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【企業分析】Snowflake

SNOW (NYSE)
時価総額:490億ドル
株価:154ドル
売上高:12億ドル
純利益:▲6.8億ドル
(2021年)

事業内容:クラウドデータプラットフォーム
設立年:2012年、2020年上場
本社: 米国🇺🇸モンタナ州
代表者: Frank Slootman(会長兼CEO)
従業員数:3,992人

概要

Snowflake(SNOW)は、2012年に設立されたクラウドベースのデータウェアハウス企業です。

データウェアハウスとは、直訳すれば「データの倉庫」である。利用者により定義範囲は異なるが、一般に時系列に整理された大量の統合業務データ、もしくはその管理システムを指す。

Snowflakeのビジョンは、「組織がデータの価値を探索、共有、ロック解除するためのシームレスなアクセスを可能にする」世界を作成することです。
同社のクラウドデータプラットフォームにより、顧客はデータを使用してアプリケーションを構築し、洞察を導き出し、信頼できる唯一の情報源から情報を共有することができます。

競合他社として、アマゾンやグーグル、マイクロソフトなどがありますが、容量や解析力において、スノーフレークは業界一のレベルの高さを誇っています。

Snowflake本社

同社は、Oracle社のデータアーキテクトであったBenoit Dageville氏とThierry Cruanes氏、そして分析やBIに特化した高速データベースを持つVectorwise社の共同創業者であるMarcin Zukowski氏の3人により、2012年に創業されました。

同社の設立の背景となったのは、クラウドに対応したDWHは多数存在するものの、いずれもオンプレミスで稼働していたものをクラウド環境へ適用したもので、古いデータベースの思想を取り入れており、またスケーラビリティが低いことに課題を感じていたことです。

そこで同社では、クラウド環境でDWHを稼働させるメリットを最大に生かせるよう、クラウド環境に特化した独自のデータベースアーキテクチャを構築し、コストを抑えつつも高性能を実現するクラウドDWHの「Snowflake」の提供を開始しました。

2020年9月時点で、SnowflakeはAmazon Web Service、Microsoft Azure、Google Cloud Platformにて利用することが可能です。

プロダクト・ビジネスモデル

Snowflakeの商品

Snowflakeのクラウドデータプラットフォームを使えば、データウェアハウス、データレイク、データマート全体の分析を1つの真実のソースに統合できます。これにより、データ共有が簡素化され、データガバナンスとコンプライアンスの問題が最小限に抑えられます。

使用事例は、データエンジニアリング、データレイク、データウェアハウジング、データサイエンス、データアプリケーション、そしてデータエクスチェンジが含まれます。

SnowflakeはSaaS(サブスクリプション)ビジネスモデルではありません。
「顧客が未使用のソフトウェアにお金を払う結果になることが多い」と考えているためです。顧客は消費した分のみ支払う形式です。

同社のクラウドDWHは、オンプレミスで構築されたデータベースをクラウド化したものではなく、クラウド上で使用することを前提としてフルスクラッチで開発した独自技術を利用しています。

従来のクラウドDWHは、オンプレミスで利用されたものが土台となっているために、次のような課題が生じていました。

・構造化データ用の設計であるため、半構造化データの管理が困難である
・コンピュートリソースとストレージリソースを自由に拡張できない
・マルチクラウドにおける、リージョンを跨いだデータ管理がサポートされていない

Snowflakeでは、これらの課題を解決する独自のアーキテクチャを構築することができており、最も特徴的なのは、コンピュートとストレージを独立したリソースへ分離しているところです。

シェアードディスクとシェアードナッシングの両方のアーキテクチャを組み合わせており、個別のアプリケーションごとにコンピュートクラスターを用意し、複数のクラスタでひとつのデータを共有するアーキテクチャをとります。

FORM S-1 Snowflake Inc. p.84

これにより、多数のユーザーから同時にリクエスト処理が発生した場合でも、パフォーマンスを低下させることなく実行することを可能としています。
さらに、コンピュートリソースとストレージを自由に拡張できるため、大量データを処理する時はコンピュートリソースを増やし、処理が少ないときはリソースを減らすといった調整が可能です。

また、Amazon Web Service、Microsoft Azure、Google Cloud Platform全てのパブリッククラウド基盤でサービスを提供していることから、クラウドをまたがってデータ連携させることができるため、特定のクラウドプロバイダーに障害が発生した場合であっても、サービスを継続して利用することが可能です。

