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【企業分析】FARFETCH(ファーフェッチ)

FTCH (NYSE)
時価総額: 46億ドル
株価:12ドル
売上高: 22.6億ドル
純利益: 14.7億ドル
(2021年)

事業内容: ラグジュアリーファッションを取り揃えたデジタルマーケットプレイス
設立年:2007年、2018年上場
本社: イギリス🇬🇧ロンドン
代表者: José Neves(創業者兼CEO)
従業員数: 5,441人

概要

世界中のデザイナーのアパレル衣料品を扱う、インターナショナル・ファッションEコマースサイト。2008年にポルトガル出身の起業家ジョゼ・ネヴェスによって設立され、ロンドンに本社、ニューヨーク、ロサンゼルス、ギマランイス、ポルト、リスボン、サンパウロ、上海、モスクワ、香港、東京に支店を置く。

Farfetchは、コミッションベースにてパートナーブティックと提携しており、各ブティックの売上高の平均30%は本ウェブサイトによるものとされる。

Farfetch ロンドン本社

プロダクト・ビジネスモデル

在庫・実店舗を持たない新たなビジネスモデル

世界中のラグジュアリーブランドやセレクトショップ、有名百貨店とカスタマーをつなぐ、デジタルマーケットプレイスとして運営されている「ファーフェッチ」。

在庫を持たないのがマーケットプレイスというビジネスモデルの特徴で、「ファーフェッチ」のマーケットプレイスに1000を超えるパートナーブランド、セレクトショップ、百貨店からアイテムを集約。「ファーフェッチ」が在庫の統合やロジスティックの提供、販売促進などをおこない、実際の商品はパートナーブランドなどから直接出荷されている。

それにより、より多くのデザインや色、サイズ展開が可能になり、ラグジュアリーファッションマーケットにおける画期的なグローバルプラットフォームとして急成長を遂げた。

現在3200を超えるブランドが揃い、レディース、メンズ、キッズのほか、ヴィンテージアイテム、ウォッチ、ファインジュエリーまで、33万点以上ものアイテムを幅広く展開。ファッションECサイトの中でも最大級の豊富なアイテム数を誇る「ファーフェッチ」。

ラグジュアリーブランドから、日本未上陸の新進気鋭なデザイナーズブランドまで幅広いブランドを扱い、ビジネスウェアからカジュアルウェア、アクティブウェアやストリートウェアまで、さまざまなオケージョンやスタイルにも沿ったアイテムを購入することが出来る。

2019年から、ラグジュアリーブランドのカプセルコレクションを限定発売するなど、ここでしか手に入らないエクスクルーシブなアイテムも多数展開。今後も、「ファーフェッチ」ならではのエクスクルーシブなアイテムは必見。

サイトは現在14か国語に対応しており、世界190カ国へと配送が可能。年間130万人以上が「ファーフェッチ」を利用している。

日本語対応のカスタマーサービスも常設しており、安心してお買い物を楽しめるのも魅力の1つだ。
複数のラグジュアリーブランドを取り扱うセレクトショップがなかった1970年にオープンして以来、「アレキサンダー・マックイーン」や「ジョン・ガリアーノ」といった数々の才能を発掘してきたロンドンの老舗セレクトショップ「ブラウンズ」や、ロンドンの老舗百貨店「ハーベイ・ニコルズ」などもパートナーとして名を連ねる。

世界中のブランド、有名セレクトショップや百貨店がパートナーとなっているため、国内で取り扱いのない海外ブランドやモデル、デザイン、色やサイズが手に入るのも魅力だ。

Eコマースの枠を超えたクリエイティビティが光るエディトリアルも注目したい。

サイト内では、世界中のさまざまな年齢、国籍、ファッションスタイルをもつブティックオーナー、業界のアイコン、ファッションラバーなどで構成された「ファーフェッチ・コミュニティ」によるコンテンツを配信。 

コミュニティメンバーのスタイルや世界観とともに、彼らが選出したアイテムをそのまま購入できるしくみだ。 
また、ファーフェッチのクリエイティブチームが撮り下ろしたビジュアルや動画によるブランドプロモーションも展開する。まるでウェブマガジンを読んでいるかのような感覚で、欲しい商品をすぐ手に入れることができる。

