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【企業分析】Hoya(ホーヤ)

7741 (東証プライム)
時価総額:5.5兆円
株価:15,660円
売上高:6,614億円
純利益:1,931億円

事業内容:精密機器
設立年:1944年
本社: 東京都新宿区西新宿
代表者: 池田英一郎(取締役兼代表執行役最高経営責任者(CEO))
従業員数:38,376人

概要

HOYAは、1941年に山中氏によって設立された東洋光学硝子製造所を源流とする日本を代表する光学メーカーです。江戸切子職人の技術を承継したクリスタルガラス製造技術から展開していった非球面光学ガラスレンズ、眼鏡レンズ、HDD用ガラスディスクやLCDフォトマスクといった分野に強みを持ちます。

三水会・みどり会の会員企業であり三和グループに属しているが、ペンタックスを合併してからは第一勧銀グループにも属している。日経平均株価、TOPIX Core30およびJPX日経インデックス400の構成銘柄の一つ。

Hoya本社(西新宿)

社名は、創業の地である東京都保谷市(ほうやし、現:西東京市)に由来する。創業時の社屋は現存せず、本社は新宿区中落合を経て西新宿へ移転している。

世界に約160の拠点、子会社を有し、約36,000人の社員を擁するグローバル企業です。

プロダクト・ビジネスモデル

1941年に光学レンズメーカーとして創業したHOYAは、高度な先端技術を軸に「ライフケア」と「情報・通信」の2つの事業領域において、メガネやコンタクトレンズ、医療用内視鏡、白内障用眼内レンズ、さらには半導体やデジタル機器産業を支える精密機器、デバイスなどを多角的に展開しています。

事業ポートフォリオ

「情報・通信」の分野で技術的な競争力を発揮し、高いシェアで安定的に収益を確保する一方、「ライフケア」分野へ積極的に経営資源を投入することで成長を加速させています。

「情報・通信」事業

エレクトロニクス

半導体ブランクス・フォトマスク/FPDフォトマスク/HDD用ガラス基板/映像関連製品

創業事業である光学ガラスをはじめ、HOYAの製品が日々進化するデジタル製品の発展を支えています。人々の暮らしをより豊かなものにするため、最先端領域での技術革新を続けています。

半導体用マスクブランクス・フォトマスク

半導体チップの製造工程において必要不可欠なマスクブランクスとフォトマスクは、半導体の微細で複雑な回路パターンを半導体ウエハに転写する際の原版となるものです。世界シェアNo.1のHOYAのマスクブランクスは、国内外の半導体メーカーやマスクメーカーに提供されています。

高集積化を背景に微細化が進んでいる半導体。その製造工程の露光装置の光源も、現在のArFレーザーから、次のEUV(extreme ultraviolet)露光へと開発が進んでいます。これにより半導体の集積度は一層高まり、電子機器はより速く、より高性能になることが期待されています。HOYAはEUV用マスクブランクスおよびフォトマスクの開発を進め、半導体の進化を支えていきます。

サプライチェーン

フォトマスク分野の競合には、大日本印刷、凸版印刷、コンパグラフィックス・フォトマスク・ソリューションズ、SKエレクトロニクス、台湾マスク、日本フィルコン、HTAフォトマスク、PKL、プラズマサーム、マイクロニックス、KLA-テンコール、レーザーテック、LGイノテックなどが挙げられます。

FPD用フォトマスク

事業内容
LCD*1やOLED*2など FPD*3の製造に⽤いるフォトマスクの研究開発‧製造‧販売をおこなっています。

FPDフォトマスクは、TV、スマートフォン、ノートPCなど向けのFPD製造時 に、回路パターンを基板に転写するための原版として使われます。

*1 LCD:Liquid Crystal Display=液晶ディスプレイ
*2 OLED:Organic Light-Emitting Diode=有機EL
*3 FPD : Flat Panel Display=フラットパネルディスプレイ,薄型ディスプレイ

HOYAは、原材料メーカーから基板を仕入れ、基板に対して研磨‧成膜‧レジスト塗布をおこないます(ブランクス 製造)。完成したブランクスに回路パターンの描画‧現像‧エッチング‧レジスト剥離洗浄をおこない、パネルメー カーに出荷します。(フォトマスク製造)

