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【企業分析】Paypal

PYPL(NYSE)
時価総額:980億ドル
株価:87ドル
売上高: 250億ドル
営業利益: 42億ドル
(2021年)

事業内容: オンライン決済システムの運営
設立年:1998年、2002上場
本社: 米国🇺🇸カリフォルニア州サンノゼ
代表者: John Donahoe (会長)、Dan Schulman 
(CEO)
従業員数:39,000人

概要

電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービスを提供するアメリカの企業である。PayPalアカウント間やクレジットカードでの支払い、口座振替による送金を行う。

サンノゼにあるPaypal本社


現在では200以上の国と地域で、100通貨以上での決済、56通貨で銀行口座への入金、25通貨での支払いの受け取りが可能なネット決済の筆頭グローバルスタンダードであり、3億4800万人以上のユーザーおよび2900万以上のマーチャントが世界中で利用している。

PayPalは元々ピーター・ティール、ルーク・ノゼック、マックス・レヴチンが1998年に設立したコンフィニティで、翌年に決済業務をスタートした。

1998年12月にPayPal Inc.の社名でピーター・ティールとイーロン・マスクにより設立。アメリカのカリフォルニア州サンノゼに本社がある。

2002年にeBayに買収されその子会社となっていたが、2015年7月にPayPal Holdings Inc.の社名で独立した。

2021年9月に日本のオンラインショップ向けの後払い決済サービス「Paidy」を約3000億円で買収した。

プロダクト・ビジネスモデル

主要プロダクトはPayPalとVenmoである。

PayPalの対応通貨は25、2021年時点でアクティブな口座数は3.77億にのぼります。

グローバルにオンラインにおける資金移動サービスを提供しており、送金の度に手数料を徴収する形(これは日本メガバンクなども徴収しますので同様)で収益をあげています。

法人等ビジネスアカウントは受領にも手数料がかかってきます。

ビジネスモデル上、Paypalはどれだけ「世界中の人々に口座を開いてもらえるか?」がビジネス戦略上の肝になるということです。

PayPal

オンライン上(モバイル・PC)でデビットカード、クレジットカードの決済を安全に行うことができるサービスです。

この「安全」とは、支払い相手にクレジットカード情報を知られずに済むこと。

通販でモノを買い、商品が届かなくても返金保証をしてくれる(海外のEC等でも買い物がしやすい)などが挙げられます。

モバイルの決済方法では、PayPalは以下のようにシェアが大きくなっています(2019年調査)。

Venmo(決済SNS)

Venmo(元はbrain Treeのサービス)ですが、こちらもPayPalと同様、個人間送金サービスを提供しています。

LINE Payをイメージしてもらえればわかるのですが、飲み会後の割り勘だったり、個人間の軽い貸し借りなどで米国でよく使われているアプリです。

PayPaldでもできることをVenmoは行なっているのですが、何が大きく違うかというと「UI(ユーザインタフェース)」が大きく異なります。

VenmoのUIはSNSという感じで、若者に受け入れられやすい設計になっていると感じます。

特徴としては、個人間送金無料、ソーシャル機能ですね。ソーシャル機能は若者の気軽なコミュニュケーションを生み出すことに価値があります。決済SNSですね、新しい概念です。

「オンライン決済サービス」をPayPal・Venmoは提供しています。そこに違いは大きくありません。

しかし、世代によって使い勝手の良さは変わることや、口座開設者数を増加させるための施策として使い分けているということだと思います。

また、PayPalは、主に若者向けに提供しているVenmoの方にも、暗号通貨を導入する意向を表明しています。

市場動向

市場調査レポートの販売などを行うグローバルインフォメーションは、2025年までのデジタル決済の世界市場について調査を行った。

 デジタル決済の市場規模は、2020年の793億米ドルから2025年には1541億米ドルに達し、CAGR14.2%で成長すると予想。デジタル決済推進のための世界的な取り組み、Mコマースの成長を可能にするスマートフォンの普及、eコマースの売上高の増加、インターネットの普及率の上昇などにより、市場の拡大が予測される。

COVID-19のデジタル決済市場への影響

 COVID-19の流行は、製造業、物流、ホスピタリティ、輸送、ヘルスケア、小売などの主要セクターの業務に多大な影響を与え、IT・通信、エネルギー・公益事業、政府、教育、BFSIなどのセクターに中程度の影響を与えている。

パンデミックの影響により、非接触型およびウォレット決済の採用が加速。eウォレットは、ロックダウンと現金交換の不安から、ピアツーピア(P2P)送金、請求書の支払い、必要不可欠なサービスのためのC2B(Customer to Business)支払いでの利用が増加している。

しかし、一部のウォレットプロバイダーは、加盟店や消費者への手数料を引き上げており、加盟店がウォレットを利用した取引を受け入れない状況になっている。

世界TOP100万のWEBサイトに導入されている決済サービスシェアの図(2015年)

参考記事:What is the market share of Square, GoPayments, and Payware?

