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【企業分析】Beyond Meat

BYN(NYSE)
時価総額: 20億ドル
株価:33ドル
売上高: 4.6億ドル
営業利益:▲1.7億ドル
(2021年)

事業内容: 人工肉の製造・開発
設立年:2009年、2019年上場
本社: 米国🇺🇸カリフォルニア州
代表者: イーサン・ブラウン(創業者兼CEO)
従業員数:1,419人
主要株主: ビル・ゲイツ(22.91%)

概要

ビヨンド・ミートは、カリフォルニア州エル・セグンドに本部を置く植物由来の人工肉を製造・開発するアメリカ合衆国の食品テクノロジー企業。2013年より全米のホールフーズ・マーケットで販売されている。

エルセグンドにある新しいグローバル本社の完成予想図

プロダクト・ビジネスモデル

ビヨンドミートが製造する植物由来の肉は年々注目を集め、多くのスーパーマーケット(SM)で販売されるようになってきたこともあって、18年には生産力を3倍に増強したという。現在では米国内の50以上のSMやファストフード店に製品を提供するほどである。

ビヨンドミートがつくる植物由来の代替肉とは?

ビヨンドミートの植物由来の代替肉は、エンドウ豆が主成分だ。さらに、ココナッツオイルで肉の感覚や感触を再現している。肉の赤みがかった色はビーツを用いることで、再現している。

見た目は牛肉や豚肉などとそれほど変わらないように見えるが、よく見ると肉ではないことが分かるかもしれない。しかし、調理して食べると肉汁なども再現されており、食感も本来の肉に近づけている。

ひき⾁状の「ビヨンドビーフ」のパッケージを開けたところ。⾒た⽬はひき⾁によく似ている
焼き上がったビヨンドビーフ。切り⼝も含め、⾒た⽬には⾁とほとんど変わらないように⾒える

ビヨンドミートの提供商品

ビヨンドミートはさまざまな商品を提供している。主力商品であるビヨンドバーガーをはじめとして、ビヨンドミートボール、ビヨンドソーセージ、ビヨンドチキン、ビヨンドビーフなど幅広く展開中だ。

ビヨンドバーガーはピンク色の生肉のような状態から、加熱することで肉汁によるジューシーさと褐色への変化が特徴的だ。

さらに、ビヨンドバーガーは20年に2つの新バージョンを発表。低脂肪のパティと高脂肪のパティの2種類である。また、日本の航空会社では初めてとなる機内食でのビヨンドバーガーの提供を日本航空が行うなど、さまざまな動きが出てきている。ビヨンドバーガーの注目度の高さが伺える。

一方、比較的新しい商品がビヨンドミートボールだ。20年9月に発売され、アメリカ国内ではコストコやホールフーズなどが取り扱っている。ドバイ(中東)ではスターバックスコーヒーがサンドイッチの具材として採用しており、国や地域によって活用方法が異なる。

ビヨンドミートボール(写真/ビヨンドミート)

ここではビヨンドミートの最近の動向とこれからの展望をみていく。

●ペプシやマクドナルドなどとパートナーシップを結ぶ

20年は世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が起きた。このパンデミックはフード業界全体に影響を与え、ビヨンドミートでもコスト上昇がみられた。しかし、コスト上昇は短絡的なものであり、今後に関しては明るいとみる向きが多い。

20年1月、ビヨンドミートはペプシと新商品開発で協力を発表した。スナック製品だけではなく飲料開発の検討もしている。さらに、マクドナルドとは3年間のパートナーシップを結んでいる。

ヤム!ブランズとの契約も行ったことで、KFCやピザハットなどのチェーン店向けの製品開発も発表した。このような明るい材料が売上げの上昇を期待させている。

●ウォルマートの取り扱い増加で株価急騰

米国時間の21年3月10日にビヨンドミートの株価が急騰した。これはウォルマートによるビヨンドミート製品の取り扱い強化が要因とみられている。ウォルマートの900店舗がビヨンドミートのホットイタリアンソーセージとビーフレスバーガーパーティーパックを取り扱うことになったのだ。

ビヨンドミートがウォルマートでの流通を増加させたのは、20年以降、2度目のことだ。生産増大から植物由来の代替肉市場をより深耕することを目指す施策の一環とみられる。

市場動向

市場の概要

植物肉(プラントベースミート)市場は、2020年に86億米ドルの規模に達しました。今後、2021年から2026年の間に市場は約17%のCAGRで成長すると予想されています。

