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【企業分析】セブン&アイ・ホールディングス

3382 (東証プライム)
時価総額:5.36兆円
株価:6,050円
売上高:11.8兆円
営業利益:5,065億円

事業内容: 持株会社
設立年:2005年、
本社:🇯🇵 東京都千代田区二番町8番地8二番町ガーデンビル
代表者: 井阪隆一(代表取締役社長)、伊藤順朗(代表取締役CSuO)
従業員数: 連結:138,808人(月間163時間換算の臨時従業員含む)
主要株主: 伊藤興業株式会社 7.95%、SMBC日興証券株式会社 3.69%、日本生命保険相互会社 1.99%、伊藤雅俊 1.90%

概要

株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂などを傘下に持つ日本の大手総合流通持株会社。日経平均株価およびTOPIX Core30、JPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ。

本社の入居する二番町ガーデンビル

2021年2月期の決算短信によれば、グループの連結営業利益3663億29百万円のうち約64%にあたる2342億58百万円をセブン-イレブンによる国内コンビニエンスストア事業が稼いでいる。2019年7月11日、沖縄県にセブン-イレブンが初出店したことで、全国47都道府県への小売店舗展開が完了した。

以前はイトーヨーカ堂を中核会社とする企業グループであったが、イトーヨーカ堂の業績が伸び悩む一方で子会社のセブン-イレブン・ジャパンの業績は好調という状況で、株価も時価総額が筆頭株主たるイトーヨーカ堂を上回る状態(いわゆる「親孝行会社」)となり、同社が買収の対象となりやすい状況にあった。

ちょうどその頃に、ライブドアによるニッポン放送買収問題(ニッポン放送の経営権問題)が発生し、敵対的買収への防衛策について注目が集まった。そこで、イトーヨーカ堂が子会社の業績に頼らない経営、および敵対的買収からの防衛を目的として、2005年9月1日にイトーヨーカ堂、セブン-イレブン・ジャパン、デニーズジャパンの三社で、持株会社「セブン&アイ・ホールディングス」を株式移転により設立して持株会社体制へ移行した。小文字の「i」はイトーヨーカ堂と、同社名誉会長の伊藤氏にちなんだもの。

プロダクト・ビジネスモデル

セブン&アイ・ホールディングスは多数の会社を傘下に持ち、多様な事業を展開しています。以下の7つが主要な事業です。

コンビニエンスストア

「近くて便利」をコンセプトに、全国にコンビニエンスストア「セブン‐イレブン」を展開しており、惣菜やカット野菜などのオリジナル商品の品ぞろえも充実しています。日本国内には15,000店舗以上を出店しており、国外では北米や中国など、世界各地に事業を展開しています。

国内コンビニエンスストア事業

バリューチェーンを通じた独自の価値創造

独自のフランチャイズシステムによる経営ノウハウの共有と価値の共創

国内コンビニエンスストア事業戦路

「中期経営計画2021-2025」で掲げている「成長を目指す戦路」のうち、「国内コンビニエンスストア事業戦路」については、セブン-イレブン・ジャパンの経営効率の改善を図りながら、再成長軌道への回帰を確固たるものにしていきます。

近年の社会構造変化および消費行動の変化に加え、コロナ禍においては、お客様の日常品の買物
移動距離が短くなる「小商圏化」がよりいっそう加速し、また、商圏ごとに対応すべき課題も多様化しています。この変化に対応し、これまで掲げてきた「近くて便利」をさらに進化させていくために、小商圏化のニーズに合わせた品揃えの拡充と売場レイアウトの刷新、グループ力を活用した商品調達、次世代型店舗の開発やテストなどを進め、出店を再加速させていく基盤を構築していきます。

また、DXの推進による新たな体験価値としてセブン-イレブンネットコンビニを本格稼働していきます。

中期の戦略概要

「出店戦路 〜次代に求められるコンビニエンスストア像の追求

社会環境の変化に伴いお客様のライフスタイルや嗜好が変化するなかで、セブン-イレブンは「次代に求められるコンビニエンスストア像」を追求し、さまざまな実証実験を実施しています。