用途別売上高構成比

⽤途別の売上高構成比は次の通りです。
スマートフォン向けが最も大きな割合を占めていますが、車載やウェラブル向けなど新しい用途が増加しています。

マーケット状況

2021年度においては、パネルの価格が落ち着いてきたことにともない、パネルメーカーは新たな需要喚起のために研究開発活動を活発化させました。これによりフォトマスクの研究開発需要が増加し、市場は拡大しました。

今後については、スマートフォンなどに使われる中小型OLED向けの需要の増加などで市場がゆるやかに成長するとみています。地域的には中国市場の成長を見込んでいます。

HDD用ガラスサブストレート

事業内容

HDD(Hard Disc Drive)ガラス基板の研究開発‧製造‧販売をおこなってい ます。HDDはサーバやPCの内部ストレージ、及びPCやTVの外付けHDDとして使われています。

データセンターサーバー向けの3.5インチは2017年の本格参入以来、高成長を 続けており、2021年度には金額ベースで事業部門売上高の60%を占めるまでになりました。

サプライチェーン

HOYAは、原材料メーカーから基板原材料を仕入れ、これに対して円盤形加⼯‧強化‧研磨などをおこない出荷します(基板製造)。
メディアメーカーは、基板に対して磁性膜などの製膜、バーニッシュ(仕上研磨)などをおこない出荷します(メディア製造*)。
HDDメーカーは、ハードディスクやヘッドなどの部材の組立、完成品テストをおこない出荷します。

*メディア製造は主にHDDメーカーによって行われています。

最終製品

当社の3.5インチ基板は、主としてデータセンターにおいてバックアップなどに⽤ いられるニアラインストレージに使われています。
売上は順調に拡大しており、2021年度では事業部門売上収益の約60%となりました。

映像

映像関連製品(光学ガラス材料・光学レンズ・各種レーザー機器など)

事業内容

各種カメラ⽤の光学ガラス材料と光学レンズの研究開発‧製造‧販売をおこ なっています。

サプライチェーン

HOYAは、光学ガラス原料メーカーから原料を仕入れ、調合、溶解を行い、レンズ材料やレンズ製品を製造し、 レンズメーカーやカメラメーカーに出荷します。

用途別売上高構成比

用途別の売上高構成比は右の通りです。
コンパクトデジタルカメラ向けや交換レンズ向けなど、以前は売上の大部分を占めたデジタルカメラ関連は減少傾向にあり、売上高構成比は約40%になりました。

マーケット状況

一眼レフ、ミラーレス用交換レンズ出荷額はハイエンドカメラ向け新製品の販売増や、新型コロナウイルスにより販売に影響を受けた前年からの回復が進んだことで、大きく増加しました。

用途別売上高構成比(2021年度)

「ライフケア」事業

ヘルスケア

メガネレンズ/コンタクトレンズ/医療用内視鏡/白内障用眼内レンズ/その他メディカル関連製品

HOYAは1962年にメガネレンズの製造を、1972年にはコンタクトレンズの製造を開始してから一貫して、目と光にかかわる研究を続けています。

世界中の人々の視力矯正だけでなく、Quality of Visionを向上するために、優れた製品とサービスを提供しています。

メガネレンズ

事業内容

メガネレンズの研究開発・製造・販売をおこなっています。

一般的な単焦点のメガネレンズはもちろん、手元から遠方までシームレスに見えるように度数が変化する累進多焦点レンズや、屋外では太陽光で半透明に、室内では透明にレンズの色が変わる調光レンズなど、幅広いライフステージや生活シーンに対応したレンズ製品を取り扱っています。

地域別では欧州、次いで米州の売上高が大きく、海外売上高比率は約9割にのぼります。

HOYA今後の見通し

メガネレンズは、ライフケア事業売上の約50%を占める製品であり、事業の拡大をけん引する成長ドライバーです。

市場成長の続くアジア(特に中国)や、南⽶において営業活動を強化し、市場シェアの拡大を図っていきます。また、独立系のメガネ店への売上比率が高い米州において、チェーン店への拡販をおこない、市場シェアの拡大を図っていきます。ターゲットエリアとビジネス機会への注力により市場以上の一桁前半から半ばのオーガニック成長を目指します。また、さらなる成長のためのM&Aの機会を引き続き追求していきます。

生産面では、拡大する需要への対応や生産地の多様化のためにグローバルに投資をおこなっています。

地域別売上高構成比
(2021年度)

市場シェア(2021年度)