植物肉とは、色、食感、外観、風味などが肉製品に似ているヴィーガン向けの代替品を指します。一般的には、植物性タンパク質単離物、デンプン、野菜エキス、食用油、その他様々な調味料を混合して製造されます。これらの原料に添加物や着色料を加えて加工することで、動物の肉に似た風味や食感を得ることができます。植物性食肉製品は、肉の摂取量を減らすことで、心血管疾患のリスクを最小限に抑え、血中コレステロールを低下させ、カロリーを維持し、タンパク質の消費量を増やすことができます。さらに、この食肉製品は、食肉の大量消費を抑えることができるため、エコロジー的にも持続可能であると考えられています。そのため、植物性食肉製品は、レストラン、カフェ、ファーストフード店、ハイパーマーケット、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、専門店、その他のケータリングサービスなどで広く利用されています。

主要な市場区分

世界の植物肉市場は、製品タイプ、ソース、肉の種類、流通チャネル、地域に基づいて分類されています。

製品タイプ別の市場構成
・バーガーパテ
・ソーセージ
・ナゲット・ストリップス
・ひき肉
・ミートボール
・その他

ソース別の市場構成
・大豆
・小麦
・豆類
・その他

肉の種類別の市場構成
・鶏肉
・牛肉
・豚肉
・その他

流通チャネル別の市場構成
・レストラン・ケータリング業界
・スーパーマーケット・ハイパーマーケット
・コンビニエンスストア・専門店
・オンラインストア

市場の競合状況

世界の植物肉市場における主要な企業としては、Amy's Kitchen, Inc., Beyond Meat, Boca Foods Company (Kraft Foods, Inc.), Garden Protein International (Conagra Brands, Inc.), Impossible Foods, Inc., Maple Leaf Foods, MorningStar Farms (Kellogg Na Co.), Quorn Foods, The Vegetarian Butcher, Vbites Food Limitedなどが挙げられます。

植物肉・培養肉スタートアップの業界カオスマップ

植物肉・培養肉開発のスタートアップを直近の投資ラウンドでの資金調達額(縦軸)とシリーズラウンド(横軸)でマッピングした業界マップ(カオスマップ)を作成すると以下の通りとなります。円の大きさは資金調達累計額となります。またIPOをした会社の場合は、直近1年間の資本金及び資本準備金の増減と合計を直近の資金調達額と資金調達累計額とみなしております。

大豆などの植物性タンパク質は、食肉に代替するタンパク質として様々な食材として利用されていました。現在は、植物性タンパク質を、食肉と変わらない食感や色合いにする植物由来の肉から取得する方法や、動物性タンパク質を肉の細胞を取り出し培養する培養肉から取得する方法が生み出されています。投資ステージは初期ステージのスタートアップが多い印象です。

市場シェア

2020年、ビヨンド・ミートは北米の肉代替品ブランドとして、約23.2%のシェアを獲得しました。ランキングでは、ビヨンドミートに続いて、モーニングスターがランクイン。Field Roastというブランドの市場シェアは約5.7%であった。

なぜ植物由来の代替肉の需要が増えたのか?

ここからは、なぜ植物由来の代替肉の需要が増えたのかをみていく。植物由来の代替肉の需要が増えた主な要因としては、以下の3つが挙げられる。

●肥満軽減や生活習慣病の抑制などの健康志向

植物由来の代替肉の需要が高まったの背景には、欧米人を中心とした健康志向の高まりもあるとみられる。日本人にとっては、豆腐や納豆など伝統的に植物性タンパク質になじみがあるが、植物性のタンパク質のイメージの良さとして、「比較的低脂質、低カロリーでヘルシー」というイメージを持っている。

ビヨンドミートはメインに大豆を活用していないものの、例えば大豆のタンパク質は脂質の腸管吸収を抑制するという研究結果も報告されており、抗肥満、メタボリックシンドローム予防、生活習慣病の抑制として代替肉を好むといったことも考えられる。

また、世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)の調査によると、ハムやソーセージなどの加工肉を毎日継続して1日当たり50グラム摂取するごとに大腸がんのリスクが18%増加するといったことも報告されている。

牛や豚などの哺乳類の肉に関しても毎日摂取すると大腸がんのリスクが高まるとされている。このような調査結果から検討しても植物由来の代替肉の需要が納得できるだろう。

●人口増加と環境意識の高まり

肉の摂取は地球環境に悪影響を与えるとの認識が高まっている。畜産業では家畜生産により大量の水の確保が必要だ。また、家畜の排泄物による水質汚染も問題になっている。家畜の消化器管内酵素、糞尿から放出される温室効果ガスなども問題として認識されるようになってきた。