空中ディスプレイの設置

三田国際ビル20F店では、日本電気株式会社(NEC) と連携し、顔と虹彩の生体認証による決済
システムの実証実験を進めています。

このシステムを利用することで、お客様は従業員と対面することなく、レジ端末にも触れず決済が可能になります。また顔と虹彩の2つで本人識別を行うことで、より精度の高い生体認証が可能になっています。

顔と虹彩認証での無人決済


麹町駅前店では、空中ディスプレイによる非接触型キャッシュレスセルフレジを導入する実証実験を実施しています。

これは、レジ画面を空中に結像し、空中に浮かん
だ映像をタッチパネルと同様に操作することを実
現したものです。

近未来の新たな買物体験を通じて、レジカウンターの省スペース化による販売チャンスの創出、完全非接触操作による安全・安心の提供を目的に検証を行っていきます。

既存レジカウンターへの空中ディスプレイ適用イメージ


DXの推進~セブン-イレブンネットコンビニの拡大

「セブン-イレブンネットコンビニ」とは、国内セブンイレブン店舗で扱う食品や日用品など約2,800アイテムを配達の対象とし、専用サイトで注文を受けるサービスです。サービス開始当初は注文から最短2時間で配達していましたが、伸長している配達・宅配のニーズに応えるため、2020年10月からリアルタイムで店舗専用サイト上の在庫を連携さ せて最短で注文から約30分での配達を実現するなど、利便性が格段に向上しました。また、グループで内製化しているラストワンマイルDXプラットフォームを活用することで、配達のための人や車両、ルートを最適化し、グループ会社の商品を同時に配達することも視野に入れています。

総合スーパー

全国に総合スーパー「イトーヨーカドー」を展開しています。ファッションから食品まで、様々な商品・サービスを展開しています。日本国内にはおよそ180店舗あり、国外では中国の北京市、成都市にも出店しています。

百貨店

全国の主要都市を中心に「そごう」、「西武百貨店」を出店しています。プライベートブランドである「リミテッドエディション」を中心に他社との差別化、商品開発力を強化しています。ネットを活用した新たなビジネスモデルも実践しています。

食品スーパー

東北地方を中心に「ヨークベニマル」を、首都圏を中心に「ヨークマート」を展開しており、食品スーパーとして、地域の活性化を目指し、上質で安全な商品を提供しています。

フードサービス

ファミリーレストランの「デニーズ」をはじめとして、ダイニングレストランやラーメンや蕎麦の専門店など、様々なレストランやファストフードを展開しています。運営や施設設計、決済システムなどの食堂に関する付帯事業も手掛けています。

金融サービス

銀行サービスである「セブン銀行」やクレジットカード事業、電子マネー事業である「nanaco」などを展開しています。セブン銀行は2011年12月に東京証券取引所第一部に上場しました。
IT/サービス

ネット販売の「セブンネットショッピング」やファッション・生活マガジンの出版など、多種多様な事業を展開しています。その他にチケット事業の「ぴあ」や食事配達サービスの「セブン・ミールサービス」、ギフトキットの卸売を行なう「ごっつお便」などの事業を行なっています。

その他の事業

マタニティ・ベビー・チャイルド用品の販売を行なう「赤ちゃん本舗」や生活雑貨専門店の「ロフト」、音楽・映像ソフトの販売を行なう「タワーレコード」など、幅広い分野で事業を展開しています。

市場動向

コンビニ業界の動向と現状(2021-2022年)

店舗増から既存店の収益性アップへ 転換点を迎えるコンビニ業界

経済産業省の「商業動態統計(2023年2月15日公表)」によると、2022年のコンビニエンスストアの販売額は前年比3.7%増の12兆1,996億円、店舗数は同0.2%減の5万6,232万店舗でした。