コンタクトレンズ

コンタクトレンズ専門小売店「アイシティ」を日本国内において展開しています。
「アイシティ」では、お客様一人ひとりに合った最適な商品をご提案するコンサルティング販売と、世界中の大手メーカーから取りそろえた幅広い商品ラインアップを強みとしています。

また、独自の高機能なコンタクトレンズを自社開発しています。

販売チャネル別には、インターネット通販がシェアを拡大、コンタクトレンズ専門店のシェアについては安定的に推移すると見込んでいます。

販売チャネル別売上高
構成比(2021年度)

顧客一人当たり単価推移(2017年度を100とする)

国内アイシティ店舗数推移

HOYA今後の見通し

今後については、高付加価値品の拡販や市場ニーズの高い宅配サービスの訴求などによる既存店の売上成長とともにM&Aを含む新規出店により、継続的に5%程度の売上成長を図っていきます。

新規出店時には、コンタクトレンズ装用人口、市場成長率、競合状況を切り口に地域を細かく分析し、都心部や地方都市、大型ショッピングセンターを中心に出店をおこなうとともに、同一商圏内での店舗移動を適宜実施することで効率性を向上していきます。また、地域に根ざしたコンタクト専門店などを対象としたM&Aの機会を積極的に活用し、成長を加速させていきます。

インターネット通販に関しては、市場ニーズの高まりを受け、消費者に対して定期的もしくは必要に応じて注文できる宅配サービスを訴求していきます。また、今後もシェア拡大を見込むインターネット通販チャネルへの対応の検討を開始しています。

メディカル

内視鏡、自動内視鏡洗浄装置、腹腔鏡手術器具、眼内レンズ、アパタイト骨補填材・金属製インプラント、人工骨などの開発製造を行っています。

医療用内視鏡


地域別売上高

地域別に見ると、欧州をはじめとする海外での売上高が大部分を占めています。

地域別売上高構成比(2021年度)

2021年度は医療機関の投資意欲回復や新型コロナウイルスからの反動増などで市場の成長が続いていますが、世界的な電子部品の供給不足により内視鏡の需給がタイトになっています。半導体の供給量は徐々に増えていますが、不安定な状況です。

中長期にグローバルで7%前後の内視鏡機器の市場成長率を当社では想定しています。

グローバル展開

HOYAは、グローバルな視点で効率的な企業運営を行うため、最適地での経営判断、研究開発、生産、販売を推進しています。
海外の売上比率は76%、従業員の約91%が外国人です。

市場動向

眼内レンズメーカーの世界市場シェアと業界ランキング(2020年)

眼鏡レンズ系のプレーヤー(HOYA、カール・ツァイス)とコンタクトレンズ系のプレーヤー(アルコン、ジョンソン&ジョンソン、ジョンソン&ジョンソン、ボシュヘルス)が上位を競っています。

眼内レンズとは

眼内レンズ(IOL、intraocular lens)は水晶体内に取り付ける人工水晶体です。白内障の手術で移植される場合が多いですが、最近は視力回復のために移植されることもあります。水晶内に移植するため、半永久的に使用することを前提としたレンズです。
眼内レンズの種類は、近くもしくは遠くの焦点を絞った単焦点眼内レンズと多様な距離をカバーできる多焦点眼内レンズがあります。

市場規模

調査会社のアライドマーケットリサーチによると、2020年の眼内レンズ業界の市場規模は36.3億ドルです。2021年から2028年までの年平均5.39%で成長し、2028年には55.2億ドルに達すると予測されています。

メガネレンズメーカーの世界市場シェアと業界ランキング(2020年)

2020年も2019年と変わらず上位4社は不動です。4位のローデンストックは投資ファンドのAPAXに2021年に買収されました。大手4社の市場シェアでも20%強と分散的な市場構造が特徴です。たとえば、日本の場合では最大手のHOYA以外にも、伊藤光学、東海光学といったメガネレンズメーカーがあります。

市場規模

エシロール・ルックスオティカによると2020年の眼鏡業界の市場規模は1000億ユーロです。

年平均3%での成長を見込みます。また同社によると眼鏡業界は、レンズ、フレーム、サングラス、コンタクトレンズに分類され、眼鏡レンズの市場規模は400億ユーロです。

メガネレンズ業界のM&A

2017年のエシロールとルックスオティカの業界トップ2の経営統合以降大きな再編は起きていません。今後はメガネ業界の域を超えた視力矯正業界という観点から、眼内レンズ、コンタクトレンズ、さらにはレーシックという今までの業界の枠を超えた再編が予想されます。M&Aにおけるマルチプルの参考指標である企業価値売上高マルチプルは概ね2~4倍のレンジに入っています。