「ファーフェッチ・コミュニティ」についてファーフェッチ創業者兼CEOであるジョゼ・ネヴェス氏は下記のようにコメントしている。

「ファーフェッチは、創業当初から世界各国のファッションキュレーターやクリエイターをひとつにしてきました。これをさらに一歩進めた試みが、ファーフェッチ・コミュニティです。多彩なジャンルで活躍する人物らを迎え、個々のインスピレーションやビジョンを共有してもらうことで、皆様にファーフェッチを通して新たな発見をしていただけたらと考えています」。 
さらに近年では、これまで培ってきたEコマースのノウハウやデジタル技術を利用したテクノロジー事業にも力を入れている。

2015年には実店舗とデジタルを融合させたデジタルテクノロジー&サービス「ストア・オブ・ザ・フューチャー」をローンチ。これは、未来のリテールモデル「拡張リテール」というビジョンを核に、テクノロジーとデータを活用し、よりパーソナライズされたショッピング体験を提供するというもの。

2018年には「シャネル」とこの未来型店舗の開発におけるパートナーシップを締結している。
また、Eコマース&APIソリューションで得た技術を活用し、ラグジュアリーブランドのデジタル戦略を包括的にサポートするサービス「ファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューションズ」も展開。英国の老舗百貨店「ハロッズ」などのデジタル戦略やEコマースをサポートしている。

売上成長率は上場以前から年率50%以上で推移していたが、コロナ禍の20年は対前年比60%超となり、売上は16億7000万ドルに到達した(図表)。同業最大手であるイタリア本拠のユークス・ネッタポルテ(YOOX Net-a-porter:YNAP)との売上差は依然大きいが、数年後には逆転しうるペースのスピードで成長している。一方で収益性には課題があり、20年度第4四半期に初めて調整後EBITDAベースで黒字化を実現したものの、通年では上場以来赤字傾向が続いている。

市場動向

2019年の世界の高級品市場規模は3,161億6,000万米ドル。COVID-19の世界的な影響は未曾有の驚異的なものであり、パンデミックの中、高級品はすべての地域でマイナスの需要ショックを受けている。

2020年の世界市場は18.63%の大幅な減少を示すと予想されます。2020年から2027年にかけてのCAGRは4.6%で、2020年の2572億6000万米ドルから2027年の3528億4000万米ドルまで成長すると予測される。CAGRの上昇は、この市場の需要と成長、パンデミック終了後のパンデミック前のレベルへの回帰に起因しています。

プレミアム製品は、その所有者のステータスシンボルを示す重要な存在である。このような製品の優れた品質と高い耐久性には、最高値が付き物で、世界の人口のごく一部しか手が届かないものです。そのため、企業は富裕層をターゲットに独創的なデザインで勝負しています。このような層は通常、製品コストは基準ではなく、製品の独自性と卓越性が購入前の重要な決定要因になります。
例えば、2020年6月、ガーミン・インターナショナル社は、高級スマートウォッチ「MARQ Golfer」を発売しました。これは、46mmのチタンケースやセラミックベゼルなどの高級素材で構成されており、1~18のゴルフホールマークがカスタムエッチングされたデザインになっています。さらに、ゴルフプレーヤーのゲームパフォーマンスを向上させるPlaysLike Distance、Hazard View、Virtual Caddieの機能を搭載しています。

このように、斬新なデザインの製品が登場することで、この市場は予測期間中に急成長すると思われる。

COVID-19による製品需要の急激な減少が市場規模に影響

低所得者層は普段から贅沢品への投資を控えている。生活必需品でない高級品は、パンデミック期間中、生活必需品の購入に苦労したため、需要が減少した。

雇用の喪失と給与の減少は、2020年の勤労者層の所得水準に変化をもたらした。同様に、専業主婦の注文は、そのようなプレミアム製品を所有する必要性を減少させました。また、ロックダウンは、いくつかのファッション関連のイベントや祝典の中止や延期につながり、それによってこの種の商品の需要に影響を与えた。また、ツアーや旅行の中止は、空港やクルーズの免税店など旅行中の商品購入にマイナスの影響を与えた。

例えば、LVMHが2020年7月に発表した2020年上半期の決算によると、2020年はパンデミックの影響で、すべての高級品カテゴリーからの収益が減少したという。同資料では、2020年上半期に香水・化粧品部門の収益が2019年同期比で約29%減少し、時計・宝飾品部門の収益が38%減少したことを記録しています。

しかし、小売店の閉鎖により、オンライン販売は顧客からポジティブな属性を獲得したと報告されています。
したがって、世界の個人向け高級品市場は、近い将来、オンラインチャネルを通じて勢いを取り戻す可能性が高く、閉鎖制限の解除が市場の拡散をさらに後押しすることになるでしょう。

