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本のある日常

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書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
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#本紹介

ふだんは読まない本を読むという冒険

読書歴が長くなってくると、「自分が好きそうな本」というのが大体わかってくる。 そして、そうした本ばかり買って読むようになる。 たとえば私だったら、ちょっと暗めのエッセイや哲学、人文学などの人文書ばかり読んでいる。 だけど書店員をやっていると、ふだんは読まないような本を読む機会に恵まれる。 お店で売れている本はどうしても気になってしまうし、「これは売りたい」と思った本はできるだけ自分でも読むようにしている。 そんな自分の興味から少し外れたような本を読むと、毎回驚くのだが、わか

本という善良ぶった劇薬について

今年の7月に芥川賞を受賞した『ハンチバック』を読んだ。 のっけから性的な描写が登場し、面食らった。 読み終えるころに感じたのは、本という媒体における表現の自由さである。 昨今、「テレビがつまらない」という言葉をよく耳にする。 それは、テレビがマスメディアであり、できるだけ多くの人に見てもらわうことを前提として作られているからだと思う。 それはつまり、表現の幅を狭めることにつながる。 例えば、先に挙げた性的な描写など、今では深夜テレビでもお目にかかれなくなった。 それに比べ

ZINE『本のある日常』を作りました

私にとって初のZINEである『本のある日常』が完成し、このたび販売を開始しました。 内容は書店員である私が、本について考えたことを書き連ねたエッセイ集となっております。 noteで書いていたエッセイに大幅な加筆修正を行い、さらにあとがきとして「ZINE づくりで大変だったこと」を書きおろしました。 販売を開始してさっそく取り扱ってくれるお店が決まったり、購入してくださる方がいたりと、ワクワクと楽しい日々を過ごしております。 この記事では、そんな『本のある日常』を紹介してい