エレクトロニクス市場

2021年は、エレクトロニクス市場では、PC、スマートフォン、サーバーなど主要な最終製品の出荷が増加しました。これにより半導体市場はロジックやメモリ、アナログ半導体等の需要が増加したことで全体として26%の成長となりました。2022年もロジックやメモリ、アナログ半導体等がけん引し、16%の成長を見込んでいます。(WSTS推定)

ブランクス市場に関しては、半導体メーカー、ファウンドリによる、最先端の製造技術であるEUV露光を使った、電子回路のさらなる微細化に向けた研究開発活動が活発におこなわれており、ブランクスは顧客の研究開発需要が重要なドライバーであることから、今後も市場の成長が見込まれています。

HOYAのポジションと市場シェア

当社の強みである、半導体のパフォーマンス向上をリードするポジションを活かし、高い市場シェアを長期にわたって保持しています。

中でもEUVブランクスは、既に20年近く研究開発活動を続けており、業界のリーダーとしての位置を築くことができています。

また、EUVとオプティカル(EUVではない既存の露光技術)の両製品を展 開する唯一のメーカーとしてプレゼンスがいっそう高まっています。

HOYA今後の見通し

半導体の微細化の進展に伴い、今後もEUV向けマスクブランクスの強い需要が継続すると見ています。

HOYA EUV ブランクス売上・EUV露光機売上累計(数量)

マスクブランクスの売上は、顧客の開発スピードに応じて大きく変化し、また消耗品ではないため、半導体産業全体の動きに連動せず、精緻な予測が困難ですが、EUV向けについては、EUV露光機の累計設置台数をEUV市場成長の一つの目安とみています。

当社は顧客の需要に対応するため、製造ラインの増設を適宜行っています。EUV向け製造ラインに関しては2020年に追加し、2022年以降、追加投資によるさらなる製造能力の拡充を予定しています。今後も増加する需要に対応するため、タイムリーに増産投資をおこなっていきます。

また、さらなる微細化のために2025年以降に製造への使用が予定されているHigh-NA EUV露光機(次世代EUV露光機)では、斜めに入射した光がフォトマスクの吸収体によりさえぎられることで、ウエハに転写されるパターンが変形してしまう3Dマスク効果が課題となっています。これを解決するために吸収体の薄型化のための開発を、半導体製造サプライチェーン内のパートナーと進めています。

FPDフォトマスク市場

HOYAのポジションと市場シェア
当社は高精度品に強みがあり、トップクラスのシェアを持っています。

HOYA今後の見通し
今後も成長が見込まれている第6世代(Gen. 6)の高精度品、地域的には中国市場に注力することで、堅調な事業の成長を図ります。

なお、Hoyaは2021年10月に、中国市場におけるFPDフォトマスクの生産能力を増強すべく、中国の主要なパネルメーカーであるBOEグループと合弁契約を締結し、中国において合弁会社を設立することを決定しました。

パネルの世代について

FPD(LCD,OLEDなど)の製造ラインは、マザーガラスの大きさによって世代(Gen.)別に分類されています。 テレビの大画面化の進展や、フォトマスク1枚あたりのパネル配置数増加による生産性向上のために、マザーガラスの大型化が年々進んでいますが、当社の得意とするGen.6を中心とした中小型パネルについても主にスマートフォン向けのOLED需要がけん引し今後も堅調な成長が期待されます。

HDD市場

3.5インチHDD市場は、バックアップ⽤途で比較的アクセス頻度が少ないニアラインストレージでは、SSDに対して価格優位性のあるHDDが使われています。大規模クラウドサービスの事業者によるデータセンター関連への投資は短期的には変動があるものの、中長期的には世の中のデータ生成量拡大に伴い、継続的な市場の拡大が見込まれています。

2.5インチHDD市場は、外付けHDD 、ノートPC、ミッションクリティカルサーバー領域において、データの読み込み/書き込み速度が速いSSDへの置き換えが進んでおり縮小しています。