テクノロジーと融合した商品の登場が目立つ

ジュエリーアイテムやハンドバッグ、ゴーグルなどにテクノロジー要素を組み込んだ革新的な作りやファッション性の高い商品が、製品需要を拡大させる可能性があります。

例えば、2019年4月、スマートジュエリーメーカーのTotwoo Fashion Technology Co., Ltd.は、新しいコレクション「Wonderland」を発表し、インテリジェントコアを持つソーシャルインタラクティブウェアラブルテクノロジーペンダントを紹介しました。このコアは、Bluetoothを使用してジュエリーからモバイルアプリケーションへの情報伝達に使用されます。  

同じく2020年、Totwooはカップル向けの新コレクション「モールス信号シリーズ」を発表した。モールス信号リズムのネックレスは、一人が自分のネックレスをタップすると相手に通知が送られる。また、遠距離リモートセンシング(ラブリズム)、ラブコードカップルチャット、歩数記録、通話通知、カスタムアラート、プライベートダイアリーなどの機能を備えている。このように、スマートラグジュアリー商品の登場は、商品需要を喚起する可能性が高い。

富裕層の増加で市場拡大へ

高級品とは、その名が示すように、主に高所得者層が求める商品である。そのため、富裕層の増加は市場の成長を促進することになるでしょう。例えば、2020年1月に発表されたOxfam Internationalのデータによると、世界人口の60%を占める約46億人の富裕層に対し、世界中に存在する約2,153人の富裕層はより多くの富を持っています。

企業は、ミレニアル世代とGenZ世代をターゲットに、彼らの関心を引くためにカスタマイズされた製品を提供しています。例えば、ルイ・ヴィトンでは、ホットスタンプやハンドペイントでハンドバッグをパーソナライズすることができます。したがって、富裕層によるハイエンドファッション製品への需要の高まりは、市場の成長を支えることになるでしょう。

ファッショントレンドの急速な変化に伴い、衣料品 分野が優位に立つ

製品タイプ別に見ると、時計・宝飾品、香水・化粧品、衣料品、バッグ・財布、その他に分類されます。衣料品は、ファッショントレンドの急激な変化に伴い、男女を問わずエンドユーザーからの需要が増加していることから、主要なシェアを占めると予想されます。

一方、バッグ分野は、特に皮革製品への需要が高まっていることから、急成長が見込まれています。エンドユーザーの間では、オフィスバッグ、パーティーバッグ、カジュアルバッグなど、用途に応じて使い分けられるファッショナブルなハンドバッグの需要が高まっています。

例えば、2020年2月には、高級ブランド「ロエベ」がバルーンバッグを発売し、顧客の要望に応じてスモール、ミディアム、ラージの全3サイズを揃えることができるようになった。

時計・ジュエリー分野は、スマートな高級時計や様々なタイプのジュエリーアイテムの需要が増加していることから、大きなシェアを占めると予想される。例えば、Savills Global Luxury Retail 2019 Outlookのレポートによると、世界の高級店の新規出店総数において、ジュエリー店の新規出店の割合は2017年の約10%から2018年には13%に増加したとのことである。

その他、フットウェアやアイウェアなどの商品も含まれ、新しいデザインの商品が市場に投入されることで牽引していくことが予想されます。

流通チャネル別分析

購入の利便性からオンラインチャネルが最も高い成長率を示す
市場は、流通チャネルによってオフラインとオンラインに分けられる。オフライン市場は、顧客が実際に商品を見たり触れたりすることで、店頭でその特徴を比較できるため、高級品市場の主要なシェアを占めると予想される。

企業は、小売店や百貨店を通じて存在感を高め、市場において強力な足がかりを得ようとしている。例えば、2020年2月、バーバリーはパリのプランタン社を買収すると発表した。プランタンは、アパレルや美容品とともに高級品を幅広く扱う百貨店チェーンである。

しかし、オンライン・チャネルの購入の利便性により、最も成長率の高いセグメントとなるだろう。COVID-19の大流行は、ラグジュアリービジネスにおけるオンラインチャネルを強化する機会をさらに与えている。例えば、2020年3月、リライアンスは、インドで高級品を購入するための新しいeコマース・プラットフォームを導入する計画を発表した。したがって、高級品のオンラインショッピングの流れは、近い将来も続くと思われる。

リージョナルインサイト

地域別では、欧州の市場は2019年に1,038億6,000万米ドルとなりました。世界市場における欧州の圧倒的なシェアは、同地域にロレアル、LVMH、バーバリーなど、多数の主要プレイヤーが存在することに起因しています。