コンビニエンスストアの販売額の推移(出所:経済産業省、グラフは業界動向サーチが作成)

コンビニの販売額と店舗数は、2011年から2019年まで上昇傾向でしたが、2020年に過去10年で初めて減少に転じています。一方、2021年以降は販売額は小幅に増加するものの、店舗数が微減となっています。2022年の販売額は4,396億円の増加、店舗数は120店舗の減少と前年からほぼ横ばいで推移し、売上高、店舗数ともに成長率が鈍化しています。

2021-2022年のコンビニ業界は、2020年の新型コロナウイルスによる行動制限の反動で、需要は回復傾向にあります。感染症の影響で客足の鈍さが見られた一方で、既存店売上高は増加、客単価も上昇しており、大手コンビニの客単価は前年から約2.0%ほどの伸びが見られました。

コンビニ業界の好調を牽引してきたのが「店舗数の増加」です。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ大手3社は店舗数の増加に伴い、市場を拡大してきました。ところが近年、3社とも今後は不採算店舗の整理と既存店の売上アップに戦略をシフトする構えです。

このような市況のもと、2020年以降は新型コロナウイルスの影響で、在宅ワークが増加しました。この影響からオフィス街の店舗売上は減少、住宅街にあるコンビニの利用は増えるなど、利用者の行動が大きく変化しています。こうした状況から、各社は収益確保へ新たな取り組みを始めています。

セブンイレブンでは、単価の維持や上昇、新たな顧客獲得のため100円ショップのダイソー商品を導入、また各店舗のニーズに合わせ、商品構成やレイアウをト変更しています。さらに、最短30分で届けるデリバリーサービス「7NOW(ネットコンビニ)」の展開を加速、24年度をメドに全店で展開予定です。

ファミリーマートでは、無人決済店舗やデジタルサイネージ、ファミペイなど、金融やデジタル広告などの新ビジネスで収益化を加速させています。収益をコンビニ事業へ投資し事業強化を図ります。ローソンでは冷凍食品の品揃えと認知度の拡大、店内厨房の導入店舗を推進。調剤併設や日用品を取り扱うヘルスケア強化型店舗も展開し始めています。

コンビニ業界 売上トップ5(2021-2022年)

※は国内+海外コンビニ事業の売上高。2021年のコンビニ業界売上高ランキングは、セブン&アイ・HDが圧倒的な首位です。セブンイレブン展開のセブン&アイ・HDは2021年5月に米国の大手コンビニを買収、全売上高のうち海外売上高比率は59%を占めます。

2021-2022年のコンビニ大手3社の業績を見ますと、減少が1社、増加または横ばいが2社でした。なかでもセブン&アイ・HDは、海外コンビニ事業が好調で大幅増を記録しました。一方、3社ともに国内コンビニ事業は、コロナ前の水準には届いていない状況です。

2021-23年のコンビニ業界動向 緩やかな回復傾向に

続いて、2021年から2023年半ばにかけての直近のコンビニ業界の動向を見ていきましょう。

以下のグラフは、2021年1月から2023年7月までのコンビニ大手3社の月次売上高の推移です。数字は前年同月比の比較となっています。

コンビニ大手3社の既存店売上高の推移(出所:各社公表資料、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフを見ますと、2021年から2023年にかけて緩やかな増加傾向にあります。また、2022年後半から2023年にかけては基準の100を上回る状態が続いています。

コロナ禍の小売業では、スーパーやドラッグストアが好調な推移を見せており、コンビニは出遅れていましたが、直近の動向を見ますと、経済再開の動きに合わせて回復傾向にあることが分かります。

加速する海外展開 米国、経済成長著しいアジアを中心に

拡大を続けてきたコンビニ業界ですが、国内のコンビニ数は飽和状態にあります。

国内のコンビニ店舗数は約56,232店(2022年12月末時点)。都市部ではすでに飽和状態にあり、新規出店の余地が少なくなっています。そこで、コンビニ各社は海外展開を加速しています。