一方で、食肉の需要は今後増えることが予測されている。世界の人口は2050年に97億人に達すると推計され、世界の食肉消費は2030年から2050年の間に20%拡大すると見込まれている。

しかし、家畜が地球環境に与える影響を考えれば、際限なく食肉を提供できるわけではない。農耕地の面積の伸び率も鈍化しているため、人口増加による食料需給のひっ迫を促進させる可能性もある。

そこで注目されているのが植物由来の原料で、本物の肉と見た目や味も遜色ない代替肉ということだ。

●動物愛護の視点

代替肉は動物愛護の視点でも注目度が高い。各国の政策や宗教上の理由から、食肉の取引を制限していることもある。17年に犠牲になった動物の数は世界の人口の10倍以上に上っているとの見方もある。数字をみると動物性タンパク質の消費は莫大な数の動物によってもたらされていることが分かるだろう。

●今後は代替肉市場の激化か?

ビヨンドミートは各企業との提携や協力により、市場規模の拡大を図っている。しかし、代替肉分野の競合も存在しており、競争の激化が予想される。植物由来の代替肉で競合となるのはインポッシブルフーズだ。

インポッシブルフーズは植物由来の代替肉を専門としており、レストランやSMに製品を卸すほか、通販により一般の消費者への販売も強化している。さらに、20年2月にはウォルト・ディズニー・カンパニーのクルーズ船やテーマパークでもインポッシブルフーズの製品が食べられるようになった。

他にも、メンフィスミーツやミータブルなどのスタートアップ企業も植物由来の代替肉の市場に参入を狙っている。今後も参入企業が増える可能性が高く、ビヨンドミートが市場のリーダーカンパニーとして君臨し続けられるかは不透明だ。

業績

2021年通期業績ハイライト

純収益は4億6470万ドル、前年同期比14.2%増となりました。
売上総利益は1億1730万ドル、売上総利益率は純売上高の25.2%でした。
純損失は1億8,210万ドル、普通株式1株当りでは2.88ドルでした。純売上高に対する純損失の比率は-39.2%でした。
調整後EBITDAは1億1,280万ドルの損失となり、純売上高に対する比率は-24.3%となりました。

2022年の展望

当社の事業環境は、COVID-19に関連する短期的な不確実性と、需要水準、労働力の確保およびサプライチェーンの中断を含むその潜在的な影響に引き続き影響を受けています。経営陣は、米国および海外におけるCOVID-19の感染率が合理的に抑制されることを前提としていますが、COVID-19および関連する影響に関する前提が実現しなかった場合、当社の業績は以下に記載する予想と大きく異なる可能性があることを認識しています。当社は、今日の環境に関する経営陣の最善の判断に基づき、2022年通期について以下のガイダンスを発表しました。

純売上は、2021 年と比較して 21%から 33%増加し、560 百万ドルから 620 百万ドルの範囲に入る。

損益計算書 / Statement of income

バランスシート / Balance sheet

キャッシュフロー計算書 / Cash flow statement

経営者 

ビヨンドミートは2009年にイーサン・ブラウンによって設立。これまでにクライナー・パーキンスやオブビオス・コーポレーション(現Twitter)、ビル・ゲイツ、ビズ・ストーン、ヒューメイン・ソサイエティー、タイソン・フーズなどから資金を調達している。

イーサン・ブラウン

イーサン・ブラウンは、ビヨンド・ミートの創業者であり、2009年の創業以来、当社の社長兼最高経営責任者を務め、取締役会のメンバーでもあります。また、ペプシコ社との合弁会社であるプラネット・パートナーシップLLCの経営者を務め、創業から2018年9月まで当社の秘書を務めました。

ブラウン氏は、National Governors' Center for Best Practicesでエネルギーアナリストを務めるなど、クリーンエネルギーと環境に焦点を当てたキャリアをスタートさせました。その後、水素燃料電池のバラード・パワー・システムズ社(NASDAQ: BLDP)に入社し、初級マネージャーから最高経営責任者直属の部下に昇進した後、ビヨンド・ミート社を設立するために退社しました。

また、燃料改質センターを設立・開設したほか、全米水素協会の副会長や米国燃料電池協議会の事務局長など、業界の要職を歴任しています。アスペン研究所のヘンリー・クラウン・フェロー、Inc.のBest Led Companies 2021、The Bloomberg 50 for 2019、NewsweekのTop Innovators of 2019に選出され、Beyond Meatとともに、国連の最高環境表彰であるChampion of the Earth(2018)を受賞している。ブラウン氏は、コロンビア大学でMBA、メリーランド大学で環境を中心としたMPP、コネチカットカレッジで歴史と政府のBAを取得しています。

株価推移

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