例えば、Savills Global Luxury Retail 2019 Outlookのレポートによると、ロンドンは世界の上位5都市で1位となり、2018年の世界の高級店新規出店のうち9.6%のシェアを占めたとのことです。2017年と比較して約38%増加しました。

同じ資料の通り、パリは4位にランクインし、2018年には4.7%を占めました。同様に、ヨーロッパはファッションのハブスポットであるため、イタリア、フランス、イギリスなどの国々で多くの高級ファッションウィークが開催されており、これがさらに市場成長に弾みをつけると思われます。

北米市場は、米国を中心に多くの富裕層が存在感を高めていることが特徴で、これが製品需要を支えています。例えば、政策研究所が2020年4月に発表した「Billionaire-Bonanza-2020」と題するレポートによると、米国では億万長者の数が2000年の298人から2020年には約614人に増加しました。

加えて、ファッション性の高いアパレルやアクセサリーへの傾倒が高い人々の存在が、この地域の市場成長に勢いを与えています。

アジア太平洋地域の市場は、中産階級の可処分所得の増加により、急速に成長すると予測されます。同様に、世界的な高級ブランドへのアクセスの高まりは、製品消費の増加につながるでしょう。例えば、2020年7月、英国を拠点とする高級品メーカーであるバーバリーは、テンセントの提携とともに、中国の消費者向けに深センで初のソーシャルリテールストアを開設すると発表しました。店舗面積は約539平方メートル(5800平方フィート)で、約10の部屋があり、インタラクティブでパーソナライズされたさまざまな小売体験を提供します。

また、この地域では働く女性が急増しており、可処分所得の増加に伴い、ハンドバッグや高級靴、宝飾品など、女性を中心とした高級品の消費が加速しています。

南米市場は、ブラジルやチリなどの国々で都市人口が増加していることから、安定した成長が見込まれます。このため、生活水準の変化に伴い、高級ブランドに対する消費者の支出が増加することが予想されます。

業界キープレイヤー

主要プレイヤーは、パートナーシップや新製品開発などの戦略に重点を置き、市場シェアを拡大
トップ企業は、強力な製品ポートフォリオと大半の地域市場における幅広いリーチにより、主要な市場シェアを占めています。

高級プレーヤーは、市場での足場を強化するために、パートナーシップ、新製品の発売、買収など、さまざまな戦略の採用に注力しています。例えば、2020年12月11日、L'OréalはPrada S.p.Aと契約を締結し、同社が後者の高級美容製品を作成、開発、流通させることを可能にしました。

プロファイリングされた主要企業のリスト。

LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンSA(フランス・パリ)

Compagnie Financière Richemont SA (スイス・ジュネーブ)

ケリングSA(フランス・パリ)

Chow Tai Fook Jewellery Group Limited (香港・セントラル)

エスティ ローダー カンパニーズ インク (米国・ニューヨーク)

ルクソッティカグループSPA(イタリア・ミラノ)

スウォッチ グループ リミテッド(スイス/ビエンヌ)

ロレアルグループ (フランス・クリシー)

ラルフローレンコーポレーション (米国/ニューヨーク)

株式会社資生堂 (日本/東京)

業績

損益計算書分析

2020年12月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

Furfetchの2020年12月期の損益計算書のポイントは以下のとおりです。

損益計算書の要点
・粗利率は約46%
・売上高販管費率は約80%と非常に高く営業赤字
・巨額損失の原因は金融商品の評価損

売上高の内訳

粗利率は46%となっていますが、そもそも売上の構成はどのようになっているのでしょうか。売上の内訳は以下のとおりとなっております。

デジタルプラットフォームサービス売上

デジタルプラットフォームサービス売上はECサイトのFarfetch関連の売上です。

3rd partyと1st Partyの違いはFarfetchが在庫を持っているか持っていないかの違いです。
3rd partyの場合はFarfetchへ出品するブランド側が在庫リスクを負っていまず。売上には手数料部分のみが計上されるため利益率は高くなります。

1st partyはFarfetchが在庫リスクを持っています。販売代金の全額が売上として計上されますが利益率は低くなります。

Farfetchとしては3rd party売上の方が在庫リスクが無いため好都合です。人気ブランドの場合にはブランド側の交渉力が強く、Farfetch側が在庫リスクを負う形になっているのではないかと思われます。

フルフィルメント売上・ブランドプラットフォーム売上

フルフィルメント売上は梱包、配送、顧客サービス対応等の手数料収入です。Farfetchの倉庫はイタリア、イギリス、アメリカにありFarfetchに出店しているブランドから商品の保管、梱包、発送等を請け負うことで収益をあげています。