2021年度は新型コロナウイルスの影響により2.5インチHDD需要が比較的高かったことで市場全体の縮小が鈍化しました。在宅勤務や自宅学習によるPCの高需要が継続し、PC用HDDや外付けHDDの需要が高かったことと前年落ち込んだオンプレミスの支出が回復したことでサーバー用HDD需要も高かったことによるものと推測しています。

HOYAのポジションと市場シェア

現在、2.5インチ基板はすべてガラス製となっています。当社は唯一のガラス基板メーカーとして、HDD業界を縁の下から支えています。
3.5インチ基板は、価格面で優位なアルミニウム素材がすべてを占めていましたが、高剛性で基板の薄型化による多枚数化を可能とする当社のガラス基板のHDDへの採⽤が進み、ニアラインサーバーにおいてシェアを40%まで高めることができました。HDDの大容量化の進展によりさらなるシェアの拡大を見込んでいます。

HOYA今後の見通し

3.5インチ基板においては、継続的な市場の拡大により売上の成長を見込んでいます。中期的には、新たな顧客の獲得により成長の加速を見込んでおり、既存製造設備の転換やラオス新⼯場を活⽤することで、需要の増加に対応していきます。

3.5インチ市場におけるガラス基板の可能性

世界で生成されるデータ量と保存量の拡大に対応するため、HDDメーカーは1台あたりのデータ容量がより大きい製品を継続的に市場に投入しています。HDD1台あたりのデータ容量増加は、ディスクの記録密度と面積の増大により実現されてきましたが、現状は記録密度向上技術の開発が停滞しており、記録面積の拡大が容量増加のカギとなっています。

3.5インチ市場では、現在はディスクの素材は主にアルミニウム合金ですが、さらなる記録面積の増加は、ディスクの薄型化により搭載ディスク枚数を増加させることで実現されるため、アルミニウム合金よりも剛性があり薄型化の可能なガラスが必要とされています。

将来的に1つのHDDに搭載するディスクの枚数が11枚となった場合は基板の厚みは0.5mm以下になることが見込まれております。また基板の厚みが0.5mm以下となった場合はアルミ基板の生産性が低下することが予想され、2024年以降はニアライン向け基板が不足するものと見込んでいます。

さらに、記録密度向上のための次世代記録方式であるHAMR(Heat Assisted Magnetic Recording)が実現し製品化された場合、同技術は磁性膜の製造プロセスで高温を必要とするため、耐熱性の高いガラス基板が唯一の選択肢となります(アルミニウム 合金の耐熱温度は290度に対してガラスは691度)。

2.5インチ基板製品においては、外付けHDDやPC、ミッションクリティカルサーバーでHDDからSSDへの置き換えが今後も進み、減少を見込んでいますが、3.5インチ基板製品の売上増で吸収し、事業全体として成長を図ります。

映像関連製品市場

HOYAのポジションと市場シェア

光学ガラス組成の研究開発から、レンズ完成品の製造に至るまでを一貫して手掛け、多品種大量生産を可能とする体制を整えています。

当社は、ガラス非球面モールドレンズ(GMO)に関して強みを持ち、高いシェアを維持しています。

GMOは、高温で軟化させた光学ガラスを直接プレス成形し、研磨を行わずに光学レンズ製品にするものです。収差補正に優れているため、光学系に使⽤するレンズ枚数を減少させ、最終製品であるカメラの小型軽量化‧高機能化に貢献しています。

HOYA今後の見通し

レンズ交換式カメラ向けはハイエンドカメラの販売増などで、以前ほどの大幅な減少は想定していません。
車載カメラ向けなど新しい用途向けの光学製品の販売を着実に拡大させ、事業全体の安定化を図っていきます。

新しい用途向けとしては、先進運転支援システム(Advanced Driver-Assistance System: ADAS)、モバイル機器向け光学ズームやAR・MRでの当社製品の採⽤に向けて営業活動を強化しています。なかでもADASに使われる画像認識⽤の車載カメラ市場でのポテンシャルに期待しており、同技術が本格的に実⽤化される数年先での当社業績への本格的な貢献を見込んでいます。

ヘルスケア

メガネレンズ市場

マーケット状況

今後、世界的な老齢人口の増加、新興国の経済成長による購買力の増加、目の健康に対する意識の高まりや、デジタル機器の使用時間の増加による視力の低下などにより、メガネレンズの需要は継続して世界的に増加し、中長期的に一桁前半の市場成長を想定しています。

