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【企業分析】村田製作所

6981(東証プライム)
時価総額:5.53兆円
株価:8,180円
売上高:1.81兆円
営業利益:2,979億円

事業内容: 電子部品の製造・販売
設立年:1950年
本社:🇯🇵 京都府長岡京市東神足一丁目
代表者: 村田恒夫(代表取締役会長)、中島規巨(代表取締役社長)
従業員数: 77,581名(連結)、9,771名(単体)

概要

株式会社村田製作所は、京都府長岡京市に本社を置く電子部品メーカー。電子部品を主力とする企業では世界トップクラスに位置している。TOPIX Core30およびJPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ。

村田製作所本社

村田昭により、1944年10月に京都市中京区四条大宮北(四坊大宮町)で、元染物工場を借りて工場として創業された。元々はがいしなどの陶器製品を製造する町工場であった。主力商品はセラミックスコンデンサーで、世界随一のシェアを占める。その他、セラミックフィルタ、高周波部品、センサー部品も強い。いずれも世界的に圧倒的なシェアを持つ。原材料からの一貫生産に特徴がある。

村田製作所は積層セラミックコンデンサーでトップの地位を走るが、「にじみ出し戦略」と呼ぶ周辺分野の企業とのアライアンス、M&Aを進めており、ここ数年は周辺の部品に領域を拡大している。2017年、M&Aでソニーから電池事業を買収した。

コンデンサは電気を蓄えたり、放出したりする電子部品で、パソコンやスマホ、家電、自動車など幅広い分野で使用されている。 同社は世界トップのシェアを誇る製品が多い。 特に注目すべきは、世界シェア40%を超える積層セラミックコンデンサ(MLCC)であろう。MLCCは同社の世界に誇る技術力の高さを具現化した超微細化製品であり、ハイエンドのスマホでは800~1000個以上が使用されている。すなわち、スマホは村田製作所のMLCCがあってこその商品なのだ。

さらに自動車、エネルギー(電池事業)、ヘルスケアなどの注力市場やIoTなどの新規市場に対して研究開発(R&D)を促進して事業拡大を図るため、2020年12月には横浜市西区みなとみらいに新たな研究開発拠点となる「みなとみらいイノベーションセンター」を開設した。

プロダクト・ビジネスモデル

村田製作所の事業セグメントは、コンデンサ、インダクタ・EMIフィルタ、高周波・通信、エナジー・パワー、機能デバイスの5つに分かれる。

セグメント別売上高

セグメント別売上高 (グラフ)
(2023年3月期~)

加えて、スマホや無線LANなどに組み込まれるSAW(表面弾性波)フィルタ、セラミック発振子、ショックセンサなどでも世界シェアトップと推定される。これら以外でも、コンデンサ(キャパシタ)、インダクタ(コイル)、ノイズ対策部品、サーミスタ(温度センサ)、MEMS(微小電気機械システム)など多くの最先端電子部品の生産を行っている。これからIOT、5Gの時代が本格的に到来する。MLCCをはじめとする同社製品の各種デバイスへの搭載点数は一段と拡大するものと予想する。

村田製作所は、世界シェアが高く、他の追随を許さない技術力・国際競争力の高い製品が多いことから利益率の高さでも知られている。2020年3月期の売上高営業利益率は16.5%、数年前の2016年3月期は22.7%であった。製造業では驚異的な営業利益率といえよう。ちなみに製造業全体ではどのくらいだろうか。経済産業省による「2019年企業活動基本調査(確報)」によれば、2018年度の製造業全体の営業利益率は4.8%であった。これと比較しても同社の利益率がどれほどすごいものなのかを窺い知ることができよう。

コンデンサ

主な製品:積層セラミックコンデンサ(MLCC)など

積層セラミックコンデンサ

MLCCは、一時的に電気を蓄えたり放出したり、信号に含まれるノイズの吸収や一定の周波数の信号を取り出すほか、直流をカットし交流だけを通すなどの機能を持ち、モバイル機器や家電製品、IoT機器などで採用されています。また、自動車や医療、宇宙機器など、高信頼性が求められる用途でも使われています。

