの代表的な機能を詳しく説明していきましょう。

MarketingHub

Marketing Hubは、リード作成から育成まで幅広くサポートするマーケティングプラットフォームです。
HubSpotが推奨するインバウンドマーケティングを行う為に必要な機能をひとつにまとめ、クラウド型サービスとして提供しています。

集客アップ

プロスペクトの期待に応えるコンテンツ作りをサポートする機能です。
多くのトラフックを惹き付け、企業サービスの認知向上へと繋げます。

・ランディングページの作成/管理/ホスティング
・A/Bテストによる最適化
・SEOガイド
・ブログ作成とパフォーマンス分析
・ソーシャルメディアの投稿/効果測定
・HubSpotCOCを使用したWEBサイト作成機能(アドオン)

リード転換の促進

コンバージョン率向上をサポートする機能です。
訪問者ごとにカスタマイズされた魅力的なメッセージやオファーでトラフィックをリードへと導きます。

データ測定や分析も可能なので、より効率的な戦略立案ができます。

・見込み顧客の情報をリスト管理
・カスタマイズ可能なCTAとコンバージョン測定
・Webサイト/コンテンツ/ベンチマークなどのマーケティング分析
・リードスコアリング

成約数の拡大

業務の効率化により成約数向上をサポートする機能です。

理想的なフォローアップでリードを次のステップへ導きます。

・Salesforceとの連携
・マーケティングオートメ―ション
・ウェブチャット/チャットボット

満足度の向上

既存顧客の満足度向上をサポートする機能です。
コンテンツやキャンペーンを最適化し、アップセルや顧客を推奨者へと促します。

・Eメールのデザイン/パーソナライズ/自動送信
・マーケティングオートメ―ション
・ソーシャルメディア管理

HubSpot CRM FREE

完全無料のCRM(顧客管理)プラットホームです。
プロスペクトの情報を自動で入手し面倒な入力時間を削減。
リードや顧客情報、取引の進捗や売り上げフォーキャストを管理してセールスチームの効率化をサポートします。
また、Eメール配信や内部通知、顧客フォローメールなど、セールス担当者の作業を営業ステージに合わせて自動化します。

Sales Hub

セールスチームに向けて開発された、営業力強化サポートプラットフォームです。
メールパフォーマンスを測定し、Eメールの成功率を導き出します。また、リードや顧客が添付ファイルを開いた時間なども追跡可能。それにより、効果的な戦略立案を立てることができ、セールスチームの生産性や成約率の向上に繋がります。

Service Hub

Service Hubは顧客サポート業務を支援するプラットフォームです。
顧客からのサポートリクエストをコンタクト情報と結び付け、過去の履歴を確認したうえで最適な対応を行えます。
また、サポートのノウハウをナレッジべ―スとして顧客に公開することで、顧客自ら解決する手助けとなります。
顧客満足度の向上の為、より高いカスタマーサービスを提供できます。

ビジネスモデル

収益モデルは売上の殆ど(9割)はサブスクリプション料でそのうちの大部分はMarketingからとなっています。(7割弱)

MarketingはYoYで30%成長ほどですが、他のプラットフォームは成長著しくSalesはYoY70%以上の成長、Serviceは80%以上、CMSは55%以上の成長となっています。

Operationsはまだローンチしたばかりのようです。

Net Retention110%+ということでそこまで高くなく、 今後プラットフォームの充実化をしていく模様です。

市場動向

2014年末と少し古いですが、NTTコムリサーチが行った調査コムリサーチが行った調査によるとマーケティングオートメーションを認知しているのは全体の約45%。従業員数100名以上の企業となると60%を超えます。

つまり企業規模が大きいほどマーケティングオートメーションを認知していることがわかります。さらに認知者全体で「マーケティングオートメーションに興味がある」と回答しているのは約55%にも上り、これだけでも重要性の高さを感じるのではないでしょうか。

上記の調査から1年以上経過した現在では、確実に認知が拡大し、重要性もさらに増しているのではないかと思います。 

実際に「マーケティングオートメーション」というキーワードを皆さんの周囲で見聞きすることが多くなっていると思います。

マーケティングオートメーションの市場規模

MarketsandMarketsによると世界のマーケティングオートメーション市場は年率8.55%で成長し、2019年には約55億ドル(約5,589億円:1ドル=101円計算)にまで上ると予測されています。

そして国内のマーケティングオートメーション市場は2019年に490億円に上ると言われています。

しかし、2014年の市場規模326億円から5年間で約50%の拡大というのはやはり驚愕の数字です。何より国内においてマーケティングオートメーションが認知されだしてから、まだ数年程度。ここまでの成長率はやはり多くの企業がデジタルマーケティングに力を入れ出したからと言えます。

世界のプレイヤー

皆さんは世界中で最も選ばれているマーケティングオートメーションをご存知ですか?以下の統計はリード発掘ツールとして世界中で利用されているDatanyzeの調査によるデータです。 