Snowflakeのもう一つの特徴は、「エコシステム」を採用していることです。顧客が利用しているBIツールや、分析ツールをそのまま接続することができ、snowflakeで利用可能です。

次の図は、同社のパートナー企業が持つ技術であり、これらを利用することで、新たなツールを導入することなく、データソリューションを実現することができます。

例えば、BIツールであればTableauとの接続ができることから、Snowflakeで分析したデータをTableauのダッシュボードを使って可視化することができます。

このエコシステムの活用と、自由度が高いスケーラビリティにより、従来よりも低コストでクラウドDWHの導入が可能です。

コロナ禍で活用されたSnowflakeのデータマーケットプレイス

ここまで、Snowflakeのアーキテクチャについて説明してきましたが、同社が競合優位性を持つ理由に挙げられるのが、Snowflakeのサービスの一つであるデータマーケットプレイスの存在です。

サードパーティがデータマーケットプレイスへ公開したデータを、Snowflakeのユーザは自由にアクセスすることができ、自社のDWHへ蓄積することが可能です。

サードパーティとしては、データを公開することによって、ユーザ間において新たなビジネスを創出することに繋がり、利用者側としては、生の最新データを即座に取得することが可能です。

このサービスは、複数のパブリッククラウド上でDWHを構築できる同社ならではの特徴であると言えます。

なお、2020年9月時点では、Google Cloud PlatformとMicrosoft Azure Governmentにおいては利用できず、今後のサポート拡大を予定しているとのことです。

Snowflakeの公式サイトにおいて、次のように様々なデータセットを検索することが可能であり、目的に沿ってデータを取得することができます。

データマーケットプレイスは昨今のコロナ禍においても有効活用されました。

サードパーティであるStarschema Inc.が、2020年3月に世界中から報告された新型コロナウイルスの発症率と死亡率に関するデータをデータマーケットプレイスで公開しました。

現在に至るまでにSnowflakeの数百もの顧客がこのデータを利用しており、自社で保有するデータと結びつけて、業務や販売、サプライチェーンに対する影響分析をリアルタイムで実施しています。

ここで、Snowflakeから出された興味深いグラフをご紹介します。

このグラフは、Starschema Inc.の提供した新型コロナウイルスに関するデータが、Snowflakeアカウント間でどのように共有されたのかを示しています。 中央にある青い円は、Starschema Inc.のデータセットを使用したSnowflakeユーザーを表しています。

そして、1つの組織によって公開されたデータが、その後どのような領域で役立っているのかを可視化しています。

Starschema Inc.のデータセットだけでのこれだけの広がりを見せていることから、より多くの企業が、データマーケットプレイスを通じてデータを公開することによって、ビジネスのネットワークが広がっていくことを示唆しています。

今後の成長戦略

大きく分けると3つの戦略を立てており、新規顧客の獲得、既存顧客へのサービス拡大、パートナー企業の開拓です。

新規顧客獲得については、同社のグローバル戦略では、EMEAとアジア太平洋地域のマーケットを重点的に拡大しており、現在では収益の12%が米国以外となっています。
今後は同社の強みでもある、リージョンを跨いだクラウド環境上でのデータ共有技術を基に、海外収益を更に拡大していく方針を立てています。

既存顧客拡大については、snowflakeのプラットフォームを利用するメリットを伝えていき、より多くのデータをプラットフォーム上で処理、保存、共有するしてもらえることを目指しています。
同社のビジネスモデルが、従量課金制度を採用していることから、プラットフォームを利用する機会が増えるほどに収益拡大に繋がります。

また同社が掲げている”Expand data sharing across our global ecosystem.”とは、データマーケットプレイスの利用拡大を意味しており、個々の企業がデータ処理をするためにプラットフォームを利用するのではなく、各企業がデータを共有し、協業することによって、新たなイノベーションを生み出す取り組みを目指しています。

Snowflakeの地域別顧客

Snowflakeのデータウェアハウスの顧客数上位3地域は、米国が7307社(62.23%)、英国が846社(7.20%)、インドが531社(4.52%)で、それぞれ上位を占めています。

市場動向

サービス市場としてのデータウェアハウスは、組織規模(大企業、中小企業)、エンドユーザー産業(BFSI、政府、ヘルスケア、Eコマースおよび小売、メディアおよびエンターテインメント)、および地域によってセグメント化されています。