成長戦略

① 部品需要の拡大に対応するための生産能力の増強

通信やモビリティの市場では今後も部品需要の増加が見込まれます。業界最大の生産能力という競争優位性を活かし、さらなる規模の拡大を図ります。

② 競合企業の台頭などのリスクを踏まえた成長シナリオの立案と実行

将来成長が見込まれるMLCC市場では、既存の競合企業との競争が激化することが予想されます。競争環境に注意を向けて、持続的な事業成長を目指します。

③ 持続的なイノベーションの創出と万全な供給体制により、トップシェアであり続ける

MLCC市場におけるムラタのシェアは40%であり、今後成長が見込まれる自動車市場においては50%と高いシェアを有しています。これまで培ってきた競争優位性をさらに強化し、市場でのポジションを維持向上していきます。

インダクタ・EMIフィルタ

主な製品:インダクタ/EMI除去フィルタなど

インダクタ(コイル)

インダクタは、電気と磁気を互いに作用させて、電圧の変換や電流の安定等の働きをします。コンデンサ、抵抗器と合わせて、電子回路の基本となる部品です。コンデンサと同じく、さまざまな電子機器で多く使用される電子部品です。

成長戦略

① 市場の変化を捉えた新たな顧客価値の提供

今後、車載市場や通信市場では、技術・アプリケーションが大きく変化していきます。車載市場ではパワーインダクタやインターフェース向けのインダクタの需要が拡大し、通信市場ではスマートフォン内部のモジュールの小型化にともない、高周波インダクタの小型・高Q※ 化が進みます。車載向けパワーインダクタの新製品や高周波インダクタの小型高Q品などをリリースするなど、市場とお客様の変化を確実に捉え、新たな顧客価値の提供に取り組んでいます。

※QとはQuality Factorの略。Q値が高いほど、インダクタの特性が高い。
② 開発力と基盤技術の融合による市場要求に応えた製品の提供

ムラタでは、5~10年後の市場・製品・技術のロードマップをつくり、将来ニーズを先取りした製品開発によりお客様から求められる製品をいち早く商品化しています。また、ムラタは開発・モノづくり技術として積層・巻線・フィルム等の複数の工法・プロセスを有しています。先進的な材料開発、製品開発、プロセス開発と基盤技術(シミュレーション・信頼性評価・実装技術・アプリケーション)を融合することで市場要求に応えた製品を提供していきます。

③ グローバルサポート体制の拡充

車載市場では自動車の電装化の進展、通信市場では5Gの拡大により、ノイズ対策の必要性がさらに増しています。日本のみならず、欧米・中国など世界各地8拠点のEMCラボを活用したノイズ対策の顧客サポート、新製品・ソリューションを提供していくことで顧客との関係を深め、最先端技術を追求することで、「EMCソリューションプロバイダNo.1」を実現しています。

高周波・通信

主な製品:表面波フィルタ、多層デバイスチップ、高周波モジュール、樹脂多層基板、コネクティビティモジュール、コネクタなど

表面波フィルタ(SAWフィルタ)

成長戦略

① 高付加価値品での差異化とコスト競争力の強化による収益機会の確保

独自のI.H.P.技術やTC-SAW技術に加えて、新規技術のアライアンス強化を進めるとともに、低価格メーカーの台頭への対応として生産性向上によるコスト競争力の強化に努めています。

② XBAR技術を用いたフィルタの量産化

5Gや次世代Wi-Fi規格の普及にともない、帯域幅の広い高性能な高周波フィルタのニーズが高まることが予想されます。XBAR技術は高周波・広帯域での高い特性やSAWフィルタの製造工程との高い親和性を有します。フィルタの差別化技術として事業の強化につなげます。

③ 5Gで拡大する通信市場でムラタの強みを活かした新たな用途・顧客の探索

IoT化の広がりによりスマートフォン以外のさまざまなアプリケーションにも無線通信機能が搭載されるようになっています。また5Gの導入にともない、搭載される周波数帯の組み合わせがより複雑になるなど、フィルタに求められる技術の難易度は高まっています。ムラタの強みである技術力を活かして新しい市場でビジネス拡大を図ります。

高い海外売上比率

村田製作所の海外売上比率は91.6%である(2021年3月)。これは、売上高1兆円以上の企業でトップの海外売上高比率である。

地域別売上高

高い営業利益率

2020年度の売上高の数字で営業利益率は19.2%である。工場を多く所有する製造業としては非常に高い数字(製造業の平均は約5%)である。

高シェア製品

多くの高シェア製品を有する。
積層セラミックコンデンサ 世界シェア35% 世界一位
SAWフィルタ 世界シェア45% 世界一位
wi-fiモジュール 世界シェア60% 世界一位
EMIフィルタ 世界シェア35% 世界一位
ショックセンサ 世界シェア95% 世界一位