業界首位のセブンイレブンは、2021年5月に米国の大手コンビニ「スピードウェイ」を約2.3兆円で買収、現地では差別化を図りフレッシュフードやPB商品を強化し、売上を伸ばしています。北米店舗数は15,204店舗(2022年3月末現在)にまで拡大しました。

また、2021年10月にはインドとイスラエルにも進出。その他、タイで13,134店舗、韓国で11,173店舗、台湾で6,379店舗を展開(2021年12月末現在)。ほかに中国、マレーシア、フィリピンなど世界で18の地域に進出、また、22年をメドにラオス進出を発表しています。

業績

2023年2月期おける国内経済は、新型コロナウイルス感染症拡大への警戒が続く中、感染防止と経済活動の両立を目指し、まん延防止等重点措置等の行動制限が無かったことから個人消費を中心に持ち直しの動きが見られました。

しかしながら、ウクライナ情勢等による不透明感に加え急激な円安の進行から、エネルギーコストや原材料価格の高騰による物価上昇の家計への影響、供給面での制約等に注意が必要な状況で推移いたしました。

北米経済においては、歴史的な高インフレが続く中、政策金利の引き上げ等の影響も加わり個人消費の滅速が見られました。また、労働力不足や物流障害に伴う供給制約等が、実体経済に影響を及ぼしました。

このような環境の中、当社グループは新たな取締役会・ガバナンス体制の下、事業毎の効率性・成長性を踏まえながらグループ企業価値向上に資する戦的取り組みに関する議論を進め、当該議論を踏まえたグループ戦路再評価の結果を2023年3月9日に公表し、2030年に目指すグループ像を「セブン-イレブン事業を核としたグローバル成長戦路と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、「食」を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」となっています。

また、事業ポートフォリオの考え方に基づき、当社が保有する株式会社そごう・西武の発行済株式の全部をFortress Investment Group LLCの関連事業体たる特別目的会社である杉合同会社へ譲渡する契約を締結し、実行に向けて協議を重ねています。今後もグループ戦路再評価の結果及びアップデートされた「中期経営計画2021-2025」に基づいた中長期的な企業価値創造と持続的成長の具現化に傾注しています。

国内コンビニエンスストア事業

国内コンビニエンスストア事業における営業収益は890,293百万円(前年同期比102.0%)、営業利益は232,033百万円(同103.9%)となりました。
株式会社セブン・イレブン・ジャパンは、新型コロナウイルス感染症の影響により小商圏化が加速し、個店ごとのお客様ニーズの違いが頭在化する中で、セブン-イレブン店舗へ目的の商品をお求めに来店されるお客様の増加を目指し、「高付加価値商品の品揃え拡充」「取り扱いアイテム数増加を図る売場レイアウトの変更」「イベント
感を演出する販売促進」の3つの施策を融合させた取り組みを継続的に実施してきました。

また、デリバリーサービス需要の更なる高まりを受け、スマートフォンで注文された商品を最短30分で指定の場所にお届けするサービス「7NOW」は本年度時点で約3,800店舗まで取扱店舗を拡大し取り組みを強化しています。

これらの取り組みに加え、当連結会計年度は、客層の幅を拡げる新たなファスト・フード商品や株式会社イトーヨーカ堂の青果ブランド「顔が見える野菜。」の取り扱い店舗拡大及び各種フェア等の積極的な販売促進策が奏功したこと、人流回復や好天に恵まれたこと等により、既存店売上は前年を上回りました。燃料費調整単価高騰による水道光熱費の増加は続いているものの、営業利益は232,873百万円(前年同期比104.1%)となりました。また、自営店と加盟店の売上を合計したチェーン全店売上は5,148,742百万円(同104.0%)となりました。