新型コロナウイルスの影響に関しては、各国におけるワクチン接種の進捗と経済活動の再開に伴い、事業の正常化が進んでいます。

ウクライナにおける紛争に関しては、当社は東ヨーロッパ(ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)において事業活動を行っており、現在はロシアにおける事業を一時的にヘルスケア関連のものに限定し、国際貿易制限の範囲内で事業活動をおこなっています。2021年度においてメガネレンズ製品の当3国における売上収益が同製品グローバルの売上収益に占める割合は1%でした。

HOYAのポジションと市場シェア

地域により成長速度は異なりますが、成熟市場である北米、欧州、日本は引き続き市場の中で重要な役割を果たすと想定しています。また、南米やアジアなどの新興国では、視力矯正製品がより入手しやすくなり、また中間所得層人口が増加する中で、さらなる成長が期待されます。

HOYAは業界2番手であり、オーガニック成長に加え、2013年にSEIKOのメガネレンズ部門、2017年には⽶Performance Optics社など、M&Aにより市場シェアを拡大しています。

近視の急速な進行は世界的な健康課題となっています。2050年には世界人口の半分にあたる50億人が近視の影響を受ける可能性があると言われています。

近視進行抑制分野においてHOYAは香港理工大学と共同で革新的な小児用近視進行抑制メガネレンズ「MiYOSMART」を開発しました。「MiYOSMART」は、子供の近視の進行を抑制することが実証されています。2018年に商品化され、現在はアジア欧州を中心に販売しており、大きな成長が続いています。今後は順次認可を取得し、販売地域を拡大していく予定です。
(2022年8月現在、日本‧米国では未承認です。)

近視人口の推移予測

コンタクトレンズ市場

マーケット状況
国内コンタクトレンズ小売市場はコロナの影響による在宅勤務や自宅学習機会の増加、外出機会の減少などによりコンタクトレンズの使用頻度が減少したことで一時的に市場が縮小しましたが、新型コロナウイルスの感染状況が一進一退を繰り返しており、注意を要する状況ではあるものの、店舗のトラフィック増加により販売が堅調に推移しています。(今後、行動制限などがあった場合にはマイナスの影響が予想されます)

今後の市場見通しについては、若年層の近視率の上昇や遠近両⽤コンタクトレンズの普及による装⽤者年齢の上昇といったコンタクトレンズ需要増加、高付加価値レンズの販売増による平均販売単価の上昇などにより、今後も僅かながら拡大していくと推定しています。

HOYAのポジションと市場シェア

当社は、実店舗での販売を行う小売チャネルにおいてシェア1位となっています。

付加価値製品の訴求などによる既存店の売上成長に加えて、M&Aを含む新規出店により売上の拡大を図っています。また、近年拡大しているインターネット通販に対応し、「ほしいとき便」「おトク定期便」としてオンライン販売サービスを提供しており、特にコロナ感染拡大期において多くの方々にご利用いただいています。

メディカル

内視鏡市場

マーケット状況

社会の高齢化に伴い、世界的に医療費が増加しています。 各国政府は、医療費増加の抑制のために、疾病の早期発見および低侵襲医療を推奨しています。
また、患者様の体にメスを入れずに体への負担を極力抑える低侵襲治療へのニーズから、内視鏡に対する注目が高まっています。

内視鏡機器市場は、日⽶欧などの先進国地域において成長が緩やかになっていますが、内視鏡の普及段階にあるアジア、特に中国において高い成長が続いています。中国市場に関しては、今後もグローバル市場の成長をけん引するという見方に変わりありませんが、中国政府機関による入札で中国国産製品を優先する政策が進められており、中国外の医療機器メーカーは現地生産を求められています。

内視鏡分野の競合には、オリンパス、KARL STORZ、ストライカー、Boston Scientific、Ethicon、富士フィルム、メデトロニック、Richard Wolf、Smith & Nephewなどが挙げられます。

HOYAのポジションと市場シェア

高画質化、超音波内視鏡、画質‧外径‧チャンネルサイズのバランスの取れた細径内視鏡、公衆衛生に配慮した製品を強みに、当社は業界2番手グループとなっています。

地域的には、売上の約半分を占める欧州において安定的に収益を確保しつつ、アジア、⽶州での営業活動を強化することで成長を図ります。

製品に関しては、軟性内視鏡市場の主戦場である消化器向け製品への取り組みを着実に行いながら、内視鏡と組み合わせて使⽤する処置具や、使い捨て内視鏡のさらなる開発を進め、差別化を図っていきます。