高い新製品率
売上高における新製品の割合が40%である。

市場動向

コンデンサ、センサ、さらにはダイオードやトランジスタといった半導体も含めた電子部品の市場規模は、世界全体で122兆円※1におよび、今後さらに拡大していくと予想されています。ムラタは売上高1兆8,125億円、営業利益4,240憶円(営業利益率23.4%)※2と国内電子部品大手の中で、トップレベルの売上・利益を誇っています。
※1一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)「電子情報産業の世界生産見通し」(2022年12月)
※222年3月期 経営数値(連結)

ムラタの部品は、スマートフォンの中にもあります。スマートフォンを分解すると、1000個以上の部品で構成されていることがわかります。スマートフォンにワイヤレスイヤホンがつながるのも、インターネットにつながるのも、電子部品があるおかげです。スマートフォンに限らず、電気で動くほとんどのモノにムラタの部品は入っています。ムラタは本当にあなたの身近にいるのです。

電子情報産業の市場規模

電子情報産業に占める「電子部品業界」の市場規模は非常に大きく魅力ある業界です。ムラタは2015年に売上高1兆円を達成。2020年度の売上高は1兆6301億円、営業利益率は19.2%でした。

*JEITA「電子情報産業の世界生産見通し」(2020年12月)より作成したものです。

世界シェアNo.1の製品を数多く持つムラタは、上述のように海外売上比率が90%以上。世界中のどこでもムラタの製品が手にでき、いつでもサービスがうけられるよう、59社の海外関連会社を展開しています。海外に出向して働いている従業員は、常時約600名に上ります。

新しい製品や技術の開発に、大胆な先行投資を行うことが、業界のリーディングカンパニーであり続ける要因です。ムラタの売上高に占める研究開発比率は6.1%。そして、新製品売上高比率は約30%。ムラタの創業者 村田昭が残した「誰も作っていないものを作ろう」の精神が生き続けています。

業績

村田製作所は、2023年3月期(2022年度)の決算を発表した。売上高は前年比6.9%減の1兆6868億円、営業利益は同29.8%減の2979億円で、減収減益となった。

スマートフォンやPC向け需要が減少するとともに、生産調整に伴う生産ラインの操業率低下などが影響し、減収減益となった。2024年3月期(2023年度)業績予想も、「民生市場向け部品の需要回復は緩やか」と判断、減収減益の見通しである。

 2022年度の売上高は、モビリティ向けのコンデンサーや、パワーツール向けリチウム二次電池が増加した。一方で、スマートフォン向け高周波モジュールやコネクティビティモジュール、表面波フィルター、コンピュータ向けコンデンサーなどが減少した。

事業別/用途別セグメントの売上高は、リチウムイオン二次電池がパワーツール向けで増加したこともあり、「エナジー・パワー」が前年比18.9%増となった。一方で、コンピュータやスマートフォン向け需要は一部製品を除き減少。「高周波・通信」が14.1%減、「インダクター・EMIフィルター」が10.4%減と2桁のマイナス伸長、「コンデンサー」も6.3%減となった。

2023年度の業績については、売上高が2022年度比2.8%減の1兆6400億円、営業利益は同26.1%減の2200億円と予測した。モビリティ向けのコンデンサーが増加する。しかし、「円高の進行」や「民生市場向け製品の伸び悩み」「コネクティビティモジュールの事業ポートフォリオ見直し」あるいは「製品価格の値下がり」などの影響で減収減益となる見通し。なお、これまでは米国会計基準を適用してきたが、2023年度より国際財務報告基準(IFRS)に変更した。

 設備投資額は、生産能力の増強や生産棟の建設を中心に、全体で2200億円を計画している。2022年度に比べると119億円の増額となる。投資先について村田恒夫会長は、「サプライチェーンの観点から中国に加え、フィリピンやタイへの投資も行うことになる」と話す。

 事業環境としては、「スマートフォン市場は2023年夏ごろに回復」「値下げ圧力が高まる」「パワーツール市場の在庫調整は2023年度下期にやや改善」と想定している。特に、スマートフォン市場については今後、中国や韓国市場で需要回復が見込まれるものの、市中在庫が存在することやローエンドモデルの比率が高まっていることから、「出荷台数の増加ほどはビジネスの回復が望めない」と厳しい見方だ。