海外コンビニエンスストア事業
海外コンビニエンスストア事業における営業収益は8,846,163百万円(前年同期比170.3%)、営業利益は289,703百万円(同181.2%)となりました。

北米の7-Eleven,Inc.は、米国市場での労働力不足や物流障害による供給制約等の問題が一部顕在化する中で安定した店舗運営に努め、品質及び収益性の高いオリジナル商品(フレッシュフード、専用飲料、プライベートブランド商品)の開発と販売の強化、約5,700店舗で対応しているデリバリーサービス「7NOW」の取り組み強化等の施策を積み重ねてきました。

当連結会計年度は、物価高騰による消費抑制の動きが見られましたが、ドルベースの米国内既存店商品売上は前年を上回り、営業利益は396,568百万円(前年同期比176.4%)となりました。また、自営店と加盟店の売上を合計したチェーン全店売上は10,442,360百万円(同161.5%)となりました。

なお、2021年5月に取得したSpeedway事業との統合に関するプロセスは順調に進接しており、シナジー発現は当連結会計年度における当初計画値の450百万米ドルを大幅に上回り約682百万米ドルとなりました。また、コストリーダーシップ委員会を設立し抜本的なコスト構造の見直しを行っており、適正な意思決定の仕組みとコスト管理に対する意識改革等を行うことで更なる収益性改善を推進しています。

スーパーストア事業
スーパーストア事業における営業収益は1,419,165百万円(前年同期比80.0%)、営業利益は12,107百万円(同64.1%)となりました。
総合スーパーである株式会社イトーヨーカ堂は、不採算店舗の閉鎖や人員の適正化、IT活用による生産性改善等の再成長戦路を推進してきました。

当連結会計年度においては、人流回復や前年の営業時間短縮及び入店者数制限の反動を主因にテナント等の売上が伸長し、テナント含む既存店売上は前年を上回りましたが、食品の荒利率悪化や燃料費調整単価高騰による水道光熱費の増加等により、営業利益は408百万円(前年同期比25.2%)となりました。

また、食品スーパーである株式会社ヨークベニマルはコロナ発生以降、好調に推移してきた食品売上が減少に転じたことを主因に既存店売上は前年を下回りましたが、ヨークベニマル店舗において総菜を製造、販売していた株式会社ライフフーズと2022年8月1日付で合併したこと等により商品荒利率は改善し、営業利益は18,013百万円
(同122.5%)となりました。

百貨店・専門店事業
百貨店・専門店事業における営業収益は463,739百万円(前年同期比65.1%)、営業利益は3,434百万円(前年同期は8,153百万円の営業損失)となりました。

百貨店においては、前年の営業時間短縮や入店者数制限からの反動による衣料品売上の回復及びラグジュアリーブランド品の販売好調等を主因に既存店売上が前年を上回りました。また、レストランにおいては前年の営業時間短縮や酒類提供制限からの反動、外食ニーズの回復等により既存店売上は改善傾向であるものの営業損失となりました。

なお、事業ポートフォリオの考え方に基づき、当社が保有する株式会社そごう・西武の発行済株式の全部をFortress Investment Group LLCの関連事業体たる特別目的会社である杉合同会社へ譲渡する契約を締結し、実行に向けて協議を重ねています。

経営の基本方針
当社は、2005年9月1日に設立された純粋持株会社です。流通業を中心として傘下に165の連結子会社を擁する当社は、「信頼と誠実」、「変化への対応と基本の徹底」を基本方針に掲げ、お客様ニーズ、マーケット、そして急速な社会の変化に迅速に対応し、業務改革、事業構造の改革を不断に進めてまいります。また、グローバルに展開するグループのネットワーク、情報力とともに、「食」の強みを軸としコンビニエンスストア事業を中心に、スーパーストア事業、金融関連事業などお客様の様々な生活シーンのニーズに応える世界に類を見ないグローバルリテールグループとして、総合的にシナジーを追求しています。