市場概況

サービス市場としてのデータウェアハウスは2020年に14.4億米ドルと評価され、2021年から2026年の予測期間にわたって20%のCAGRで、2026年までに43億米ドルに達すると予想されています。新しいビジネスチャンスをつかむためのビジネスプロセス、製品、顧客、サービスに関する情報は、市場にプラスの影響を与えています。

近年、データの管理性に対する懸念の高まりと複雑さの増大により、データウェアハウジングは、特に金融、ビジネス、ヘルスケア、およびその他の業界における実際のアプリケーションに大きな関心を集めています。

低遅延および高速分析に対する需要の高まりは、ビジネスエコシステム全体のエンタープライズ管理におけるビジネスインテリジェンスの役割の増大と相まって、市場の需要を促進すると予想されます。ただし、データ品質の管理と改善の複雑さが増すと、調査対象の市場の成長にとって重要な課題となる可能性があります。

さらに、BFSI、小売、eなどの複数のエンドユーザー業界で生成される構造化データと非構造化データの量が大幅に増加するため、特にクラウドベースの展開全体でのデータウェアハウスサービスの需要が高まると予想されます。 

-商業、政府および公共部門、および製造業。たとえば、中国を拠点とするビデオゲームパブリッシャーであるTencentは、MicrosoftAzureやGoogleCloudと競争するために、2019年半ばに日本でクラウドサービスを導入しました。

また、高度な分析を実行するためのデータウェアハウスの採用の増加、データ量の急速な増加、規制コンプライアンスの向上、およびマルチクラウドアーキテクチャの台頭により、クラウドベースのデータウェアハウスソリューションを採用するための十分な機会が生まれています。

主要な市場動向

BFSIセクターが主要シェアを保有

銀行、金融サービス、および保険は、定期的に生成される大量の顧客データを処理するため、サービスとしてのデータウェアハウス市場の成長にとって非常に有利です。BFSIセクター全体で大量のデータが生成されるため、企業は、システムに格納されている情報のパフォーマンスと動作を自動的に追跡するためのデータウェアハウスソリューションを必要としています。

また、BI機能を備えたソリューションを通じて革新的なビジネス戦略を開発し、全体的な運用効率を向上させるための分析が必要です。BNYメロン、モルガンスタンレー、バンクオブアメリカ、クレディスイス、PNCなどの銀行は、すでに銀行のビッグデータに関する戦略に取り組んでいます。 、および他の銀行は急速に追いついてきています。

いくつかのFinTechの新興企業が、米国カリフォルニア州のシリコンバレーで登場します。これにより、貸付業務が拡大し、リテールバンキング機関の決済ドメインが向上することが期待されます。これにより、企業はビッグデータ分析の助けを借りてかなりの数の個人や中小企業に融資するため、これにより信用引受手続きが強化されます。

オンラインデータの量、多様性、速度の上昇には、それぞれの製品やサービスの提供に関連する消費者の購買行動を理解するために、ソーシャルメディア分析などの分析ソリューションが必要です。そのため、保険会社はクラウドベースのデータウェアハウジングソリューションを採用することが増えており、ソーシャルメディアの監視および分析ツールを実装して、保険商品の売り上げを伸ばし、保険商品に関連する顧客の感情を分析しています。

さらに、金融コンサルティング会社は、オンプレミスソフトウェアを繰り返し更新する負担から解放されるために、サービスとしてのデータウェアハウスをますます採用しています。

さらに、高速インターネット接続にアクセスすることで、どこからでもサービスとしてのデータウェアハウスにアクセスできます。これにより、BFSIセクター全体でサービスとしてのデータウェアハウス市場の需要が高まっています。

競争環境

サービス市場としてのデータウェアハウスは非​​常に競争が激しく、少数の主要なプレーヤーで構成されています。市場シェアに関しては、現在、一部のプレーヤーが市場を支配しています。競争環境は、Google LLC、Teradata Corp.、SAP SE、IBM Corp.、Microsoft Corp.など、地域全体の著名なプレーヤーの存在と統合されており、重要な重点を置いている主要ベンダーの一部です。

データウェアハウスサービスの提供をサポートするための専門サービスの形式化についてですが、技術の進歩と製品の革新により、さまざまな中堅企業が新しい契約を確保し、新しい市場を開拓することで市場での存在感を高めています。

2019年10月-自動クラウド移行会社であるSnowflakeとNextPathwayInc.は、レガシーデータウェアハウスからSnowflakeへの移行を加速するための戦略的パートナーシップを発表しました。