決算説明会では、在庫調整についても触れた。同社は2022年度上期に3.8カ月分の在庫を抱えた。このため2022年度下期より生産量を抑え、在庫削減に乗り出した。「コンデンサーの生産ラインにおける操業度は、2022年度第4四半期に80%まで下げた。これを2023年度上期には80~85%へ、2023年度下期には85~90%まで、それぞれ戻していく。この結果、2023年9月には2.9カ月分の適正在庫水準になるだろう」と話す。

 村田会長は、「2023年度も厳しい事業環境が予想される。こうした中でも自動車の電装化は進展し、5G(第5世代移動通信)インフラ整備は着実に進む。これらの事業機会を確実につかむことで、飛躍を遂げたい」と述べた。

設備投資額

研究開発費、売上高研究開発費率

業績予想

経営者

創業者

村田 昭(むらた あきら、1921年 - 2006年)は、村田製作所創業者・名誉会長・元会長・社長。

京都府京都市東山区泉涌寺生まれ。父親が陶器店を営む。幼少期の頃は「病気のデパート」と呼ばれるほど病弱で、病床で文学書、子供向けの科学誌「子供の科学」などを読んで過ごしていた。

肺結核のため京都市立第一商業学校を中退後、家業に専念。 特殊陶器、精密特殊磁器に注目し、製品化することにより事業を拡大。1944年、村田製作所を創業する。

1950年、法人化の後、京都大学との「産学協同」で酸化チタンコンデンサの開発に成功。セラミック半導体や通信機用フィルタを次々に開発し、通信機やテレビ向けなどの電子部品事業を拡大、チタンコンデンサの主力メーカーとして一大シェアを掌握した。

1960年代にはアメリカのGMより受注するなどいち早く海外に進出し、1973年には日本の電子部品メーカーで初めてアメリカ合衆国内に工場を設立。これだけの実業家でありながら、財政界にはほとんど顔を出さず、本業一本で生涯を全うした。

現社長

中島規巨 社長

村田製作所は2020年に、同社の代表取締役社長に代表取締役 専務執行役員 モジュール事業本部 本部長の中島規巨(なかじま・のりお)氏が就任する人事を決めた。代表取締役会長と社長を兼任していた村田恒夫氏は、代表取締役会長に専念することとなった。創業家以外から同社の社長に就任するのはこれが初めてであった。

中島氏は1961年9月生まれ。同志社大学工学部を卒業後の1985年4月、村田製作所に入社。1988年10月に福井村田製作所、1991年7月~1992年12月に積層コンデンサーや多層モジュール商品の共同開発先であるフランスのLCC-Thomsonに出向するなどした後、2006年7月にモジュール事業本部 通信モジュール商品事業部 事業部長に就任した。

2010年7月に執行役員、2012年6月にモジュール事業本部 本部長、2013年6月に取締役常務執行役員などを歴任。2015年7月に通信・センサ事業本部 本部長とエネルギー事業統括部 統括部長に就任した後、2017年4月にモジュール事業本部 本部長に戻り、同年6月から代表取締役専務執行役員を務めている。座右の銘は、日清食品創業者である安藤百福氏の言葉から、「発明はひらめきから。ひらめきは執念から。執念なきものに発明はない」。

 新社長就任に当たり中島氏は「5Gや自動車の進化によりエレクトロニクス市場にも大きな変化が訪れる中、新社長として先頭に立ってチャレンジしていけることに大きな責任とともに湧き立つ想いを感じている。ステークホルダーの皆さまの期待に応えていくには、将来のビジネス機会を見据えた独創的な技術・製品開発にしっかり取り組めるとともに、多様な社会的責任を果たしていける、変化に柔軟に対応できる組織作りが重要だ。『エレクトロニクス産業のイノベーションを主導していく存在でありたい』という思いを込めた『Innovator in Electronics』の実践に向けてこれからも尽力していく」と語っている。

 また、今後の村田製作所の目指す姿として「『部品を売る』という従来のビジネスモデルにこだわらず、ソリューションビジネスといった、将来のポートフォリオの中核になりうる新しい領域をどのように育てていくかも重要だと考えている」という。

村田製作所が“非創業家”の社長に交代してから2年余り。過去最高益を更新し、営業利益率20%を超える最強部品メーカーへと成長した。

株価推移

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