加えて、同社は、ガバナンスの強化とグループシナジーの追求によりグループ企業価値の最大化に努めるとともに、グループを代表する上場会社としてステークホルダーに対する説明責任を果たしていきます。

また、各事業会社は与えられた事業範囲における責任を全うし、各々の自立性を発揮しながら、利益の成長及び資産効率の向上を追求していきます。

目標とする経営指標

同社は、持続的に企業価値を向上させるため、資本コストを上回るリターン(利益)を拡大するとともに、キャッシュ・フローの創出力を高めることを基本方針として財務目標を設定しています。

今般、昨年の定時株主総会においてトランスフォームされた新たな取締役会・ガバナンス体制の下、中長期的な企業価値の最大化に向けたグループ戦路の再評価を行うべく、独立した外部アドバイザーを起用のうえで、現行事業構造下でのシナジーや構造変革によるディスシナジーの定量分析を含む多面的な分析結果も踏まえつつ、スーパーストア事業をはじめとする各事業の戦格的選択肢や抜本的なグループ事業構造改革に関する議論を重ねてきました。

経営者

創業者

伊藤 雅俊 (いとう まさとし、1924年4月30日 - 2023年3月10日)

伊藤氏は1956年、東京で叔父と異父兄が経営していた小さな洋品店「羊華堂」を継ぎ、その後、イトーヨーカ堂に改名。食料品から衣料品まで何でもそろうワンストップストアのチェーン店へと成長させた。1972年には東京証券取引所2部に上場。

同じ頃、イトーヨーカ堂の役員だった鈴木敏文氏が、アメリカを訪れた際にセブンイレブンの店舗を発見した。

イトーヨーカ堂はその後、セブンイレブンの運営会社サウスランドとエリアサービスおよびライセンス契約を結び、1974年に日本1号店をオープン。1991年3月、イトーヨーカ堂はサウスランドの株式を取得し、経営に参画した。

伊藤氏は過去のインタビューで、成功したのは努力の結果か、それとも運が良かったからかとよく聞かれるが、その答えは両方だと答えていた。戦後すぐに、日本で幅広い消費社会が形成され始めた時期にビジネスを始めたことは幸運だったとした。

1992年、総会屋への利益供与事件で役員らが逮捕されたことを受け、伊藤氏は株主総会の秩序を保つために社長を辞任した。

伊藤氏はオーストリア系アメリカ人の経営学者ピーター・ドラッカー氏と交友があり、同氏からも影響を受けていた。
伊藤氏を大口寄付者とする米クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院によると、「ドラッカー博士との交友が始まった最初の数年間は、2人はアメリカや日本で連絡を取り合い、世界経済や日本経済、伊藤氏が計画すべき方向性について夜遅くまで議論していた」という。

同社は伊藤氏(98歳)が2023年3月に老衰のため死去したことを声明で発表している。

社長

創業家の伊藤順朗氏(64歳)が代表取締役に就任。社長の井阪隆一氏(65歳)、副社長の後藤克弘氏(69歳)を含めて、代表取締役は3人体制となる。

井阪社長

井阪隆一(いさか・りゅういち)氏。1957年東京都生まれ。80年青山学院大学法学部を卒業後、セブン-イレブン・ジャパンに入社。90年からハワイの店舗の再建を担当。2002年取締役、07年同商品本部長。09年にセブン-イレブン・ジャパン社長に就任。16年に鈴木敏文氏が退任を表明した後、セブン&アイHD社長に就任。

セブン&アイは、伊藤氏逝去前日の3月9日、スーパーストア事業に関する施策を発表した。祖業であるイトーヨーカドー店舗を、直近の126店から2026年2月末までに93店へ縮小し、「食」にフォーカスするため、自社運営のアパレル事業から完全撤退する、というものだ。