市場シェア(2021年度)

使い捨て内視鏡は、2021年5月に当社初となる使い捨て気管支内視鏡「PENTAX Medical ONE Pulmo」のCEマーク認証を欧州にて取得しました。今後欧州での販売を拡大するとともに他地域での承認を取得していきます。当社は目的や状況に応じて従来型と使い捨ての使い分けを提案できることや、使い捨て内視鏡にも従来型同等の高画質、吸引力と操作性を実現していることが強みです。使い捨て内視鏡は現状では従来型の内視鏡を大きく置き換えるほどの存在には至っていません が、中長期的には存在感が高まってくると予想しており、その布石として位置づけています。

業績

2021年3月期の業績について

HOYAグループの売上収益は5,479億21百万円と、前期に比べて5.0%の減収となりました。

利益については、税引前当期利益は1,592億18百万円、当期利益は1,252億21百万円となり、前期に比べてそれぞれ8.1%、9.3%の増益となりました。税引前当期利益率は29.1%となり、前期の25.5%から3.6ポイント上昇しました。

売上収益

利益率

効率性

財産の状況

当期末では、総資産は前期末に比べて422億82百万円増加し、8,532億90百万円となりました。

親会社の所有者に帰属する持分合計は429億59百万円増加し、6,880億円となりました。

負債は、8億65百万円減少し、1,808億78百万円となりました。

キャッシュ・フロー

当期末における現金及び現金同等物は、為替変動による影響額105億66百万円を含め、前期末に比べ169億15百万円増加し、3,348億97百万円となりました。

当期の減価償却費及び償却費(減損損失を含む)は、前期に比べて28.3%増加し、445億2百万円となりました。

設備投資/減価償却費等

自己株式取得につきましては、当年度内に取締役会にて決議した分の自己株式さ取得総額は800億円となりました。(取得期間は2020年10月~2021年4月)

経営者

創業

太平洋戦争が始まる1941年11月、山中茂氏が兄の正一氏とともに東京都保谷町(現・西東京市)で東洋光学硝子製造所を創業したのがHOYAの始まりだ。双眼鏡などに使われる軍需用の光学ガラスの生産を始めた。だが、敗戦で軍向けの受注はゼロになり、クリスタルガラスの食器の生産に転換した。

そんな時に入社してきたのが鈴木哲夫氏である。24年12月愛知県に生まれ、東京工業大学附属高等工業教員養成所を卒業。後に茂氏の長女と結婚した。57年、茂氏が病に倒れたため32歳で社長に就任。その頃は、資本金900万円、従業員300人、売上高2億円の町工場だった。

 哲夫氏は、町工場では景気変動の影響を大きく受けるため、なんとかそこから抜け出したいと考えるようになった。哲夫氏は理論を尊重する経済合理主義者だ。米経営学者ピーター・ドラッカーの経営書に大いに啓発されている。

 哲夫氏は社長就任後の5年間で売り上げを10倍の20億円に拡大させた。この間、社名を保谷硝子に変更、61年には東証2部に株式上場を果たして勝負に出た。直販体制の経営理論を実践すべく30億円を投じ、クリスタルガラス食器の新鋭工場を建設した。

哲夫氏は、持ち前の経営管理論を実践。84年に社名をHOYAに変更して、光エレクトロニクスの高収益企業に飛躍させ、中興の祖と呼ばれるようになった。だが、哲夫氏の経営者としての名声が高まれば高まるほど、創業家本流との関係はギクシャクした。

93年、茂氏の長男の衛氏に社長職を譲り、哲夫氏は会長に就いた。ところが、哲夫氏は2000年に会長を退く際に衛氏にも社長を辞めさせ、後任社長に自身の息子・洋氏を据えた。鈴木家による社長の椅子の継承である。

 哲夫氏は米国流コーポレートカバナンス(企業統治)の信奉者であった。HOYAは03年、委員会設置会社に移行し取締役8人のうち社外取締役が5人、社内取締役3人という構成に変えた。