引用:Marketing Automation market share in the Datanyze Universe

①Hubspot(ハブスポット)
②Marketo(マルケト)
③Pardot(パードット)
④Dmandforce(デマンドフォース)
⑤Active Campaign(アクティブキャンペーン)

世界のマーケティングオートメーションシェア1位はHubspotで、全体の29.5%を占めています。つまり世界企業の4社に1社以上がHubspotを使用しているということですね。 

さらに同ページで閲覧できるユーザー数推移についても見てみましょう。

引用:Customer migration analytics in Marketing Automation

2016年8月の各製品におけるユーザー数推移は、Hubspotが純増数2,614ユーザーで1位です。近年国内でのHubspot導入数が急増しているのでそれが関係しているかもしれませんね。 

マーケティングオートメーションは全てを自動化するわけではない

ここまでマーケティングオートメーションの市場規模からその重要性を探ってきましたが、今後導入予定のある企業が注意すべき点があります。

それは、マーケティングオートメーションは“全てを自動化するわけではない”ということ。マーケティングというのはコンテンツや施策案があってこそ成立するものであり、これらを作成するのはあくまで人です。

つまりクリエイティブな部分まで自動化してくれるわけではありませんし、戦略を練ってくれるわけでもありません。 将来的には人工知能がすべてを解決してくれるかもしれませんが、現段階ではすべての戦略や施策は人に依存するということです。

加えてシナリオ設定やリードスコアリングにおけるスコア基準など、これらも自らの手で行わなければなりません。従ってマーケティングに深い知識のある人材か、ノウハウのあるパートナーと手を組み、導入する必要があります。あくまでもMAツールに魂を込めるのは人間ということです。

ここ最近では減ってきたかもしれませんが、未だマーケティングオートメーションを“魔法のツール”と誤解して導入する企業が少なからず存在します。SFA(セールスフォースオートメーション)が営業を自動化しないのと同じですね。

そのような企業がMAツールを導入すると超・超高級のメルマガ配信システムになってしまいます。

業績

続いての業績内容について見ていきたいと思います。

2021年2Qの売上は$311million(約342億円)で成長率は前年同期比で+53%となっています。

粗利率は81%です。

21年の通年売上ガイダンスは$1,270millionでYoY+44%となっています。

営業キャッシュフローはプラスです。

14年からはCAGR(年平均成長率)41%で成長してきているというなか直近四半期は53%で成長が加速しているのは素晴らしいと思います。

長期的にはNon-GAAPの営業利益は20~25%を目指しています。(現状は9%)

経営者 

創業者

ブライアン・ハリガンは、CRMプラットフォームを提供するHubSpotの会長兼共同創業者です。2006年に創業したHubSpotは、2014年にニューヨーク証券取引所に上場。今や世界中で顧客数12万社以上、収益10億ドルを超える企業にまで成長しました。

ブライアン・ハリガン会長兼共同創業者

HubSpot創業前、ブライアンはLongworth Venturesのベンチャーパートナーや後にMicrosoftに吸収されたGroove Networksの営業部門のバイスプレジデントを務め、PTCではシニア バイス プレジデントとして営業部門を率いていました。 

また、2016年11月にベライゾン・コミュニケーションズに買収されるまで、フリート管理ソリューションのグローバル企業であるFleetmatics Groupの役員も兼任。Glassdoorの「最も評価の高いCEO」の1人にも幾度となく選出されています。

著書には、当社最高技術責任者(CTO)であるダーメッシュ・シャアとの共著によるInbound Marketing:Get Found Using Google, Social Media, and Blogs(邦訳:インバウンド・マーケティング)、そして当社のアドバイザーであるデイヴィッド・ミーアマン・スコット、ビル・ウォルトンとの共著によるMarketing Lessons From The Grateful Dead(邦訳:グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ)の2冊があります。

ブライアンは、バーモント大学の電気工学博士とMITのスローン マネジメント スクールのMBAを取得し、現在はMITのスローン マネジメント スクールで上級講師としてコース15.392(講義名:Scaling Entrepreneurial Ventures)の教鞭もとっています。

また、ウッズホール海洋研究所のメンバーであり、気候変動に重点的に取り組んでいます。

CEO

ヤミニ・ランガンは、HubSpot の最高経営責任者(CEO)です。CEO就任前は、HubSpot初の最高顧客責任者として、マーケティング、セールス、サービスの各チームを統括しました。

ヤミニ・ランガンCEO


ハイテク業界のベテランであり、プロダクトマーケティング、セールス、戦略など、24年以上の経験を有しています。

以前はDropboxの最高顧客責任者を務め、組織全体に顧客志向を根付かせる役割を担っていました。

Dropbox 以前は、Workday の営業戦略およびオペレーション担当副社長として、収益の 4 倍増と営業組織の拡大を支援しました。SAPでは、戦略、プリセールス、バリューベースセールスなど、顧客対応のリーダー的役割を担い、画期的な案件の成約を支援しました。

バークレー校で電子工学の学士号、コンピュータ工学の修士号、MBAを取得しています。2019年、YaminiはSan Francisco Business Timesの「Most Influential Women in Business」の一人に認定されました。

株価推移

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