ブランドプラットフォームは2019年に買収したNew Guards関連の売上となっています。New Guardsは傘下の会社を通じて複数のアパレルブランドを展開しています。

地域別の内訳

Farfetchの2020年12月期の売上高の地域別の内訳は以下のとおりです。

地域別の内訳は少し意外な結果となりました。大きな割合を占めているのがその他です。世界中の様々な国でFarfetchが利用されているということが推定できます。

ここがポイント

・収益の柱はECサイトのFarfetchの3rd party売上
・Farfetchは世界中で利用されている

販管費について

Farfetchが営業赤字になっている大きな要因は売上高販管費率が約80%と非常に高くなってしまっているためです。販管費の内訳は以下のとおりとなっております。

管理費や株式報酬費用は主に人件費から構成されていることが想定できます。従業員数が2020年12月時点で従業員数が5,441人もいます。売上が大きく伸びていますが、これだけの人件費をまかなえるだけの収益はあげられていない状況のようです。

販売促進費は主にインターネット広告費用が計上されています。減価償却費はNew Guardsのブランドや無形資産の償却費が大きな割合を占めているようです。

ここがポイント

・人件費関連が大きく固定費が中心
・株式報酬費用や減価償却費といったキャッシュの流出が無い費用も多い

金融商品の評価損

2020年12月期のFarfetchの最終利益は約3,400億円の赤字となっております。その最も大きな要因は金融商品の評価損を約2,722億円を計上したことによるものです。

この巨額の損失はFarfetchが2020年に3回に分けて発行した転換社債に関連して発生をしております。転換社債の概要は以下のとおりです。

転換社債は転換価格で株の発行を受けることができる条件がついた社債です。株価が上がれば、転換価格と株価の差額が社債保有者にとっては利益になります。

2020年12月末時点の株価は63.8ドルで転換価格を大きく上回っています。この1年間でFarfetchの株価は急騰したため社債の公正価値が大きく増加したことから巨額の赤字計上となりました。

業績の推移

Farfetchの過去4年間の売上と利益の推移は以下のとおりとなっております。

売上は右肩上がりで推移しており急成長していることが分かります。一方で赤字幅の大きく拡大を続けております。

赤字の大きな原因となっている販管費の推移は以下のとおりです。

全ての費目で大きく増加していることが分かります。人件費関連支出が大きなウエイトを占めており、人員数が増えていることが大きな増加要因となっています。

ここがポイント

・売上は急成長しているものの、赤字は拡大
・人員数の増加に伴い販管費が増加

貸借対照表分析

2020年12月期のFarfetchの連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。

2020年12月期に約3,430億円の巨額の赤字を計上してしまったことから債務超過となっております。
負債のうち最も大きな金額を占めているのがデリバティブ負債となっております。こちらは主に先述の転換社債関連の負債です。株価が大きく上昇したため負債計上額も大きく増加しました。

経営者 

創業者兼CEOはJosé Neves (ジョゼ・ネヴェス)。

José Neves 創業者兼CEO

ジョゼ・ネヴェス 1974年6月生まれ。祖父が靴工場を経営していたポルトガルのポルトで育った。ポルト大学で経済学を学んだ。

大学在学中に最初の技術系企業「グレイマター」を設立。同社は、衣料品メーカーにソフトウェアを提供していた。

同年、小規模なファッションブランド向けにPlatformeというソフトウェア会社を設立。1996年、22歳の時、Swearというフットウェアブランドを立ち上げ、ロンドンに店舗をオープンさせる。同ブランドは他のショップにも販売された。2001年、ロンドンのサヴィル・ロウでbstoreというファッション小売店を始める。

2008年、ネヴェスはFarfetchを設立した。2017年6月、Farfetchは中国でのローンチに先立ち、少数株式をJD.comに、3億9700万米ドルで売却。

株価推移

アリババ・リシェモンとの提携

株価が急騰した背景にはアリババ・リシェモンとの提携があります。

Farfetchは中国最大のECサイトを展開するアリババと、多くの高級ブランドを傘下に持つリシェモンと業務提携を発表しました。この提携によりアリババとリシェモンはFarfetchの中国事業に対してそれぞれ12.5%を出資することになりました。

これによりFarfetchの中国事業の拡大への期待が高まり株価は大きく上昇しました。

ここがポイント

・転換社債により株価が上がるほど赤字が拡大する。

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