これは、単なる偶然だったのか。5月25日の株主総会を前にして、物言う株主(アクティビスト)と呼ばれる主要株主、バリューアクト・キャピタル・マスター・ファンドとセブン&アイ現経営陣との対立が深まっている。

株主総会が開かれ、アメリカの投資ファンドが株主提案で求めた井阪隆一社長の退任は反対多数で否決され、井阪社長の続投が決まりました。

ただ、再任に賛成する比率が去年の総会より20ポイント近く下がり、株主の厳しい評価を示す結果となりました。

セブン&アイをめぐっては、主要株主のアメリカの投資ファンド、バリューアクト・キャピタルが、中核のコンビニ事業と傘下のイトーヨーカ堂などのスーパー事業を分離するよう求めてきました。

しかし、会社側が事実上、この要求に応じない内容の経営計画を示したことから、ファンド側は、井阪隆一社長を含む取締役4人を退任させ、新たに社外取締役4人を選任する株主提案を提出していました。

そのうえで、会社側が提出した井阪社長を含む取締役の選任案は賛成多数で可決され、井阪社長の続投が決まりました。

ただ、井阪社長の再任に賛成した比率は76.36%にとどまり、去年の総会と比べて18.37ポイント低下しました。

また、後藤克弘副社長が74.89%、3人の社外取締役は60%台にとどまりました。

過去3年間の取締役選任案への賛成の比率は90%台が続いていたことから、いまの経営陣に対する株主の厳しい評価を示す結果となっています。

セブン&アイは、日本の小売業で初めて年間の売り上げが10兆円を超えましたが、利益の大半をコンビニ事業が占める一方、イトーヨーカ堂は、3年連続の最終赤字となるなど、引き続き、グループ運営の効率化とスーパー事業のてこ入れが大きな経営課題となります。

井阪社長は、これまでの総合流通グループとしての多角化路線から、コンビニエンスストア事業に経営資源を集中する方針に大きくかじを切りました。

コンビニ事業では、2021年アメリカの企業から、コンビニを併設したガソリンスタンド部門を日本円で2兆円あまりで買収し、海外事業の拡大を進めてきました。

これに対して、コンビニ事業以外の合理化については、その進捗の遅れを指摘する見方もあります。

不振が続く傘下の大手デパート「そごう・西武」については、2022年11月、海外の投資ファンドに売却する方針を決めましたが、関係者との調整の遅れなどから売却の時期については今年3月、2回目の延期で時期を未定とすることを発表しました。

また、祖業でもあるスーパー事業は、構造改革を進めたものの、傘下のイトーヨーカ堂が3年連続の最終赤字となり、今年3月に、全体の4分の1にあたる店舗の大幅な削減を行う方針を明らかにしました。

その一方で、グループ全体の業績についてはコンビニ事業がけん引する形で拡大を実現しています。

今年2月までの1年間のグループ全体の決算では売り上げが11兆円あまりと、日本の小売業で初めて10兆円を超え、最終的な利益も過去最高を更新しました。

そうしたなか、セブン&アイの経営陣と投資ファンド側の対立は激しくなっていきました。

投資ファンド側は、コンビニ事業の今後の成長性を生かすために、スーパー事業との分離を経営陣に求めてきました。

これに対して会社側は、3月に打ち出した新たな経営計画で、「スーパーは食品関連に強みがありコンビニ事業の成長に不可欠だ」などとして、グループの相乗効果を優先する姿勢を示しました。

これに反発したファンド側は、「井阪社長は現状の戦略を維持するための誠意のない行動を取った」などとして、株主総会で新たに4人の社外取締役を選任する株主提案を提出し、井阪社長と後藤克弘副社長、それに取締役の選任や解任に関わる指名委員会で委員長や委員を務めてきた社外取締役2人の退任を要求していました。

これまでの実績を強調する井阪社長ら経営陣と経営の刷新が必要だとするファンド側が真っ向から対立し、総会での株主の判断が焦点となっていました。

株価推移

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