 株主資本主義に立脚した米国流経営と、息子への社長のポストの禅譲には論理的に矛盾があると批判され、このことが後々まで尾を引くことになる。

社長

池田英一郎

池田英一郎CEO

中央大学理工学部卒業。 1992年に入社、2010年メモリーディスク事業部の共同事業部長兼メディアSBUゼネラル・マネジャーを経て、同年にオプティクス事業部光学レンズSBU長。 2013年に当社執行役情報通信担当COOに就任した後、2015年に技術担当(CTO)に就任。

鈴木洋最高経営責任者(CEO、63)が2022年3月1日付で退任。鈴木CEOは00年に社長に就任して以降、21年にわたってHOYAを率いてきた。 後任には最高技術責任者(CTO)の池田英一郎執行役(51)がCEOに就任。

経営トップの交代は約22年ぶりとなった。創業家一族の鈴木洋代表執行役CEO(最高経営責任者)が3月1日付で退任し、後任に池田英一郎執行役CTO(最高技術責任者)が就任。

退任する鈴木洋氏は創業家である山中家の娘婿で、HOYA元社長だった鈴木哲夫氏の息子。哲夫氏は業績不振だった会社を立て直し、多角化への道を開いた「中興の祖」と言われる。洋氏は東洋大学、メンロー大学を経てHOYAに入社。00年に40代の若さで社長に就任した。

就任当初は周囲から偉大な父親の七光りとみられることもあったが、早くから独自色を発揮した。米国流の「事業ポートフォリオ経営」の導入がそれ。事業環境の変化に応じて、投資配分を決める。この経営手法の要諦は管理の徹底で、収益性が高く成長が見込まれる分野や地域を絞り込み、経営資源を集中投下する。一方で収益性が低く、成長を見込めない分野や地域などからは、迷うことなく縮小・撤退する。

創業初期の同社を牽引し、約60年の歴史があったクリスタル事業からはあっさりと撤退を決めた。市場関係者から技術の「目利き力」があると評されるきっかけとなったのは、07年に「G10」と言われる大型液晶パネル向けのフォトマスクの設備投資を見送った判断だ。

当時はシャープが大阪府堺市にG10を採用した世界最大の液晶パネル工場の新設を決めたタイミングだった。しかし鈴木氏は供給過剰を見越し、あっさりと投資を見送った。

鈴木氏はCEOの役割について、「常に念頭に置いているのは、限られた経営資源をいかに最適に配分するかという点だ。将来の成長分野に人材、資本をシフトさせ、逆に成長が見込まれない分野は『聖域』を持たずに縮小する」と述べていた。

日本の大手企業のサラリーマン経営者も似たような発言はする。しかし実際にそれを実行するかしないかで雲泥の差がある。1990−2000年代に日本のエレクトロニクス業界でもポートフォリオ経営がもてはやされたが、経営不振に陥らない限り事業の撤退・縮小には踏み切らなかった。背景にあったのは「先輩たちが育てた事業から簡単に手を引くわけにはいかない」というしがらみだろう。鈴木氏にはこれがない。

新陳代謝を進めていくうえで、成長分野と定めたのは、ライフケア領域だ。内視鏡大手だったペンタックスを買収した後、関連する手術器具メーカーも相次ぎM&Aで取り込み、事業基盤を固めた。メガネレンズもセイコーエプソンから関連事業を買収し、米国や中国、ブラジルなどでもメガネレンズの販売・製造事業会社の買収を進めた。

ただ、こうしたポートフォリオ経営は、鈴木氏の経営の一面でしかない。「本質的な凄さは、事業のオペレーションにある」(幹部)。それはHOYAの業績に如実に表れている。21年3月期の売上高純利益率は22.9%と2割を超える。

HOYAは事業部に経営の権限を移譲し、独立採算で事業を回す。鈴木氏は事業部の予算と実績を徹底的に管理し、投資に対するリターンの最大化をはかるスタイルをとる。「朝から深夜まで予算会議をすることもある。経営の細部、お金へのこだわりは半端ない」(元幹部)。予算を引き出すため、事業部も必死で戦略・戦術を練る。その緊張感が高収益に結びつく循環を築き上げた。

現CEOの池田氏は「事業ごとの位置づけを検討し、成長性の高い事業に経営資源を投じる」と述べている。

目下の力を入れる分野は先端半導体と医療関連の事業だ。半導体の回路パターンの原版となる「マスクブランクス」では、次世代半導体向けの「EUV(極端紫外線)リソグラフィ」に対応した製品の開発に注力する。内視鏡や眼科医療機器など、医療機器関連のM&A(合併・買収)も進める。

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