Snowflakeは、Next Pathway独自のコード変換テクノロジーであるSHIFTTMのライセンスを取得し、Snowflakeのお客様に、クラウド移行作業のレガシーコード変換で通常最も時間と手作業とコストのかかるタスクを自動化する機能を提供します。

2019年9月-IBIOSITはIBMと提携して、革新的なPOWER9ソリューションを提供します。新しいアライアンスは、BIOS ITのx86ベースのソリューションの多様なポートフォリオを強化し、IBMPOWER9AIに焦点を合わせたスケールアウトシステムの完全なスイートを追加します。

POWER9製品範囲は、次世代アプリケーション向けに強化されたコアおよびチップ・アーキテクチャーを提供し、顧客が真の価値を確実に得られるようにするための最も有能なソリューションを提供し、世界的に有名なテクノロジー・パートナーとの集中的なコラボレーションを必要とします。

主要なプレーヤー

・アマゾンウェブサービス株式会社。
・IBM Corporation
・マイクロソフト
・Snowflake Computing Inc.
・SAP SE

主要プレーヤー別顧客数

業績

売上高(セグメント別、地域別)の推移

FY2021(2020年2月-2021年1月期)の売上高は5.9億ドルと、前年度比+123.6%となりました。

セグメント別の売上高は、以下の通りです。

・プロダクト:2.5億ドル、前年同期比+103%

・その他:0.2億ドル、前年同期比+121%

地域別の売上高構成比は、アメリカ大陸が82%、欧州/中東/アフリカが14%、アジアパシフィックが3%を占めます。

顧客数、請求額、RPO(残存契約債務)、ネットリテンションレート(売上継続率)の推移

顧客数は4,990件(前年同期比+60%)となりました。

このうち、プロダクト売上高100万ドル以上(過去12ヶ月)の顧客数は116件(前年同期比+107%)となりました。

RPO(残存契約債務、受注残に相当)は15.3億ドル(前年同期比+122%)となりました。

ネットリテンションレート(既存顧客の売上継続率)は169%と、100%を大きく超えて推移しており、追加的なサービス等により既存顧客の支払いが増加していることを意味します。

利益の推移

FY2021の粗利益は3.5億ドルと、前年度比+135.8%となりました。

粗利益率は59.0%と、前年度の56.0%から改善しました。

キャッシュフローの推移

FY2021の営業キャッシュフローは▲0.5億ドルと、前年度比赤字幅縮小となりました。

営業キャッシュフローマージン(営業キャッシュフロー/売上高)は▲7.7%と、前年度の▲66.7%から改善しました。

FY2021のフリーキャッシュフローは▲0.9億ドルと、前年度比赤字幅縮小となりました。

フリーキャッシュフローマージン(フリーキャッシュフロー/売上高)は▲15.9%と、前年度の▲75.3%から改善しました。

経営者 

Snowflakeは、元オラクルでデータベース製品の開発に携わっていたBenoit Dageville(共同創業者兼President of Products)とThierry Cruanes(共同創業者兼CTO)、Marcin Żukowskiの3人がカリフォルニア州サンマテオで2012年に設立した会社です。

クラウド時代のデータ分析環境を作ろうと、最新テクノロジーを使い、ゼロベースで製品を開発しました。約3年間のステルスモードでの製品開発を経て、2015年に一般提供開始を開始します。

Zukowskiはオランダのスタートアップ企業Vectorwiseの共同設立者でした。同社の最初のCEOは、サターヒル・ベンチャーズのベンチャーキャピタリストであるマイク・スパイザーでした。

2014年6月、元マイクロソフト幹部のBob MugliaをCEOに任命しました。

2019年5月、ServiceNowの元CEOFrank SlootmanがCEOとして、ServiceNowの元CFOであるMichael ScarpelliがCFOとしてSnowflakeに入社しました。

現CEOのFrank Slootmanは、2019年に入社しました。

CEOのFrank Slootman

オランダ出身のSlootman氏は、ドットコムブームでコンピュウェアに就職してカリフォルニアに移り、その後ボーランド・ソフトウェアに就職し、今回のIPOが3回目のIPOとなりましま。

2003年にストレージの新興企業データドメインのCEOに就任し、2007年に上場、2009年にEMC社に18億ドルで売却。

その2年後には、企業向けソフトウェア事業であるServiceNowの会長として再び活躍し、2012年の株式公開に導きました。

スルートマンは、オプションも含め、Snowflakeの株を10%ほど保有しています。

株価推移

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