業績

同社があげる収益の大半は「決済取引にかかる手数料」によって得られている

・PYPLの2020年4Q決算は、売上$6.12B、YoY+23%増(アナリスト予想:$6.09B)。→◎
・EPSは$1.08(アナリスト予想$1.00)→◎
・ガイダンス:2021年の売上は$25.5B(予想$25.7B)、前年比+19%(予想+18.7%)。Non-GAAP EPS成長率は前年比+17%の見通し。→△
・アクティブアカウント数3.77億(YoY+24%)、新規アクティブアカウント数1600万(YoY+72%)
・Transaction+25%(YoY+7%)。
・仮想通貨目的のユーザーが2倍のログインを実行。

売上高

売上$6.12B、YoY+23%増(アナリスト予想:$6.09B)。

売上は直近3四半期で堅調な推移となっています。

トランザクション収益もYoY+7%、世界中での「PayPal Checkout」の消費者の利用が加速したことが影響しています。

ユーザーの総支払い金額です。YoY+36%の2770億ドルと大きく増加。

マーチャント・サービス・ボリューム(事業者決済)

8660億ドル。4年で年平均成長率(CAGR)30%。

eBayよりもTOP15マーケットプレイスのTPV Growthが上回っています。

2015年にeBayよりスピンアウトし、eBayのデフォルト決済から外れることがその際にアナウンスがありました。

スライドでは、eBayがなくともTPVが成長していることを大々的にアピールしています。

アクティブアカウント/新規アクティブアカウント(NNAs)

アクティブアカウント数は3.77億(YoY+23.6%)。新規アクティブアカウントは1600万(YoY+72%)。

新型コロナウィルス感染拡大騒動時(Q1-Q2)ほどの獲得数には至りません。アクティブアカウント数は3.77億(YoY+23.6%)。新規アクティブアカウントは1600万(YoY+72%)。

新型コロナウィルス感染拡大騒動時(Q1-Q2)ほどの獲得数には至りません。

それでもEC等を通じたオンライン決済の需要は増加を続けており、まだまだ順調に顧客獲得が進んでいるように見えます。仮想通貨の盛り上がりも追い風になっていると読み取れます。

財務状況(資本配分/自社株買い/M&A)

2015年にeBayよりスピンアウトしてから184億ドルのフリーキャッシュフローを創出。

Q4-20に2.65億ドルの自社株買いを実施。自社株買いはEPSを引き上げますので株式市場で好感されます。

2020年は年間で自社株買いは合計16億ドルを実施しました。

PaypalはFCFの30-40%を自社株買いに充てる方針をとっており、2025年まで継続することを計画しています。

経営者 

創業者

創業メンバーはマックス・レヴィン、ピーター・ティール、ルーク・ノセックの3人。

・マックス・レヴィン

ウクライナ共和国キエフに生まれ、1991年にイリノイ州シカゴへ移住。1997年にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で計算機科学の学士号を取得した。同級生にYouTube共同設立者の陳士駿がおり、後にPayPalの従業員として採用している。

インターネットツール開発会社を2社(NetMeridian Software と SponsorNet New Media)共同設立し、1998年には John Bernard Powers(設立後まもなく退社)、ピーター・ティールとともに Fieldlink を設立する。社名を Confinity と改め、彼らはPayPalとして知られる決済サービスを開発した。別の会社 X.com と合併し、社名は PayPal Inc. と変更された。

PayPalは2002年2月に株式を公開し、同年10月eBayに買収された。買収時、レヴチンの2.3%のPayPal株は約3400万ドルもの価値になった。彼は主にPayPalの詐欺防止システムへの貢献で知られ、CAPTCHAを早くから商用実装した Gausebeck-Levchin テストの共同開発者でもあった。

・ピーター・ティール

西ドイツのフランクフルトに生まれる。1歳のときに家族とともにアメリカに移住。少年時代はアフリカで過ごしていたこともある。スタンフォード大学で哲学および生物学を学び、1989年に学士の学位を取得。その後スタンフォード・ロー・スクールに進学し、1992年に法務博士の学位を取得する。

卒業後、合衆国控訴裁判所で法務事務官、ニューヨークの法律事務所サリヴァン&クロムウェルで証券弁護士、元教育長官ウィリアム・ジョン・ベネットのスピーチライター、クレディ・スイスで通貨オプショントレーダーとして働く。

1996年にティール・キャピタル・マネジメントを設立。1998年にはコンフィニティ(後のPayPal)を共同設立し、2002年に15億ドルでeBayに売却するまで最高経営責任者を務めた。

・ルーク・ノセック

ポーランドのタルヌフに生まれる。米国に移住した後、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でコンピュータ工学の学士号を取得した。

大学在学中の1995年夏、同じくイリノイ大学の学生であるMax LevchinとScott BanisterとともにSponsorNet New Media, Inc.を共同設立した。
その後、Netscape社に就職。1998年、マックス・レヴチン、ピーター・ティール、イーロン・マスク、ケン・ハワリーとともにペイパルを共同設立し、マーケティングと戦略担当の副社長として同社の「即時送金」製品を作り上げた。

PayPalが上場し、2002年に15億ドルでeBayに売却された後、Nosekは旅行とエンジェル投資を追求するために会社を辞めた。2005年、Thiel と Ken Howery と共に、サンフランシスコを拠点とし、10億ドル以上を運用するベンチャーキャピタルである Founders Fund を設立した。

2017年7月、ノセックはFounders Fundを離れ、宇宙開発に特化した投資ファンドであるGigafundを立ち上げた。

CEO

現在のPayPalのCEOは「ダン・シュルマン」です。

同氏はヴァージン・モバイルの創業者であり、スプリントのプリペイドグループ元社長。

富裕層が持つクレジットカードでお馴染み「アメリカン・エキスプレス(AXP)」のグローバル戦略の責任者も歴任。

株価推移

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